トレッド_(タイヤ)
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この項目では、タイヤの接地面について説明しています。乗り物の輪距については「トレッド」をご覧ください。
オールシーズンタイヤのトレッドパターン

トレッド(tread)とは、タイヤの構造のうち、路面と接触する部分を指す。
概要

一般的にタイヤのトレッドはゴムで構成され、トレッドが道路に接触する事で摩擦力によってエンジンから発生した動力を地面に伝える。

トレッドにはしばしばその車輪の摩擦性能(トラクション性能)を制御する為の溝が刻まれる。この溝はグルーブと呼ぶ。トレッドの表面の模様の事をトレッドパターン(tread pattern)若しくはパターン(pattern)と呼ぶ。

グルーブによって描き出され独立した接地面を持つ部分をブロックと呼び、ブロックに施された裂け目状の切り込みをサイプと呼ぶ(一般的な略称の問題と同様にトレッドパターンのパターンが略され、この紋様やグルーブ自体がトレッドとして誤認されている事も多い。タイヤ製造メーカーの記載ではパターンをパタンとカタカナ転写されているが、本稿ではパターンと記載する。)。

また、自動車の構造のうち、左右の車輪間の距離(輪距/en:Axle_track)も日本ではトレッドと呼ばれる。
自動車用タイヤのトレッド
レーシングタイヤ

モータースポーツに使用されるタイヤは、サーキットオーバルコースでのグリップ性能を最大限に高める為に、特殊なゴムがトレッドに用いられる。このようなタイヤは走行による摩擦熱でトレッドが溶け、路面に張り付くようにして極めて強力なグリップ性能とトラクション性能を確保する。その反面、耐摩耗性は極めて低く、数十周の走行で交換が必要な程に摩耗が進む事や、たった一度の急ブレーキでトレッドの一部が偏摩耗しフラットスポットとなり、タイヤ回転に伴って激しい振動が発生して結果的に交換が必要となる事も珍しくはない。

一般的には全く溝の無いトレッドパターンのスリックタイヤが用いられる事が多いが、レース趣向により接地面積を減らしてグリップ性能を敢えて落とす目的で縦方向に溝(グルーブ)を刻んだグルーブドタイヤが用いられる事もある。この縦溝は市販車用のタイヤの縦溝と異なり、排水性を目的としたものではない為、降雨時には専用のブロックパターンが刻まれたレインタイヤが別途用意されている。レインタイヤは排水性が高い反面、乾燥路面ではトレッドパターンが過熱しブロックが剥離するなどの弊害がある為、レースにおいては雨が上がった後は乾燥路面で過熱したレインタイヤを冷やす目的で水溜まりを選んでライン取りを行う光景がしばしばみられる。これらのレーシングタイヤはその競技カテゴリーのレギュレーションに合わせてホイールと共に専用サイズが開発される事が多い為、市販車に取り付けられる事はまず無い。

市販車をベースにした車両で行われるツーリングカーレース(GTレース)では、スリックタイヤをベースに若干の溝を刻んだSタイヤ(セミスリックタイヤ)が用いられる事が多い。Sタイヤもスリックタイヤと同じく、高いグリップ性能を持つ反面極めて耐摩耗性が低く、ウエット路面でのグリップ性能も低い為、市販車のホイールサイズに適合するサイズの物であっても、一般公道で使用する事は全く推奨されていない。
市販車用夏タイヤ

市販自動車に装着されるタイヤ(夏タイヤ)には、降雨時の路面の水をタイヤのトレッドから速やかに排出する為の縦溝(グルーブ)がタイヤの回転方向を1周するように設けられ、ハイドロプレーニング現象を低減する為の設計が行われている。タイヤのサイドウォール付近のトレッドには横方向の溝が刻まれ、ブロックパターンが形成される。この横溝によりやや路面状況が悪い場所を走行する際の接地性を改善している。

グリップ性能は縦横に張り巡らされた溝を差し引いた表面積の多寡により決定される。また、道路をタイヤが転がる際のノイズ(ロードノイズen:Roadway_noise)を低減する為に各メーカーが様々な工夫を凝らしたパターンの設計開発(en:Noise mitigation)を行っている。トレッドの溝の多寡とグリップ性能及びロードノイズはトレードオフの関係にあり、[1]一般的には高速道路での高速走行におけるロードノイズが最も問題となる為、市販車用夏タイヤは装着される車の性格に応じて幾つかの方向性に分化した。

なお、市販車用タイヤのトレッドパターンには幾つかの箇所にスリップサインと呼ばれる溝の浅い場所が設けられている。一定以上摩耗が進むとタイヤ表面に溝が無くなった箇所が現れ、ドライバーに早期のタイヤ交換を知らせる事でハイドロプレーニングの発生を抑止する仕組みになっているのである。なお、日本の車検制度上は偏摩耗などによりタイヤのどこか一部にでもスリップサインが現れた場合には車検を通過する事が出来ない。

また、市販車用タイヤは、装着を想定する車両の重量や動力性能に応じて検討されたホイールリム幅と空気圧が指定されており、適合するホイールに装着し空気圧を適切に管理する事で最適なトレッド接地面積(en:contact patch)となる為、適合外のホイールに装着することや指定空気圧より大幅に外れた空気圧で走行する事は推奨されない。
標準タイヤ

標準タイヤとは市販車用夏タイヤの中でも最も一般的なもので、自動車メーカーのライン装着品もこの中に含まれる。後述する、特徴ある各種タイヤが開発されたために用いられるようになったレトロニムであり、何らかの標準や基準に基づく呼称ではない。メーカーによってはパッセンジャータイヤやノーマルタイヤと呼ぶ場合もある。このようなタイヤのトレッドパターンは乗り心地と耐摩耗性の確保を目的としたトレッドパターンが刻まれる。ごく一般的にはタイヤ中央部分に数本のグルーブを設け、サイドウォール付近にのみ横溝を設けたブロックパターンを配置する事が多く、タイヤ中央部分にブロックパターンが存在しない事でオールシーズンタイヤとの判別が行える。

標準タイヤの内、特にライン装着品[2]は耐摩耗性を最優先にしているものも多い為、タイヤの性能に不満がある向きにおいては極めて早期に交換される例も多い。耐摩耗性能が最も極端に重視されているのがタクシー用標準タイヤであり、グリップ性能などが犠牲になっている反面、10万kmを超える走行に耐えられる耐摩耗性能が持たせられている。

近年では軽自動車コンパクトカーエコカー向けに転がり抵抗を抑えたゴムをトレッドに採用したエコタイヤが登場しており、ライン装着品においても従来の標準タイヤからの置き換えが進みつつある。
エコタイヤ

エコタイヤとは、標準タイヤの中でも特に転がり抵抗を抑えたゴム質のトレッドを持つものを指す。メーカーによっては低燃費タイヤや省燃費タイヤと称する場合もある。JAFはキャリアトレーラー上からエコタイヤとそれ以外のタイヤを装着した同一車種をエンジンを止めた状態で押しだし、空走状態でどこまで車両が進むかの製品テストをしばしば行っており、エコタイヤはハイグリップタイヤに比べて数メートルから10メートル前後遠くまで空走する結果が示されている。

メーカーはエコタイヤの装着で数%の燃費向上が行える事を謳っており、近年までは技術基準が存在しないまま宣伝が行われている現状があったが、JATMAは2010年1月から低燃費タイヤの技術基準であるタイヤラベリング制度を実施する事を発表、いくつかのメーカーでは従来のエコタイヤの基準適合作業を進めている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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