ドコサヘキサエン酸
IUPAC名
(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸
別称DHA、セルボン酸
略称22:6(n-3)
DHA
識別情報
CAS登録番号6217-54-5
-44 ℃
薬理学
消失半減期20時間(血漿中)[1]
2.5年(脳内)[2][3]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ドコサヘキサエン酸(ドコサヘキサエンさん、Docosahexaenoic acid、略称:DHA)は、不飽和脂肪酸のひとつで、僅かに黄色を呈する油状物質。6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸 (22:6) の総称であるが、通常は生体にとって重要な 4, 7, 10, 13, 16, 19 位に全てシス型の二重結合をもつ、ω-3脂肪酸に分類される化合物を指し、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサペンタエン酸(DPA) とともに高度不飽和脂肪酸(PUFA) とも呼ばれている。必須脂肪酸の一つ。 体内で合成できないα-リノレン酸を原料としてDHAを生合成するため、広義では必須脂肪酸となる[4]。動物組織では血液(血球・血漿)、脂肪組織に少なく、脳灰白質部、網膜、神経、心臓、精子、母乳中に多く含まれるが偏って存在している[5]。食品ではサバやイワシ、サンマ等の青魚の魚油に多く含まれ、日本人は魚類を食べることによって多く摂取していたが近年は減少している[6]。 生理活性効果に関して1980年代から積極的な研究が行われ、エイコサペンタエン酸と同様に食品添加物、養殖飼料[7]、健康補助食品[8]に利用されている[6][9]。 青魚やその他の生物に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属である、Schizochytrium属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で濃縮されて出来たものである。 多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてエイコサペンタエン酸やDHAを生合成することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である[10]。ヒトでは、DHAは食品から摂取する以外に、2つの経路によって生合成(代謝生産)される[11]。どちらも出発原料はα-リノレン酸であるが、中間生成物が異なる。 ひとつはエイコサペンタエン酸 (20:5, ω-3) を原料とし、エロンガーゼによって2炭素増炭されドコサペンタエン酸 (22:5 ω-3) がつくられた後、Δ4-不飽和化酵素によって水素が引き抜かれて生成する過程である。 もうひとつの経路は、ペルオキシソームあるいはミトコンドリア中で進行すると考えられているもので、エイコサペンタエン酸が2回2炭素増炭されて (24:5 ω-3) となった後、Δ6-不飽和化酵素により不飽和化されて (24:6 ω-3) となり、その後β酸化によって炭素鎖が切断されDHAが生成する。この経路はSprecher's shunt として知られている。 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」ではエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸については1日に合計で1g以上の摂取が望ましいとされている[12]。魚油食品、タラ、ニシン、サバ、サケ、イワシ、ナンキョクオキアミは、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸のようなω-3脂肪酸に富んでいる。1日3g以上のDHAの摂取で、凝血能が低下し出血傾向が起きることがある[13]。
解説
生合成必須脂肪酸の代謝経路とエイコサノイドの形成
摂取
細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。