ナマズ目
[Wikipedia|▼Menu]

ナマズ目
ナマズの1種(南アメリカ産)
分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:条鰭綱 Actinopterygii
亜綱:新鰭亜綱 Neopterygii
上目:骨鰾上目 Ostariophysi
:ナマズ目 Siluriformes

下位分類
本文を参照

ナマズ目(学名:Siluriformes、英語名:Catfish)は、硬骨魚類の分類群の一つ。35科446属で構成され、ナマズギバチなど底生生活をする淡水魚を中心に、およそ2,867種が所属する。大きくて扁平な頭部と、感覚器官として発達した口ヒゲを特徴とし、食用魚あるいは観賞魚として世界の多くの地域で利用されている。

本稿では分類群としてのナマズ目の構成(Nelson (2006)の分類体系に基づく)、およびナマズ類全般の特徴について記述する。日本に分布するナマズ科魚類の1種、ナマズ(ニホンナマズ、Silurus asotus)およびナマズに関連する文化については、ナマズの項目を参照のこと。一般的な和名のない分類名については、科名は上野 & 坂本 (2005, pp. 58?59)、種名は江島 (2008)によるカタカナ表記をそれぞれ参考とした。
概要

ナマズ目には2006年の時点で2,800を超える種が記載され、魚類の中ではスズキ目(約1万種)、コイ目(約3,200種)に次いで3番目に大きな一群となっている。現生の魚類2万8000種のおよそ1割、淡水産種(1万2400種)に限ればその2割がナマズ目の仲間で占められる[1]。流れの緩やかな河川湖沼から洞窟、山岳地帯の急流にいたるまで、世界中のあらゆる陸水に幅広く分布するとともに、河口・汽水域および沿岸付近で暮らす海産種も含まれる。1994年の時点(約2,400種)[2]から10年余りの間に、新たに400種以上が新種記載されるなど、分類の拡大傾向が続いている。地球上に存在するすべての水のうち、0.01%にも満たないこれらの陸水域において獲得されたナマズ目の生物多様性を解き明かすことは、生物全体の進化生態系の成り立ちを理解する手がかりにもなると考えられている[3]

一般的なナマズ類に共通する形態学的な特徴は、平たくつぶれた大きな頭部と幅広い口、そして感覚器官として発達した長い口ヒゲである。世界の多くの地域において、古来より重要な漁業資源として利用された歴史をもち、養殖も盛んに行われている。近年では中?大型種が趣味やスポーツとしての釣りの対象になるほか、コリドラスシノドンティスプレコなど観賞魚として親しまれる種類も非常に多く、世界各地の水族館および個人のアクアリウムで飼育されている。このように人間との関わりを深める一方で、移植された外来ナマズが固有の生態系に影響を及ぼすなどの問題も近年各地で発生している。
分布
世界

南極大陸からの化石種を含めれば、ナマズ目の仲間は地球上の全大陸に分布している。所属する2,800種余りのナマズのうち、半数以上の約1,700種が南北アメリカ大陸に分布する。他はアフリカ南アジア東南アジア熱帯域に生息する種類が多く、ヨーロッパ東アジアオーストラリアにはごく少ない。ハマギギ科ゴンズイ科の2科にはおよそ120種の海水魚が含まれるが、その多くは汽水域、ときには淡水にも進出する。他の33科はすべて淡水魚のグループである(汽水域に進出する種類を含む)。2006年の時点で少なくとも200種の未記載種が知られており、さらに多くの未発見種が存在することも確実視されている[1]
日本イワトコナマズ (Silurus lithophilus)。琵琶湖余呉湖のみに分布する日本固有種

日本では在来のナマズ目魚類は全国各地(沖縄は海産種のみ)に分布するものの、その数は5科11種のみと極めて少ない[4]。淡水産種としてはナマズ科ナマズ属の4種(ナマズイワトコナマズビワコオオナマズタニガワナマズ)、ギギ科の4種(ギギネコギギギバチアリアケギバチ)、およびアカザ科のアカザが知られるのみである。このうちイワトコナマズ・ビワコオオナマズ・タニガワナマズ ・ギギ科の4種・アカザは日本固有種であり、前二者は琵琶湖水系のみに分布し、タニガワナマズは東海地方に分布する。種としてのナマズ (S. asotus) の分布はかつて西日本に限られていたが、江戸時代以降東日本北海道にも移植され、現在では沖縄を除く日本全国に生息している。

日本産ナマズ類はいずれも水質や環境の悪化に伴い数を減らしているとみられ、ネコギギ・ギバチ・アリアケギバチ・アカザの4種は、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧種、または準絶滅危惧種に指定されている。海産種としては、ゴンズイ科・ハマギギ科の3種(ゴンズイ、ミナミゴンズイおよびハマギギ)が、本州から沖縄にかけての沿岸域に分布している。ゴンズイはスクーバダイビングなどでも頻繁に観察される普通種であるが、ハマギギは東シナ海からインド洋が分布の中心で、日本近海ではごくまれにしか捕れない[5]
移入種ウォーキングキャットフィッシュ Clarias batrachus (ヒレナマズ科)。世界各地に帰化し、生態系への影響が懸念されるナマズ。日本では近縁の Clarias fuscus が沖縄・石垣島に定着している

養殖目的で移入された食用ナマズや、飼育放棄された外来の観賞用ナマズが自然界に定着し、問題となっている例が世界各地で知られる。淡水産ナマズ(特に中?大型種)の多くは生息環境における食物連鎖の上位に位置することが多く、在来の水生生物を根絶やしにするなど生態系への悪影響が懸念される。ヒレナマズ科のウォーキングキャットフィッシュ(クラリアス・バトラクス、Clarias batrachus)は、本来は東南アジアに分布する熱帯性のナマズであるが、現在ではアメリカ合衆国南部やハワイなど、世界の多くの地域に帰化している。本種は空気呼吸が可能で、陸上を移動する性質があるため容易に分布を広げやすく、国際自然保護連合 (IUCN) が指定する「世界の侵略的外来種ワースト100」の一つに選定されている[6]

外国産ナマズの定着は日本でも問題となっている。1981年、霞ヶ浦に食用目的で導入された北アメリカ原産のチャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ、Ictalurus punctatus)は、1994年以降急激に数を増やしている。本種は体長1 mを超える大型の捕食魚で他に天敵はおらず、外来生物法における特定外来生物として規制の対象となっている[7]。また、ヨーロッパオオナマズ(ナマズ目中の最大種)・ウォーキングキャットフィッシュの定着が懸念されるほか、マダラロリカリアは既に沖縄への定着が確認されている。いずれも在来魚類との競合が心配され、これら3種は環境省が指定する要注意外来生物リストに掲載されている[8]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:87 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef