ドラゴン_(宇宙船)
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スペースX ドラゴン宇宙船
ISSに近づくドラゴン(2012年5月)
詳細
役割:ISSへ物資補給
打ち上げロケット:ファルコン9
寸法
全高:2.9 m9.51 ft
直径:3.6 m11.8 ft
与圧部体積:[1]10 m3353 cu ft
非与圧部体積:[1]14 m3494 cu ft
非与圧部体積
(拡張されたトランクを追加した場合):[1]34 m31,200 cu ft
重量:[2]4,200 kg9,260 lb
打ち上げられるペイロード:[1]6,000 kg
(ISS輸送能力:3,310 kg)[3][4]13,228 lb
(7,300 lb)
帰還するペイロード:[1]3,000 kg6,614 lb
性能
滞在日数:1週間から2年間[1]

ドラゴン(英語: Dragon)は、アメリカ民間宇宙企業スペースX社により開発された無人宇宙船である。アメリカ航空宇宙局 (NASA) との商業軌道輸送サービス (COTS) の契約により開発され、国際宇宙ステーション (ISS) への物資補給に用いられた。同じくスペースX社が開発したファルコン9ロケットにより打ち上げられた。2010年12月に初の試験飛行を行い、軌道を2周したのち帰還し、商業的に開発され運用された民間宇宙機としては史上初となる回収に成功した。2012年5月には、同様に民間機としては史上初となるISSへのドッキングにも成功している。2020年4月に最後のミッションを終え、後継機となるドラゴン2にその役目を引き継いだ。

ドラゴンの名前は、ピーター・ポール&マリーの楽曲"Puff The Magic Dragon"(日本では「パフ」のタイトルで童謡として知られており、同曲を元にした絵本「魔法のドラゴン パフ」も出版されている)に由来している。イーロン・マスク2002年にスペースX社を設立した際、多くの批評家はこの宇宙船の構想を実現不能なアイディアだと考えていた。そこでイーロンは、このフィクションに出てくるドラゴンを宇宙船の名前に付けたと語っている[5]
形状与圧カプセル(赤)と非与圧トランク(オレンジ)。右は非与圧トランクを拡張した構成

ドラゴンは、円錐型の与圧カプセルとその後部に接続される円柱状の非与圧トランクから成る。与圧カプセルの先端部のノーズコーンは、打上げ後に大気圏を通過して十分な高度に達した時点で分離し、ISSとのドッキングのための共通結合機構を露出させる。その後ドラゴンは、こうのとり(宇宙ステーション補給機HTV)と同様、グローバル・ポジショニング・システム (GPS) やTDRSを用い、ISSに自動でランデブーした後、カナダアーム2によってハーモニー(ノード2)の共通結合機構 (CBM) に結合される。ドラゴンは大気圏再突入能力を備え、実験試料の回収にも使用できる。

ドラゴンの耐熱シールドは、火星からの帰還時の大気圏再突入速度にも耐えられるよう設計されている[6]。開発費はNASAの商業軌道輸送サービス計画の予算の一部から拠出されている。

有人飛行にも対応するドラゴン2と呼ばれる後継機では、ロボットアームを使ってCBMへ結合するのではなく、ISSの正面のシャトルがドッキングしていたPMA-2に、新たな国際ドッキング機構を取り付け、そこにドッキングする方式が取られている。
開発ドラゴンのエンジニアリングモデル(2010年)

2009年、スペースX社の最高経営責任者イーロン・マスクは、スペースシャトルの最後の飛行スケジュールの前、2009年にドラゴン宇宙機の最初の飛行を行い、2010年にドラゴンのサービスを始めると述べた[7]。ファルコン9の2段目の試験の完了に続き、2010年1月の終わりには、全てのコンポーネントがケープカナベラル基地にあるスペースX社のハンガーに運び込まれた[8]。2010年3月11日、1段目に搭載されるマーリンエンジンの発射台における試験は、点火2秒前に点火システムに問題が発生し、試験を中止した。2日後の3月13日に再度試験を行い、1段目の9基のエンジンすべてが3.5秒間燃焼し、完璧に成功した[9]

2009年2月23日、スペースX社は、ドラゴン宇宙船の大気圏再突入のための素材の試験に成功したと発表した。この素材は、耐熱シールド材にPICA-X(フェノール樹脂を含侵させた炭素繊維からなる耐熱材)を選んだものであった[10]。PICA-Xは、NASAが開発したPICA (phenolic impregnated carbon ablator) を改良したもので、NASAのPICAと比べても10分の1のコストで製造できる。

当初、ドラゴン宇宙機の最初の打上げは、ファルコン9ロケットの2回目の飛行で行われる計画であった。しかし2009年の9月、ドラゴン宇宙機の簡易モデルをファルコン9の最初の打上げで飛行させるという発表がなされた。このドラゴンの簡易モデルはドラゴン宇宙船の認定モデル(英語版)と呼ばれ、カプセルの幾つかのシステムを検証するための地上試験用の模型として使用されていたものである。この最初の飛行では上昇中の空気力学データを取得し伝送することを主目的とした[11]。内部が与圧された宇宙機としてのドラゴン宇宙船の初飛行は、2010年12月8日にファルコン9ロケットの2回目の打上げ時に行われた。

ドラゴンのドッキング目標システムはドラゴンアイ (DragonEye) と呼ばれる。これは2009年のスペースシャトル・エンデバーによるSTS-127ミッションにおいてドッキングポートの近くに設置され、シャトルがISSに接近する際に試験が行われた。この際にはドラゴンアイのLIDARサーモグラフィーの2つの装置の能力確認に成功した[12]。ドラゴンアイは、2011年2月のSTS-133でも再び試験が行われた[13]

ドラゴンの有人飛行ミッションの準備のため、スペースX社は2009年夏に、元宇宙飛行士のケネス・バウアーソックスを雇用した。彼は新しく創設された宇宙飛行士の安全およびミッション保障部門の部長 (vice president) として勤務した[14]

2010年11月22日、NASAの発表によれば、連邦航空局 (FAA) はドラゴンに対し、商業用の宇宙船としては初めてとなる大気圏再突入の免許を交付した[15]回収されたドラゴン宇宙船(2010年).mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}英語版ウィキニュースに本記事に関連した記事があります。SpaceX Dragon spacecraft launches for the first time

2010年12月8日、無人の状態でドラゴンを地球周回軌道に投入する飛行試験が行われ、ドラゴンは地球を2周して無事に帰還した。これは民間の開発した宇宙船としては初の快挙となった。しかし、2010年にイーロン・マスクCEOは、有人型ドラゴンの計画は現在進行中であり、完了するにはまだ2?3年はかかると何度も発言している[16][17]

2012年5月22日、2度目の飛行試験が行われ、ランデブー試験の後、飛行4日目の25日についにISSとのドッキングを達成した[18]。こちらも民間の開発した宇宙船としては初の快挙となった。

2012年10月8日、国際宇宙ステーション (ISS) への初の補給フライトが実施され、10月10日にISSとのドッキングに無事成功した。


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