ニハイチュウ
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二胚動物門
ヤマトニハイチュウ Dicyema japonicum Furuya & Tsuneki, 1992の顕微鏡写真
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
階級なし:オピストコンタ Opisthokonta
:動物界 Animalia
上門:冠輪動物上門 Lophotrochozoa
:二胚動物門 Dicyemida

学名
Dicyemida
van Beneden, 1876
シノニム
Rhombozoa
van Beneden, 1882
下位分類群


(ニハイチュウ目 Dicyemida)

ニハイチュウ科 Dicyemidae

カンタレラ科 Kantharellidae


ヘテロキエマ目(異胚虫目) Heterocyemida

コノキエマ科 Conocyemidae


二胚動物(にはいどうぶつ, Phylum Dicyemida)、または菱形動物(りょうけいどうぶつ、Rhombozoa)[1][註 1]は底生の頭足類腎嚢寄生片利共生[2])する小さな動物であり、独立した動物門(二胚動物門)として扱われる[3][4][5]。生活史に2種類の幼生(胚)があることから[6]、総称してニハイチュウ(二胚虫、: dicyemids)と呼ばれる[註 2]

体の大きさは数 mm(ミリメートル)で[7]、体を構成する細胞は多細胞動物の中で最少である[4]。従来、二胚動物は直泳動物門と共に中生動物門に分類されてきたが[8]分子系統学によって螺旋卵割動物(冠輪動物)に含まれることが明らかとなった[8][9]。これまで全世界の頭足類約25属から3科8属約140種の二胚動物が確認されている[7]。最大級の種はオオニハイチュウ Dicyemnnea megalosomum Furuya2018で、全長15.2 mmであり、体皮細胞数が47個のツノモチダコニハイチュウ Dicyemennea moritakii Furuya2018は発見されている中で最も細胞数の多い種である[10]
研究史
発見と中生動物エルンスト・ヘッケル(1910)によるスケッチ。Fig. 6.はDicyema macrocephalum、Fig. 7.はConocyema polymorpha

最初の記録は1787年イタリアのFilippo Cavoliniがタコの体内からウナギのような姿をした動物とともに球状のインフゾリアを観察したというものである[11][12][13][8]。1839年、ドイツのAugust Krohn[14]はその存在を詳細に記録した[6]1849年スイスアルベルト・フォン・ケリカーは生活史に2種類の幼生があることから、δι = 2, χυημα = 胚 (embryo)という意味のDicyemaと名付けた[6]。その後1876年ベルギーの研究者 Edouard van Beneden[6]は、Dicyemaを含む数属を新たな目 Dicyemides van Beneden, 1876 に含め[6]、ニハイチュウを系統進化上、原生動物と後生動物の中間に位置すると考え、中生動物を設立した[3][4][8][12]。古屋(2004b)によると、これはニハイチュウが示す簡単な体制から、後生動物の起源的動物をイメージしたと考えられている[8]。1882年、van Benedenは中生動物門にチョクエイチュウ(直泳虫、またはチョクユウチュウ、直游虫)を含め、ニハイチュウ類をRhombozoa、チョクエイチュウ類をOrthonectidaとして2をこの門に置いた[8][15]
寄生退化説と反論

van Benedenがニハイチュウを原始的な多細胞動物とした(原始的多細胞動物説)のに対し、1922年にLameere[16]や1937年・1954年にStunkard[17]、そして1947年にヌベル (Nouvel)[18]は扁形動物の吸虫類が寄生生活に適応したため体制が単純化したとする寄生退化説を唱えた[8]。特にStunkardは1937年にはニハイチュウ類を「退化または極めて特殊化した扁形動物で、現生の何れの扁形動物でもなく、それらの祖先形を持つ動物から由来した動物群」、また1954年に「渦虫類・二胚虫類・吸虫類・条虫類はプラヌラ planulaに似た仮想的な共通祖先に由来する」と論述した[13]。これに対し1959年にHymanはこの見解を「論理的に、退化した扁形動物がその祖型動物ではありえない」と鋭く反論し、「ニハイチュウ類がプラヌラ様祖型動物の状態に留まっているということの容認であり、ニハイチュウ類が扁形動物の退化型であるとする先の見解と矛盾する」とし、加えて吸虫類と同様な生息場所を占めるにも拘らず吸虫以上に退化した体制を持つことへの説得性の不足を指摘した[13]
系統解析

1960年代には核酸研究が進展し、核酸の塩基総量に対するグアニンシトシンの合計量(GC含量)は同種の生物では一定で、近縁の生物ではよく似ていることが知られるようになった[13]。1974年にLapanとMorowitzはDicyemennea 属ニハイチュウのGC含量の比較による系統解析を行ったところ、ニハイチュウのGC含量は23%で、それまで知られていた他の生物のGC含量は原生動物である繊毛虫類の22-35%、鞭毛虫類の45-60%、縮小条虫 Hymenolepis diminuta (Rudolphi1819)では36%、タコの肝臓に寄生する四吻目の条虫では47%であったため、繊毛虫類との類縁性を示唆した[13][8][19][9]。また、1987年には、堀寛大澤省三による5SrRNA塩基配列の比較による系統解析が行われ、もっとも原始的な多細胞動物とされ、前者の説を支持した[9][8]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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