ナツメグ
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この項目では、香辛料について説明しています。ニクズク属植物の一種については「ニクズク」をご覧ください。

ナツメグ(: Nutmeg、ナッツメッグ、ナットメグとも)は、ニクズク属樹木、又はニクズク種子を挽いて粉末にした香辛料である[1]。ニクズク(Myristica fragrans)は濃い色の葉を持つ常緑樹で、その果実由来の2種類の香辛料のために栽培される。ニクズクの種子からはナツメグ、種子を覆う仮種皮からはメース(mace)が作られる。また、精油やナツメグバターの商業的供給源でもある。香辛料としての典型的な使用を超える量を摂取した場合、ナツメグ粉末はアレルギー反応を起こしたり、接触皮膚炎を引き起こしたり、向精神作用を持つ可能性がある[2]。様々な疾患を治療するために伝統医学において使われているものの、ナツメグに既知の薬理効果はない[2]

ナツメグ、ニクズクという語をニクズク属の総称のように使うことがあり、特に「ナツメグ」として流通している木材は基本的に他種である。

カリフォルニアナツメグと呼ばれるアメリカガヤ(英語版)(Torreya californica)は似た外観の種子を持つが、ニクズクとは近縁ではなく、香辛料としては使われない。
ナツメグナツメグ種子

ニクズクは播種後7年以降に結実し始める成長の遅い植物である。スモモアンズに似た[3]長さ約5センチの卵形の黄色い果実をつけ、果実は成熟すると果皮が割れ、網目状の赤い仮種皮につつまれた暗褐色の種子が現れる。 この仮種皮を乾燥させたものが香辛料の1つ、メースである。果肉は火を通せば食べられる。

メースを除いた種子を2-3か月の間天日で乾燥させると、中の仁が分離して中で動くようになるので、種を割り仁を取り出す。仁は長径2.5センチほどの卵型で、灰褐色ですべすべしていて縦に溝がある。この仁を出荷前に石灰もしくは石灰液に3か月浸してから乾燥させたものを香辛料のナツメグとする。種子全体を直接、おろし器で挽いて用いる場合もある。

石灰に浸す工程はオランダ東インド会社時代に、ナツメグが出荷前までに発芽しないようにという意図から始められたものだが、科学的には意味のない慣習となっている。現在では、輸入側の国がこの工程を省略させる場合もある[4]

香りの主体となる成分はピネンカンフェンオイゲノールミリスチシン(Allyl -3,4,5-trihydroxybenzene-methylene-methyl ether)である。

異なる香りを持つニクズク属の2つの別種 M. malabarica(英語版)と M. argentea(英語版)は、香辛料としてのナツメグに混ぜ物をするために使われることがある[5]
メースメース

メースは、ナツメグの果実の果肉と種の間に、種を包む形に取り巻いている仮種皮を天日で乾燥させた香辛料である。収穫時は深い紅色だが、乾燥させると淡黄色、橙色、または黄褐色に変化する。ドイツ語イタリア語などでは「ニクズクの花」(: Muskatenblume、: fiore di moscata)と呼ばれているが、花ではない。ナツメグ(仁)よりも淡い香りでピリッとした独特な辛味と苦味があるが、その香味は、穏やかである。
植生態と栽培ニクズクの木 (Myristica fragrans)

最も重要な商業種は、インドネシアのモルッカ諸島(別名、香料諸島)中のバンダ諸島原産のニクズク Myristica fragrans(ニクズク科)である[6][7]マレーシアペナン島や、カリブ海(特にグレナダ)、南インドケーララ州(古代の書物では香辛料貿易の中継地として記述されており、以前はマラバルと呼ばれていた)でも栽培されている。17世紀の著作『ホルトゥス・マラバリクス(英語版)(マラバル植物園)』において、ヘンドリック・ファン・レーデ(英語版)は、インド人が古代の交易路を通じてインドネシア人からナツメグの用法を学んだことを記録している。

ナツメグ(ニクズク)の木は雌雄異株であり、有性的(種子)および無性的(挿し木または接ぎ木)に繁殖する。実生(有性)繁殖は50%の確率で雄株が得られるが、これらは実りが少ない。6-8年後に開花することを確認する以外には信頼性をもって性を判別できる手法が存在しないため、有性生殖では収穫量が安定しないことから、接ぎ木が繁殖の方法として好まれる。上胚軸接ぎ(苗木を使った割り接ぎの一種)、寄接ぎ、継ぎ芽接ぎが成功すると証明されており、上胚軸接ぎが最も広く採用されている。取り木も代替手法であるものの、成功率が低い(35?40%)ため好ましい方法ではない。

ナツメグの木からは植付け後7-9年後にようやく収穫でき、20年後には生産量が最大に達する。@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important}

ニクズクの果実

果実内部の赤色の仮種皮と種子

種子を覆う仮種皮

料理への利用インドネシアのmanisan pala(ナツメグ果肉の砂糖漬け)
香辛料

ナツメグとメースは似た官能的品質を有し、ナツメグがわずかに甘く、メースはより繊細な芳香を有する。メースによって与えられる明るい橙色はサフランの様な色合いのため、これは軽い料理でしばしば好まれる。ナツメグは多くの料理の風味付けのために使われ、現在西洋のスーパーマーケットでは大抵挽いたりすりつぶした状態で売られている。ナツメグホールはナツメグのために特別に設計されたおろし金を使って家庭で挽いて粉末にすることもできる[8]

インドネシア料理では、ナツメグは様々な料理[9]、主にソト、コンロ(英語版)、オックステールスープ(英語版)、スップ・イガ(スペアリブスープ)、バクソ、スップ・カンビン(英語版)といった香辛料の効いたスープで使われる。また、スムル(英語版)(ビーフシチュー)、ヨーロッパ伝来の bistik(ビーフステーキ)、rolade(ひき肉巻き)、bistik lidah(牛タンステーキ)といった肉料理のためのグレイビーソースにも使われる。

インド料理では、ナツメグは多くの甘い料理や塩味の料理に使われる(主にムガール料理(英語版))。ケーララ州マラバール地方では、すりおろしたナツメグが肉料理に使われ、風味付けのためにデザートにも控えめに加えられる。また、ガラムマサラにも少量使われることがある。インドでは挽いて粉にしたナツメグが(タバコのように)吸われることもある[10]

伝統的なヨーロッパ料理では、ナツメグとメースは特にジャガイモ料理と加工された肉製品で使われる。また、スープやソース、焼き菓子にも使われる。ライスプディングにも一般的に使われる。オランダ料理では、ナツメグはメキャベツカリフラワーサヤインゲンといった野菜に加えられる。ナツメグは温サイダー温ワインエッグノッグの伝統的な食材である。スコットランドでは、メーツとナツメグはどちらもハギスに使われる。イタリア料理では、ナツメグはトルテリーニのような多くの地方の肉詰めダンプリング(団子)や伝統的なミートローフの一部として使われる。


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