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ニコチン
IUPAC名
(S)-3-[1-メチルピロリジン-2-イル]ピリジン
識別情報
CAS登録番号54-11-5
−80 °C, 193 K, -112 °F
沸点
247 °C, 520 K, 477 °F (分解)
水への溶解度混和する
粘度2.7 mPa·s (25 ℃)
危険性
GHSピクトグラム
EU分類 T+ N
NFPA 704130
RフレーズR25 R27 R51/53
SフレーズS1/2 S36/37 S45 S61
半数致死量 LD50140 mg/kg(ラット、経皮)
50 mg/kg(ウサギ、経皮)[1]
出典
ICSC 0519
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ニコチン臨床データ
法的規制
JP: 医薬品以外:毒物[2]
医薬品:第1類医薬品/第2類医薬品(毒薬以外はニコチン製剤が該当する)など(理論上は濃度が高ければ毒薬/劇薬)
(以上、たばこ除く)
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ニコチン(nicotine)とは、植物塩基(アルカロイド)の1つ。主にタバコ (Nicotiana tabacum)の葉に含まれる。揮発性の無色の油状液体。生体に対し強い依存性を有し、たばこの喫煙によるニコチン依存症が公衆衛生上の大きな問題となっている[3]。
ニコチンは、昆虫に食べられることを抑制するために、タバコ植物が作り出す毒物である[4]。ナス・トマト・ジャガイモなど、ナス科ではしばしば見られる物質であるが、タバコ以外の種ではその量は非常に少ない[5]。
名称は、1550年にタバコ種をパリに持ち帰った、フランスの駐ポルトガル特命全権大使、ジャン・ニコ(Jean Nicot)に由来する。 ニコチンは、骨格筋および脳に存在するニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニストとして振る舞う[6]。主に脳内の受容体に対し結合し、神経伝達物質(ドーパミン、アドレナリン、β-エンドルフィン[4])の放出が促進される。 ニコチンによるこれらはアロステリックに作用する。例えば少量の摂取であれば興奮作用が生じるが、摂取量が増えるに連れて鎮静作用が現れる。この現象はネスビット・パラドックスとして古くから知られている[7]。 神経伝達物質の濃度が上昇することにより、次のような作用が現れる。 腹側被蓋野(Ventral Tegmental Area: VTA)にあるα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、ドーパミン、β-エンドルフィン[4]を放出する。それにより多幸感が生じる。これは一般に報酬系と呼ばれ、依存症を形成する[8]。 41件の二重盲検研究を使用したメタアナリシスにおいて認知能力を向上させる作用があると結論付けられている[9]。また脳血流の増加が確認された[10]。 副腎髄質に作用し、アドレナリンの分泌を促進する。その結果血圧、血糖値の上昇、発汗などの現象が起こる[11] ニコチンは代謝酵素であるシトクロムP450ファミリーの発現を誘導する[12][13]。このためたばこの喫煙者はシトクロムP450で代謝される薬の効きが悪くなり、治療効果が得にくくなることがある。 1970年代にイギリスのモーズレイ病院の精神医学研究所にて、たばこにおけるハーム・リダクション(有害性低減)が提唱され、先駆者のマイケル・ラッセルは、ニコチンのために喫煙しながらタールによって死んでいると述べたが、2007年にも、英国王立医師会のタバコの助言に関する報告書は、ニコチン自体は危険ではなくタバコの代替品として提供されれば、数百万人の人命を救えることを報告している[14]。ニコチン置換療法でのニコチンの提供では、33000人以上の観察研究やメタアナリシスによって、心血管疾患のリスク上昇がみられていない[15]。 ニコチン蒸気を吸入する電子たばこは燃焼されたタバコよりもはるかに害が小さい可能性が高い[4]。 日本では、ニコチン依存症を治療するためのニコチン製剤であるニコチンパッチやニコチンガムが医薬品として承認されている。
薬理作用
中枢神経系
報酬系の刺激
認知能力の向上
交感神経系
遺伝子発現
利用
禁煙補助
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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