ニトロメタン
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ニトロメタン

IUPAC名

ニトロメタン
別称ニトロカルボール
識別情報
CAS登録番号75-52-5 
PubChem6375
ChemSpider6135 
ChEMBLCHEMBL276924 
RTECS番号PA9800000
SMILES

C[N+](=O)[O-]

InChI

InChI=1S/CH3NO2/c1-2(3)4/h1H3 Key: LYGJENNIWJXYER-UHFFFAOYSA-N 

InChI=1/CH3NO2/c1-2(3)4/h1H3Key: LYGJENNIWJXYER-UHFFFAOYAW

特性
化学式CH3NO2
モル質量61.04 g/mol
外観無色液体
密度1.1371 g/cm3(液体)
相対蒸気密度2.1
融点

?29 °C (244.15 K)
沸点

100?103 °C (373-376 K)
への溶解度ca. 10 g/100 mL
酸解離定数 pKa10.2
屈折率 (nD)1.382
粘度0.61 mPa・s at 25 °C
危険性
主な危険性Flammable, harmful
NFPA 704324
RフレーズR5 R10 R22
SフレーズS41
引火点35 °C
関連する物質
関連するニトロ化合物ニトロエタン
関連物質亜硝酸メチル
硝酸メチル
出典
ICSC[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ニトロメタン (nitromethane) は化学式 CH3NO2 で表される有機化合物で、最も単純なニトロ化合物である。やや粘稠な極性の高い液体で、抽出、反応溶媒、洗浄溶媒など、様々な工業的用途を持つ。有機合成における中間体として医薬品農薬爆弾繊維、被覆剤などの製造に用いられる。モータースポーツ燃料として使われる。
調製

ニトロメタンはプロパン硝酸を350-450 °Cで加熱することで工業的に生産されている。この発熱反応はニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンという4つの工業的に重要なニトロアルカンを生産する。この反応は、対応する亜硝酸エステルホモリシスによって生じるCH3CH2CH2O型のアルコキシラジカル類を含むフリーラジカルが関与している。これらのアルコキシラジカルはC-Cフラグメント化反応に感受性があり、これによって生成物は複数の成分の混合物となる[2]

安価な方法が存在するが、ニトロメタンは教育的価値のあるその他の方法で調製することができる。水溶液中でのクロロ酢酸ナトリウムと亜硝酸ナトリウムの反応によってニトロメタンが生成する[3]。 ClCH 2 COONa + NaNO 2 + H 2 O ⟶ CH 3 NO 2 + NaCl + NaHCO 3 {\displaystyle {\ce {{ClCH2COONa}+ {NaNO2}+ H2O -> {CH3NO2}+ {NaCl}+ NaHCO3}}}
化学合成での用途

極性溶媒として有機化学、電気分析化学の分野で用いられる[4]

有機合成においては1炭素増炭試薬として使われる。弱いながら酸性のプロトンを持ち、カルボニル化合物と同様、これを脱プロトン化させることによって縮合反応に供することができる。すなわち、塩基触媒の存在下でアルデヒドに 1,2-付加を起こす。この反応はニトロアルドール反応と呼ばれる。マイケル供与体としても作用し、マイケル反応によって α,β-不飽和カルボニル化合物に 1,4-付加する。
燃料としての利用

モータースポーツ、特にドラッグレースでより大きな出力を得るための燃料として用いられ[5]、もっぱら「ニトロ」あるいは単に fuel と呼ばれる[6]

ニトロメタンは分子内に酸素を含んでいるため、ガソリンなどの炭化水素と比べて酸素の消費量が少ない。 4 CH 3 NO 2 + 3 O 2 ⟶ 4 CO 2 + 6 H 2 O + 2 N 2 {\displaystyle {\ce {{4CH3NO2}+ 3O2 -> {4CO2}+ {6H2O}+ 2N2}}}

ガソリン1キログラムの燃焼には14.6キログラムの空気が必要だが、ニトロメタンは1.7キログラムで済む。エンジンシリンダーはストロークごとに限られた体積の空気しか取り込めないから、ニトロメタンは1ストロークでガソリンの8.7倍燃焼することができる。しかしながらニトロメタンのエネルギー密度は低い。ガソリンが 約 42–44 MJ/kg を放出するのに対し、ニトロメタンは 11.3 MJ/kg である。これらを総合すると、ニトロメタンは一定量の酸素に対しガソリンの2.3倍の出力を持つことになる。

一液式推進剤としても利用される。外部から酸素を供給することなく燃焼する。 4 CH 3 NO 2 ⟶ 4 CO + 4 H 2 O + 2 H 2 + 2 N 2 {\displaystyle {\ce {4CH3NO2 -> {4CO}+ {4H2O}+ {2H2}+ 2N2}}}

燃焼速度はおよそ 0.5 m/s で、これはガソリンよりいくらか高い。ゆえに高スピードのエンジンに適している。燃焼温度もいくぶん高く、約 2,400 ℃ である。しかしながら、高い蒸発熱 0.56 MJ/kg と燃料としての流速の速さのため吸入の際の冷却効果も高く(メタノールのおよそ2倍)、結果として過度の温度上昇は起こらない。トップフューエルドラッグレーシング (Top Fuel dragracing) のエンジンではこの効果のみによってエンジンの冷却を行う。

通常、ニトロメタンは空気をあまり含ませずに使用する (Rich Air-Fuel Mixture)。空気中の酸素が無くても出力をあげることができること、ひどいノッキング過早着火(プレイグニション)を起こしやすいことが理由として挙げられる。しかし、空気の含有量が少ないと着火が起こりにくくなったり、燃焼速度の低下などの問題の原因となる。

空気含有量の少ないものが使われた場合は水素と一酸化炭素が燃焼の生成物となるが、これらのガスあるいは未燃焼の燃料が排気管の末端で大気と接触した場合、発火することが多い。このため排気系から華々しく炎をあげながら走行するさまが見られる。

少量のヒドラジンを添加すると、より高い出力が得られる。ヒドラジンはニトロメタンと爆発性の塩を形成し、これはニトロメタン分子中の酸素のみによって燃焼する。この混合物は不安定なので、取り扱う際の安全性に留意する必要がある。

ラジコン飛行機やラジコンカーの「グロー燃料」の一般的な主成分は、メタノールとニトロメタン、潤滑油である。ニトロメタンの含有量は 0% から 65% だが、高価なため 30% を超えるのはまれである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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