ナフタレン
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ナフタレン



IUPAC名

bicyclo[4.4.0]deca-1,3,5,7,9-pentaene
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bicyclo[4.4.0]deca-1,3,5,7,9-pentaene

bicyclo[4.4.0]deca-2,4,6,8,10-pentaene

別称white tar, mothballs, naphthalin, moth flakes, camphor tar, tar camphor, naphthaline, antimite, albocarbon
識別情報
CAS登録番号91-20-3
PubChem931
ChemSpider906
EC番号202-049-5
KEGGC00829
ChEBI

CHEBI:16482

ChEMBLCHEMBL16293
RTECS番号QJ0525000
SMILES

C1=CC=C2C=CC=CC2=C1

InChI

InChI=1S/C10H8/c1-2-6-10-8-4-3-7-9(10)5-1/h1-8HKey: UFWIBTONFRDIAS-UHFFFAOYSA-N

InChI=1/C10H8/c1-2-6-10-8-4-3-7-9(10)5-1/h1-8HKey: UFWIBTONFRDIAS-UHFFFAOYAC

特性
化学式C10H8
モル質量128.17 g mol?1
外観白色の固体
臭気の強い油状
密度1.14 g/cm3
融点

80.26 °C, 353 K, 176 °F
沸点

218 °C, 491 K, 424 °F
への溶解度約30 mg/L
危険性
主な危険性可燃性、増感性、発がん物質

粉塵は空気と爆発性混合物を形成する可能性がある
NFPA 704220
RフレーズR22, R40, R50/53
Sフレーズ(S2), S36/37, S46, S60, S61
引火点79?87 °C
発火点525 °C
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ナフタレン(ナフタリン、那夫塔林[1]、naphthalene)は、分子式 C10H8、分子量 128.17 で、2個のベンゼン環が1辺を共有した構造を持つ多環芳香族炭化水素である。無色で昇華性を持つ白色結晶である[2]アセン類として最も単純な化合物。構造異性体として、7員環と5員環からなるアズレンがある。ナフタリンの2008年度日本国内生産量は 197,828t、消費量は 114,075t である[3]
歴史

1820年代初頭、コールタールの蒸留によって得られる刺激臭のある白色固体について2つの別々の報告がなされた。1821年、ジョン・キッドはこれら2報の発表を引用し、この物質の性質の多くとその生産方法について記述した。キッドは、この物質がナフサの一種から得られていたため、「naphtaline」という名称を提案した[4]。ナフタレンの化学式マイケル・ファラデーによって1826年に決定された。2つのベンゼン環が縮環した構造は1866年にエミール・エルレンマイヤーによって提唱され[5]、その3年後にカール・グレーベによって確認された。
構造および反応性

ナフタレン分子は1組のベンゼン環が縮環したものとして見ることができる。このため、ナフタレンはベンゼノイド多環芳香族炭化水素 (PAH) に分類される。ナフタレンには2組の等価な水素原子がある。α位は1、4、5、8位であり、β位は2、3、6、7位である。

ベンゼンとは異なり、ナフタレン中の炭素-炭素結合は全て同じ結合長ではない、C1-C2、C3-C4、C5-C6、C7-C8間の結合は約1.36 A(136 pm)であるのに対して、その他の炭素-炭素結合の長さは約1.42 A (142 pm) である。この差異は3つの共鳴構造を含むナフタレン中の結合の原子価結合モデルと一致する。C1-C2、C3-C4、C5-C6、C7-C8間の結合は3つの共鳴構造のうち2つで二重結合であるが、その他の結合は1つのみで二重結合となる。

ベンゼンのように、ナフタレンは芳香族求電子置換反応を受ける。多くの芳香族求電子置換反応において、ナフタレンはベンゼンよりも穏和な条件で反応する。例えば、ベンゼンおよびナフタレンはどちらも塩化鉄(III) あるいは塩化アルミニウム触媒の存在下で塩素と反応するが、ナフタレンおよび塩素は触媒がなくとも反応して1-クロロナフタレンを形成する。同様に、ベンゼンおよびナフタレンはともにフリーデル=クラフツ反応によってアルキル化されるが、ナフタレンは硫酸あるいはリン酸を触媒としたアルケンあるいはアルコールとの反応によってアルキル化することもできる。

ベンゼン上で起こる通常の反応はナフタレンでも起こる。芳香族求電子置換反応の位置選択性は反応によって異なるが、α位の置換は速度論的に、β位の置換は熱力学的に有利とされる。ニトロ化など、加熱を必要としない求電子反応はもっぱら α位で起こる。スルホン化など、加熱下に起こる可逆的な求電子置換反応については β-置換体を優位に与える場合がある。これは、立体障害の低い β-置換体のほうが熱力学的に安定であることによる。

ナフタレンを適切な条件で酸化するとナフトキノンを生成する。水素化によりテトラリンデカリンを与える。
命名法
置換位置接頭辞

ナフタレンはモノ置換体が2種類、ジ置換体は10種類あり、そのうち2種、9種については置換位置を示す接頭辞がつけられている。接頭辞はナフタレンまたはそのヘテロ置換複素環化合物で使用されることがあるが、IUPAC命名法では接頭辞ではなく位置番号を使う方法が推奨されている。ナフタレンの接頭辞

モノ置換体(一置換体)

接頭辞読み位置番号
α-アルファ1 or 4 or 5 or 8位
β-ベータ2 or 3 or 6 or 7位

ジ置換体(二置換体)

接頭辞読み位置番号
o-オルト1,2位
m-メタ1,3位
p-パラ1,4位
ana-アナ1,5位
ε-エピ1,6位
kata-カタ1,7位
peri-ペリ1,8位
pros-プロス2,3位
amphi-アンフィ2,6位
註)2,7位ジ置換体には接頭辞が無い。
性質

ナフタレンはベンゼンよりもはるかに求電子置換反応を受けやすく、得られる化合物には染料中間体として重要なものが多い。

ナフタレンはパラジクロロベンゼンと同様に、防虫剤として利用される。また現像済みの写真フィルムはナフタレンと化学反応を起こして退色・変色を起こすことがあるので、ナフタレンを成分とする防虫剤から離して保管する必要がある。

殺虫剤として1954年1月25日、忌避剤として同年8月2日に農薬登録を受けたが、殺虫剤としては1957年1月25日、忌避剤としては1971年11月18日に登録失効した。
ナフチル基

ナフタレンから水素をひとつ取り去った1価の置換基は ナフチル基 (naphthyl group) と呼ばれる。取り去られた水素の位置により 1-ナフチル基と 2-ナフチル基がある。
安全性

労働安全衛生法第2類特定化学物質に指定されている。

ナフタレンにさらされると、赤血球が障害を受け破壊される。赤血球の再生は可能だが、子供が誤ってナフタレンを含んだ防虫剤や防臭剤を口に入れた場合に問題になりやすい。極端な疲労感、食欲不振、不眠、チアノーゼといった症状が現れる。大量のナフタレンに暴露されると、吐き気、嘔吐下痢血尿黄疸を引き起こす。万一、誤食があった場合は、病院に行くこと。また、ナフタレンの場合、誤飲時の応急処置として牛乳を飲ませるのは逆効果である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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