ドライブ・マイ・カー_(映画)
[Wikipedia|▼Menu]

ドライブ・マイ・カー
Drive My Car

監督濱口竜介
脚本濱口竜介
大江崇允
原作村上春樹ドライブ・マイ・カー」など
(『女のいない男たち文藝春秋刊収録)
製作中西一雄
山本晃久
出演者西島秀俊
三浦透子
霧島れいか
岡田将生
製作会社『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
配給ビターズ・エンド
公開

2021年7月11日カンヌ国際映画祭[1]

2021年8月20日[1]

上映時間179分
製作国 日本
言語日本語
英語
韓国語
北京語
ドイツ語
興行収入13億5235万円
テンプレートを表示

『ドライブ・マイ・カー』(Drive My Car)は、濱口竜介監督による2021年8月20日公開の日本映画[2]村上春樹の同名短編「ドライブ・マイ・カー」の映画化で、濱口竜介監督の商業映画3作目。

第74回カンヌ国際映画祭では日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞したほか、第94回アカデミー賞では作品賞脚色賞を含む計4部門にノミネートされ国際長編映画賞を受賞。そのほか世界各国で数多くの映画賞を受賞し、すでに関係者の間では国際的に注目され始めていた濱口の評価を、一気に高めることとなった[3][4]
概要

妻を若くして亡くした舞台演出家を主人公に、彼が演出する多言語演劇の様子やそこに出演する俳優たち、彼の車を運転するドライバーの女との関わりが描かれている。

原作「ドライブ・マイ・カー」から主要な登場人物の名前と基本設定を借用しているが、同じく村上春樹の小説「シェエラザード」「木野」(いずれも短編集『女のいない男たち』所収[5])の内容や、アントン・チェーホフ戯曲ワーニャ伯父さん』の台詞を織り交ぜた新しい物語として構成されている[6][7][8]

フィクションとドキュメンタリーの境界を曖昧にし、短い会話を通じて物語を発展させる濱口の手法がよく現れた作品と評される[3][9]

脚本・脚色は濱口竜介と大江崇允[10][11]、主演は西島秀俊[12]PG12指定作。
あらすじ

家福と音

家福悠介(かふく・ゆうすけ)は成功した俳優・舞台演出家で、妻の音(おと)も脚本家として多くのテレビドラマを手がけている。二人には娘がいたが、幼いころ肺炎で亡くし以後は二人だけで暮らしている。

夫婦の間には、長くつづく二人だけの習慣があった。一つは家福が舞台の台詞を覚えるときの方法で、家福(西島秀俊)は、相手役の台詞部分だけを音(霧島れいか)がカセットテープに録音し、それに自分の台詞で答えながら台本を覚えてゆくという手法を好んでいた。家福は愛車「サーブ900ターボ」を運転するときにこのテープを流し、自分の台詞をそらで繰り返しながら台本を身に染みこませた。もう一つの習慣は、夫婦のセックスの最中に音が頭に浮かぶ物語を語り、家福がそれを書きとめて音の脚本作りに活かすことだった。音はこのやり取りを経て脚本家としてデビューし成功した。

この二つの習慣は、子供を失ったあとずっと続いている。夫婦はこうして心の傷を乗り越え、穏やかで親密な生活を築いていた。

ある時、家福はウラジオストクの国際演劇祭に審査員として招待され空港へ向かう。ところが、空港に着いたところで航空便欠航のため渡航を1日延期するよう現地の事務局から連絡を受ける。あえてホテルに泊まるまでもないと家福が家に戻ると、妻の音は、居間のソファで誰かと激しく抱き合っていた。それを見た家福は物音を立てぬよう、そっと家を出る。家福はホテルに部屋をとり、ウラジオストクへ着いたように装って音へ連絡し、いつも通り言葉を交わす。

家福はこれまでの夫婦の生活を守ることを優先させた。音は家福が情事を目撃したことを知らず、家福も自分が知っていることを明かさなかった。自動車の中で台本を暗記する習慣も、変わらず続いた。いま家福が取り組んでいるのは、チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』だった。家福は自分が運転する自動車の中で、音が抑揚を欠いた声で読み上げる「仕方ないの、生きていくほかないの。…長い長い日々と、長い夜を生き抜きましょう」というチェーホフの台詞を聞き続ける。

そしてある日、音が急死する。それは音から「帰宅したら話したいことがある」と言われた日の夜だった。家福が家に帰ると音は床に倒れていて、意識を回復しないまま死んでしまった。最後の別れを交わすこともできなかった。

広島国際演劇祭『ドライブ・マイ・カー』を上映するニューヨークのリンカーンセンタ?(2022年)

二年後。『ワーニャ伯父さん』でワーニャを演じて名声を得た家福は舞台演出家となり、広島で行われる国際演劇祭へ招聘を受ける。

この演劇祭では、家福が広島に長期滞在して演出を務め、各国からオーディションで選ばれた俳優がそれぞれの役を自国語で演じながら、『ワーニャ伯父さん』を上演することになっていた。

自分で車を運転して広島へ到着した家福は事務局から事故のトラブルを避けるため、宿舎と仕事場の車での移動には専属のドライバーをつけさせてほしいという申し出を受ける。扱いにくいマニュアル車だと家福は断ろうとするが、やってきたドライバーの渡利みさき(三浦透子)は有能で車の扱いに長け、無口で何も詮索しようとしないことに家福は好感を抱く。

こうして、みさきの運転するサーブで家福が劇場へ通い、車内で『ワーニャ伯父さん』のカセットテープが流される日々が始まる。

オーディションには日本のほか、台湾・フィリピンまで各国から俳優が集まった。全員が自国語で台詞をしゃべり、俳優は数か国語がとびかう舞台の上で、台詞ではなく相手役の感情や動作だけをみて反応してゆかねばならない。『ワーニャ伯父さん』で重要な役割を果たす「ソーニャ」は韓国から参加したイ・ユナ(パク・ユリム)で、耳はきこえるが台詞は手話を使う俳優だった。

ワーニャ役に、家福は高槻耕史(岡田将生)を選出した。高槻は、音が脚本を書いた作品にも出演していた若い俳優で、家福はあのとき目撃した妻の情事の相手が高槻ではないかと疑っていた。高槻は将来を嘱望されながら、衝動的な行動を抑えきれない性格が災いして東京での仕事を失っていた。過去に音に連れられて家福の出演した『ゴドーを待ちながら』を観劇し、深い感銘を受けていた高槻は、オーディションの告知を見て即座に応募したのだという。

家福は高槻への感情を押し殺し、多国語での稽古が始まる。俳優たちは風変わりな演出と、台本を棒読みで読み上げさせるだけの稽古にとまどいながら、しかし次第にお互いの感覚が鋭敏さを増してゆくのを感じる。俳優たちの間で何かが起き始める。

渡利みさきが運転する「サーブ900ターボ」で、家福は宿舎と劇場を往復する。走る車の中で、音が吹き込んだチェーホフの台詞「真実はそれがどんなものでもそれほど恐ろしくない。いちばん恐ろしいのは、それを知らないでいること…」が響きつづける。

三人の物語撮影が行われた広島市環境局中工場。

車での移動がつづくうち、はじめのうちいっさい口を開かなかったみさきが、少しずつ家福にこれまでの人生を語り始める。みさきは「上十二滝村」という北海道の小さな集落で、母親一人に育てられていた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:294 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef