ナチスの映画政策
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1942年に国有化されたウニヴェルズム映画株式会社のロゴ

ナチスの映画政策(ドイツ語: nationalsozialistische Filmpolitik)は、基本的にはヒトラーナチ党による権力掌握の後、ドイツ国フェルキッシュかつナショナリスティック独裁体制を確立するためのもので(ナチ時代を参照)、ヨーゼフ・ゲッベルスが率いた帝国国民啓蒙宣伝省と密接に関連している。ゲッベルスは「ドイツ映画の庇護者」を自認し、映画制作の管理・統制、検閲(ドイツ語版)、「アーリア化」、個々のアーティストや企業への抑圧や助成といった様々な措置を通じて、ドイツ映画産業をナチのプロパガンダ装置における枢要部として取り込んでいった。ナチズムにおいては、娯楽にさえも政治的な機能が付与されていたため、第三帝国の長編映画(ドイツ語版)の大半が一見すると非政治的なことと矛盾しない。

ナチ党は無声映画時代に選挙運動映画の制作の経験を積み、1933年に政権を獲得するとドイツ映画産業の画一化と利用に焦点を当てた。画一化は大いに成功し、さらに1938年にはオーストリアの映画産業(オストマルク、またはアルペン=ドナウ大管区群(ドイツ語版))も加わった。この過程は、最終的に1942年に国家独占企業のUFIコンツェルンの創設に至った。あらゆる政治的目標を別にして、ヨーゼフ・ゲッベルス、ヘルマン・ゲーリング、アドルフ・ヒトラーは個人的に映画に魅了されていたのである。
目次

1 ナチの映画政策の目的

2 前史

3 官庁・機関

4 映画政策措置(概要)

5 映画制作

6 映画配給と映画保存貸与機関 (Bildstelle)

7 映画館と観客

8 ナチのプロパガンダ映画

9 娯楽映画

10 スターシステムとメディア総合利用

11 人事政策

12 映画産業の拡大

13 1945年以降のナチ映画プロパガンダの扱い

14 関連項目

15 参考文献

16 外部リンク

17 脚注

ナチの映画政策の目的

ゲッベルスは、映画というメディアを効果的な宣伝手段と見なし、映画によってナチ体制に魅惑的な力を与えることを企図していた。しかし、映画の中に常にナチ党と政治が現れていたとすれば、この目標にほとんど到達できなかったであろう。あからさまなプロパガンダは週間ニュース映画教育映画ドキュメンタリー映画にその居場所を移し、長編映画にナチ党やそのシンボル、突撃隊ヒトラーユーゲント帝国労働奉仕団といった組織が登場するのは、ごくわずかであった。ファイト・ハーラン(ドイツ語版)やカール・リッターといった政治的に忠実な監督による、いわゆるプロパガンダ映画でさえ、程度の差こそあれ軽快な「娯楽映画(ドイツ語版)」の洪水を前にしては、その割合は20%未満であった。
前史

1933年のはるか以前から、ナチ党はその目的を表現するメディアとして映画を利用し始めていた。既に1926年6月に設立されたナチ党全国宣伝指導部(ドイツ語版)には「Amt Film(映画局)」が設けられ、プロパガンダ映画の利用に備えることになった。1927年、ニュルンベルク党大会についての最初の党映画 - 『Eine Symphonie des Kampfwillens(闘志の交響曲)』 - が制作された。こうした映画は初期には内部用に制作されたが、1930年11月にはナチ党のReichsfilmstelle(仮訳「全国映画局」)が設立され、映画の制作と配給を受け持つこととなり、こうして選挙戦にも映画が利用可能となった。
官庁・機関

1933年1月にナチ党が権力を掌握すると、ナチの映画政策は、特に2つの官庁、帝国国民啓蒙宣伝省映画部と帝国映画院(ドイツ語版)が取り仕切ることになった。帝国文化院とナチ党全国宣伝指導部(ドイツ語版)映画局もまた影響力を持っていたが、ゲッベルスはあらゆる官庁の上位に君臨していたため、ナチズム指導者原理に則り、本来の所管官庁の声に一切耳を傾けることなく、映画や映画政策の事案を意のままに決定することができた。さらには多くの作品の配役にまで影響力を及ぼした。また映画検閲(ドイツ語版)と映画評価(ドイツ語版)に、最終決定を下したのもゲッベルスであった。なお、ゲッベルスが膨大な業務の中でこういった特権を実際にどこまで行使したのかについては、現在も議論が続いている。

他の省庁が所管していた唯一の領域は教育映画でり、教育映画に関してはベルンハルト・ルスト文部大臣と、彼が設立したReichsstelle fur den Unterrichtsfilm(仮訳「全国教育映画局」)が決定を下していた。


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