ドイツ民主共和国の経済
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ドイツ民主共和国(ドイツみんしゅきょうわこく、: Deutsche Demokratische Republik; DDR)、通称東ドイツ(ひがしドイツ、: Ostdeutschland)の経済は、資本主義国の市場経済混合経済とは違って、ソ連と同様、計画経済であった。国家が生産目標と価格を規定し、資源を分配、生産設備はほとんど国営であった。1970年代までは、ソ連経済圏と共産主義世界の中で最も安定した国の一つであった。
概要

社会主義国である東ドイツの経済は、ソ連を模範とした計画経済であり、国家計画委員会(ドイツ語版)がコントロールした。

特に初期の経済政策はマルクス・レーニン主義のイデオロギーによる組織化が強力に推し進められており、1949年に二カ年計画、1951年には第一次五カ年計画が行われ、米国主導のヨーロッパ復興支援計画マーシャル・プランの援助を受けることはできず[1]、さらに、ソ連が東ドイツ領内の工場を「賠償」(Reparationen)の名目で解体(Demontagen)、資材や製品を持ち去ってしまい、また東ドイツは西ドイツと比べて大きな鉄鉱山や石炭採掘場がなかったため、資源が乏しいなど、西ドイツと比べて復興初期の段階で大きく水をあけられていた[2]配給制度(Lebensmittelmarke)は西ドイツではすでに1950年に終了したが、東ドイツでは1958年まで続いた。1950年代終わりの東ドイツの生活水準は、西ドイツの25?30%のレベルでしかなかった、といわれる[3]

それにもかかわらずヴァルター・ウルブリヒトは、東ドイツ国民一人あたりに「必要なすべての食料品、生活用品」の消費は、「近いうちに西ドイツの全国民の一人あたりの消費を超える」という目標を1958年に定めた[4]。その際、模範となったのは、西側の「ちゃんとしてない(irgendwelch)」日用品や「粗悪品(Schund)」ではなく、「綺麗でセンスのよい、働く人が喜びとともに買って使う」実用品であった[5]。このような競争意識から生じた困難をハンス=ヴェルナー・ジン(ドイツ語版)は次のように総括している。「東ドイツ当局が、怪奇的な統計を使って、自国の労働者に見せつけたのは、自分たちの生活状態が、様々な領域で西側の仲間たちと同等であるということであった」。当時の経済活動は初期スターリン主義的経済戦略の影響の下、重厚長大型工業に注目を集めさせたが、ベルリン市内のスターリン通り建設への不満、過酷な労働規範(Arbeitsnorm)の反抗として東ベルリン暴動(1953年)が発生した。

その後、1950年代半ばから非スターリン化が起こると、経済は国民の需要に直接応える方向に向かっていった。これと前後して、1961年のベルリンの壁の建設で西ドイツへの亡命が実質不可能になると、国内の体制が安定化し、またソ連との交易が強化されることにより経済は成長路線に乗り、皮肉にも東ドイツの国民生活は向上するようになる。1963年に経済当局は人民所有企業を統合した82の人民所有企業連合に指導性を与え、利潤追求を含めて個々の企業・労働者から最大限の能力を引き出すことを目的として「計画と指導の新経済システム」を導入、経済統制を緩和して個々の企業の自由度を高めて労働者の生産意欲の維持を図った。このシステムは効率的に作動して、労働生産性が向上し、1964年7%、1965年6%に、国民所得は1964年と1965年とも5%成長した。耐久消費財の供給数も大幅に増加し(下表)[6]、大規模な住宅建設計画によって、居住環境も改善された。

主な耐久消費財の100世帯あたりの供給数[7][6]消費財名供給数
(1955年)供給数
(1960年)供給数
(1970年)
乗用車-3.215.6
テレビ118.573.6
冷蔵庫0.46.156.4
洗濯機0.56.253.6

東ドイツはベルリンの壁建設から1960年代半ばまでは安定した成長を遂げ、その経済成長は「赤い経済の奇跡」と称された。東ドイツは「社会主義の優等生」と呼ばれ、その首都である東ベルリンは、西側諸国の支援の下で繁栄する西ベルリンに対抗すべく「社会主義のショーウィンドー」として発展した。1960年代と1970年代には、正確な数字ではないが経済の平均成長率はおよそ3%であったとされている[2]。そして、1970年代以降は、東ドイツは重要な先進国のひとつに数えられるようになった[注 1]

ただ内実では、1967年以降になると経済成長は停滞した。自動車の個人保有率を例にとると1960年1.7%→1965年3.9%→1970年6.8%で、一方西ドイツは同じ期間で1960年8.1%→1965年15.8%→1970年23.0%であり、その格差は拡大した[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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