ニュートン法
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数値解析の分野において、ニュートン法(ニュートンほう、: Newton's method)またはニュートン・ラフソン法(: Newton-Raphson method)は、方程式系を数値計算によって解くための反復法による求根アルゴリズムの1つである。対象とする方程式系に対する条件は、領域における微分可能性と2次微分に関する符号だけであり、線型性などは特に要求しない。収束の速さも2次収束なので古くから数値計算で使用されていた。名称はアイザック・ニュートンジョゼフ・ラフソンに由来する。
目次

1 導入

2 理論

2.1 局所収束定理

2.2 半局所収束定理


3 高次元の場合

4 注意

5 改良

5.1 平野の変形ニュートン法

5.2 簡易ニュートン法

5.2.1 クラフチック法


5.3 区間ニュートン法

5.4 q {\displaystyle q} -ニュートン法


6 脚注

7 関連項目

8 外部リンク

導入 ニュートン法の一手順の概念図 (青い線が関数 f のグラフで、その接線を赤で示した). xn よりも xn+1 のほうが、 f(x)=0 の解 x についてのよりよい近似を与えている.

この方法の考え方は以下のようである:まず初めに、予想される真の解に近いと思われる値をひとつとる。次に、そこでグラフの接線を考え、その x 切片を計算する。このx切片の値は、予想される真の解により近いものとなるのが一般である。以後、この値に対してそこでグラフの接線を考え、同じ操作を繰り返していく。

上の考え方は次のように定式化される。ここでは、考える問題を f: R → R, x ∈ Rとして f ( x ) = 0 {\displaystyle f(x)=0\,}

となる x を求めることに限定する。このとき、x の付近に適当な値 x0 をとり、次の漸化式によって、x に収束する数列を得ることができる場合が多い。 x n + 1 = x n − f ( x n ) f ′ ( x n ) ⋯ ( 1 ) {\displaystyle x_{n+1}=x_{n}-{\frac {f(x_{n})}{f'(x_{n})}}\quad \cdots (1)}

例として、√2 を計算で求める場合に、 f ( x ) = x 2 − 2 {\displaystyle f(x)=x^{2}-2\,}

とおき、f(x) = 0 の解を求めることを考える。 f ′ ( x ) = 2 x {\displaystyle f'(x)=2x\,}

であるので、(1) の式は x n + 1 = x n − x n 2 − 2 2 x n = 1 2 ( x n + 2 x n ) {\displaystyle x_{n+1}=x_{n}-{\frac {x_{n}^{2}-2}{2x_{n}}}={\frac {1}{2}}\left(x_{n}+{\frac {2}{x_{n}}}\right)}

と書き表せる。たとえば x0 = 1 とおくと、この数列は √2 に収束するが、その収束の仕方はx0 = 1x1 = 1.5x2 = 1.416666…x3 = 1.4142156862745…x4 = 1.4142135623746899… (下線部は√2と一致する部分)

となる。

また、x0 = −1 とおくと、この数列は −√2 に収束する。
理論
局所収束定理

初期値 x 0 {\displaystyle x_{0}} を解の十分近くに選ぶことを要求した上で、 f ( x ) = 0 {\displaystyle f(x)=0\,}

の解を考える(解の存在を仮定する)。 f ( x ) {\displaystyle f(x)} の x = x 0 {\displaystyle x=x_{0}} でのテーラー展開をすると f ( x ) = f ( x 0 ) + f ′ ( x 0 ) ( x − x 0 ) + O ( ( x − x 0 ) 2 ) {\displaystyle f(x)=f(x_{0})+f^{\prime }(x_{0})(x-x_{0})+O((x-x_{0})^{2})}

このとき、(右辺)=0の解は、(左辺)=0の根の x 0 {\displaystyle x_{0}} での多項式次数一次の近似となっている。右辺の解は x = x 0 − f ( x 0 ) f ′ ( x 0 ) {\displaystyle x=x_{0}-{\frac {f(x_{0})}{f^{\prime }(x_{0})}}}

次に、この近似値が、 x 0 {\displaystyle x_{0}} より根に近づいているということに関する意味を考える。上式を、次のような離散力学系として考える。 x n + 1 = g ( x n ) {\displaystyle x_{n+1}=g(x_{n})} , ただし g ( x ) = x − f ( x ) f ′ ( x ) {\displaystyle g(x)=x-{\frac {f(x)}{f'(x)}}}

この力学系において、 f ( x ∗ ) = 0 {\displaystyle f(x^{*})=0} となる x ∗ {\displaystyle x^{*}} は明らかに固定点である。

したがって 。 g ′ ( x ∗ ) 。 < 1 {\displaystyle |g'(x^{*})|<1} 、つまり x ∗ {\displaystyle x^{*}} が沈点(アトラクター、安定固定点)であり、与えられた初期条件 x 0 {\displaystyle x_{0}} が、このアトラクターの吸引領域に属していれば x n {\displaystyle x_{n}} の ω {\displaystyle \omega } -極限( n → ∞ {\displaystyle n\rightarrow \infty } )は f ( x ∗ ) = 0 {\displaystyle f(x^{*})=0} となる x ∗ {\displaystyle x^{*}} に収束する。

x ∗ {\displaystyle x^{*}} が沈点である保証は、常に担保されてはいない。例えばx軸の漸近線や関数 f ( x ) {\displaystyle f(x)} の極値近傍では固定点が不安定になる事が知られている。[1]

たとえば f ( x ∗ ) {\displaystyle f(x^{*})} を、適当な近傍の点 x n {\displaystyle x_{n}} で展開すると f ′ ( x ∗ ) ≠ 0 {\displaystyle f'(x^{*})\neq 0} なら、二次の余剰項 R 2 = f ″ ( ξ n ) 2 ( x n − x ∗ ) 2 {\displaystyle R_{2}={\frac {f''(\xi _{n})}{2}}(x_{n}-x^{*})^{2}} として

x n + 1 − x ∗ = − f ″ ( ξ n ) 2 f ′ ( x n ) ( x n − x ∗ ) 2 {\displaystyle x_{n+1}-x^{*}=-{\frac {f''(\xi _{n})}{2f'(x_{n})}}(x_{n}-x^{*})^{2}}


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