ナイト
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この項目では、近代イギリス叙勲の一種について説明しています。その他の用法については「ナイト (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ナイト(: Knight)は、主にヨーロッパキリスト教国家において勲章の授与に伴い王室または教皇から授与される、中世の騎士階級に由来した栄誉称号である[1]

特にイギリス(連合王国)の叙勲制度において王室より叙任されるものが有名。日本語では勲功爵、勲爵士[2][3][4][5][6][7]、騎士爵、士爵[8][注釈 1][10][11][12][13]などの訳が見られるほか、ナイト爵[14]と片仮名で表記される@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}ことも多い[疑問点ノート]。英国においてナイトは公・侯・伯・子・男の貴族の身分ではなく、世襲権を持たない準貴族である[15]。また、称号としてのナイトを騎士号とも称する。本項では「ナイト」に統一し、「爵」ではなく「称号」と記述するが、伝統的な日本語訳である「勲爵士」を一部の括弧内に併記する。
制度の概要第2次世界大戦中のイタリア戦線でオリヴァー・リース(英語版)将軍を騎士叙任する国王ジョージ6世(1944年)

イギリスにおいては、今日でも特定の勲章の授与時に王室から臣民にナイトが授与されることがあるが、これは英国君主としての「血の権利 (iure sanguinis) による叙任権 (Ius Collationis)」の行使の例である。

ローマ教皇は、教皇庁とバチカン市国の君主としての主権を以て、聖シルベストロ教皇騎士団などの勲章の受勲者に対しナイトの授与を行っている。これらのナイトは総称して「Papal Knights」と呼ばれる[16][17][注釈 2]

さらに、君主制の国家ではないものの、政府として騎士号を授与する国もある。この例としては、共和国法第646号においてリサール騎士団の創設と騎士叙任を認めたフィリピン共和国の例がある[19]

なお、民間団体が「ナイト」を模した民間称号を与える例がある(鑑評騎士[注釈 3]名誉騎士[注釈 4]など)。
イギリスにおける制度

イギリスにおいて授与される勲章にはオーダー(Order)、デコレーション(Decoration)、クロス(Cross)、メダル(Medal)の4種類が存在する[22]。このうちオーダーは、中世の騎士団制度に由来する栄典で、王室により設立された騎士団(勲爵士団)へ入団すること自体を栄誉とするものであり、勲章はその団員証である。すなわち、オーダーの受勲とは勲爵士団への入団を意味する[23]

イギリスには多くのオーダーが存在するが、最も叙勲対象が広いものは大英帝国勲章である。この勲章は主に文化・学術・芸能・スポーツ面で著しい功績があった者に対し、首相の助言(外国籍の者に対しては外相の推薦)によって君主(国王または女王、2024年現在[update]は国王)が授与する栄典である[24]。大英帝国勲章の叙勲者は年に2度、旧来は女王の誕生日と新年に発表され、そのうち上位2等級の受勲者にナイトが授与される。

イギリスに存在する主な勲章と、ナイトが授与される等級を以下に示す。このうち受勲者がナイトに叙任される階級を黄色で示す。また、下表に示す以外にも、騎士団への入団を伴わないナイトの叙任も行われており、「ナイト・バチェラー」(Knight Bachelor)と呼びわける。

勲章の等級比較等級ガーター勲章バス勲章ロイヤル・ヴィクトリア勲章大英帝国勲章
一等ナイト (Knight) / デイム (Dame)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)
二等ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)
三等コンパニオン (Companion)コマンダー (Commander)コマンダー (Commander)
四等ルテナント (Liutenant)オフィサー (Officer)
五等メンバー (Member)メンバー (Member)

ナイトの授与に際しては、中世の騎士を叙任した主君のしきたりを踏襲した。騎士叙任の儀式で受勲者は女王、王または王族の代理の前に進み出るとひざまずき、儀礼用の剣の平を両肩に受ける。ナイトの称号は受けた本人一代限りで、世襲は許されない。

ナイトより格上の栄典としては、世襲が認められる準男爵(Baronet)や、世襲を行わないが世襲貴族と並んで貴族院議員となる一代貴族がある。
ナイトとその配偶者の敬称

イギリス臣民でナイトに叙任された男性は Sir (サー)、その夫人は Lady (レディ)の敬称をつけて呼ばれる。また、女性でナイトに相当する叙勲を受けた者は Dame (デイム)の敬称をつけて呼ばれる。ただし、「サー」や「デイム」はサーネーム(苗字)ではなく、であるファーストネーム、またはフルネームの前につける敬称である。例えば、エドモンド・ヒラリーは「サー・エドモンド」または「サー・エドモンド・ヒラリー」とするのが正しく、「サー・ヒラリー」とするのは誤り。姓のみ呼ぶ場合は「ミスター・ヒラリー」。

男性ナイトの夫人はレディのあとにサーネームだけをつける。たとえばアン・スミスはレディ・スミスとなる。デイム(女性ナイト)の夫には敬称はつかない。

ナイトの称号は英国国民以外では、イギリス連邦加盟国や旧イギリス領だった国の国民に与えられることが多く、先述のエドモンド・ヒラリーもニュージーランド人である。

(イギリス国王が君主である国々以外の)外国人で名誉ナイト号を受けた者が「サー」の敬称を用いることはない。「サー」の敬称をつけて呼ばれるのは騎士叙任の儀式を受けた者だけであり、彼らはこの儀式を受けないためである。また、イギリス人であっても聖職者も同様に騎士叙任の儀式を受けないため、「サー」の敬称をつけて呼ばれることはない[25][26]

なお、日本語ではサーの称号を冠する人物を表す際、姓に「」をつけた表記がしばしば見られる(「ヒラリー卿」、「コンラン卿」など)。しかし、サーの訳語に卿を選ぶとしても、第1点として「姓+卿」では、本来の用法とは異なる。それに加え第2点として、「卿」は「ロード」(Lord)の訳語として定着していて、イギリスにおける侯・伯・子・男それぞれの爵位の保持者などに付される称号である。これらの理由から「Sir」に対して「卿」を用いるのは適切ではない[注釈 5]
ナイトの剥奪

ルーマニアニコラエ・チャウシェスクジンバブエロバート・ムガベがナイトを剥奪された。
マルタ騎士団における制度

エルサレム、ロードス及びマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会(通称・マルタ騎士団)はナイトにより構成され、約960年の歴史を有する「領土なき国家」である[28]。現在は領土を有さないが、今日でも国際連合ならびに欧州連合にオブザーバーとして参加し[29]、110か国と外交関係を持つ[30]騎士団中央政府は治外法権の認められたマルタ宮殿イタリアローマ・コンドッティ通り68)に置かれ、世界120か国で医療などの慈善活動を実施し、世界中に12の管区、48の国家支部、133の外交団、33のボランティア隊を展開する[31]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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