トルコ石
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「ターコイズ」はこの項目へ転送されています。色名については「ターコイズブルー」を、SEKAI NO OWARIの楽曲については「ターコイズ/サラバ/バタフライエフェクト」をご覧ください。

トルコ石 turquoise
トルコ石の小石
分類リン酸塩鉱物
化学式CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O
結晶系三斜晶系
へき開不明瞭
断口貝殻状
モース硬度5.5 ? 6
光沢ガラス光沢ロウ光沢
青色から緑色
条痕白色、薄い青色
比重2.6 ? 2.9
蛍光なし
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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トルコ石(トルコいし、turquoise、ターコイズ)は青色から緑色を持つ不透明な鉱物化学的には水酸化銅アルミニウム燐酸塩であり、化学式では CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O と表される。良質のものは貴重であり、宝石とみなされる。

その色合いのために、数千年の昔から装飾品とされてきた。近年では他の多くの不透明の宝石と同様に、表面処理されたものや模造品・合成品が市場に出回っていて問題となっている。専門家でもその鑑定は難しい。宝石学者ジョージ・フレデリック・クンツによれば、大プリニウスの『博物誌』に「カッライス(callais)」として登場する宝石が現在のトルコ石の古名に当たるが、当時から盛んに模造品が作られていたという。
語源

ターコイズブルー(JIS慣用色名
 マンセル値5B 6/8

英語では turquoise (ターコイズ)と言い、フランス語の pierre turquoise (トルコの石)に由来する。十字軍(東方の文物が西ヨーロッパに到来するきっかけ)の時代にヨーロッパに広まったため、この石が「トルコの石」と呼ばれるようになったばかりか、もとは古フランス語で「トルコの」を表す形容詞だった"turquoise"と言う語が、青の色みの一つを表すようにもなった。

後述のとおり、かつてペルシアと呼ばれた現在のイラン周辺は、少なくとも2000年来トルコ石の主要な産地として知られ、9世紀以来トルコ系王朝が興亡を繰り返したホラーサーンには最も古い鉱脈があった。つまり最初にヨーロッパに認識された「トルコ石」がトルコ人の国のものであったというのが、トルコ石と呼ばれる所以である。

なお、これは幾分かの誤解を含んでおり、トルコでトルコ石が産出されたわけではなく、アトラス山脈周辺の砂漠で産出されたものが貿易でトルコを経由してヨーロッパへ広がったのちになじみの深い宝石になり、「トルコ石」と呼ばれるようになったという説が存在する。現在のトルコからトルコ石の産出はない。
性質
特徴


純度の高いものは鮮やかな青色だが、不純物に鉄を含むと緑色に近くなる。青色のものほど上級とされるが、チベットでは緑色のトルコ石が珍重される。

アルミニウムを含むリン酸塩の岩石に水の作用が働いたときにできる。鉱床は、乾燥地帯で発見されることが多い。

熱と日光に弱いため屋外に放置しない。

物性
蜘蛛の巣模様の入るトルコ石

トルコ石は良質のものでもやや脆い。モース硬度では6以下[1]

トルコ石は単結晶を作ることがほとんどない隠微晶質鉱物なので、性質は変異に富む。X線回折によると、結晶系三斜晶系である。硬度と同様に比重も小さく、 2.60 ? 2.90 である。また多孔質である(これらの性質は結晶の粒度に左右される)。

トルコ石は一般に不溶性だが、熱した塩酸には溶ける。条痕は薄く青みがかった白。断口は貝殻状で、ろう光沢が残る。トルコ石は宝石の中では比較的柔らかいが、よい磨き粉になる。トルコ石の表面に黄鉄鉱が斑点状に分布していたり、暗い色の褐鉄鉱の筋が網目状に入っていることがある。
光学特性

トルコ石の光沢は、通常はろう光沢?準ガラス光沢である。通常は不透明であるが、薄いものでは半透明性を示すことがある。色も変化に富んでいて、白?淡青色?空色、または青緑色?黄緑色の範囲に変化する。青色はによる発色であり、緑は不純物のによるものか、または脱水によるものである。

トルコ石の屈折率は約 1.61 ? 1.62 である(589.3nmのナトリウム光による計測)。この値は宝石用屈折計で得られた単一の値の中間値であるが、トルコ石がほとんどの場合多晶質であることが影響を与えている。希な単結晶標本から、1.61 - 1.65(0.040の差は複屈折によるもの)という屈折率が得られている。小型の分光計で吸収スペクトルを見ることができ、432nmの鋭い吸収と460nm付近の弱い吸収帯を示す(これは強い反射光で見るのがよい)。長波長の紫外線を当てると、トルコ石はときに蛍光を発することがあり、緑、黄色、明るい青などに光る。短波長紫外線やX線には反応しない。
生成

トルコ石は二次鉱物の一種であるため、先に存在する鉱物が風化し、酸化される過程で、酸性の水溶液が浸透する作用によって生成する。例えば、銅は、黄銅鉱のような一次の硫化銅、もしくは孔雀石または藍銅鉱のような二次の炭酸塩から来ている。アルミニウムは長石に由来する。またリンは燐灰石に由来する。トルコ石の銅が亜鉛に置換するとファウスト石(英語版)、二価に置換するとアヘイル石(英語版)となる。

トルコ石がしばしば高度に変成された火山岩中の穴および裂け目を埋めるか覆うような形で、褐鉄鉱や他の酸化鉄とともに乾燥地帯で見つけられることから、気候要因は、重要な役割を果たすようである。アメリカの南西部では、トルコ石は、ほとんど常に斑岩の貫入を受けたカリウム長石の中もしくは周辺にあり、硫化銅の鉱床の風化生成物を伴っている。明礬石(カリウム・アルミニウム硫酸塩)が顕著な二次鉱物である場合もある。基本的に、トルコ石の鉱物化は20メートル未満の比較的浅い深度に限られるが、二次溶液がより大きな浸透を起こしている場合は20メートルより深い裂け目に沿っても起こる。

トルコ石の持つ特徴は、二次鉱物か、溶解物による富化により生成する起源と矛盾無く説明できるが、一部には深成起源としている文献もある。深成起源仮説は、水溶液が熱水作用によりかなりの深さで発生するとする説である。最初に、これらの溶液は、先に存在した鉱物と相互作用し必須元素をろ過しながら、高温で表層に向かって上方へ上昇する。溶解液が冷えるとともに、周囲の岩にある穴や裂け目に沿ってトルコ石が沈殿するというものである。この深成プロセスはオリジナルの硫化銅の沈殿物に対しては適用可能であるが、深成プロセスによってトルコ石発生の多くの特徴を説明することは困難である。すなわち、トルコ石の粒子の中に90?190℃の高い温度で均質化する二相液体包有物があるという報告されているためである。

トルコ石は常にほとんど隠微晶質で、重く、また決まった外形を持たない。結晶は微視的な規模でさえ、非常にまれである。通常は、石理や裂け目を埋める形、団塊状、または葡萄の房状である。 この他、鍾乳石状のものも報告されている。さらに、トルコ石は仮晶として長石、燐灰石、他の鉱物あるいは化石などと入れ替わることがある。骨トルコ石は、化石の骨あるいは象牙であるが、これまでは、鉄のリン酸塩である藍鉄鉱のような鉱物と、トルコ石や同様のリン酸塩鉱物とが置き換わってできたと考えられてきた。さらに、珪孔雀石のような他の二次の銅の鉱物を伴った相互成長も、広く見られる。
産出

トルコ石は人類が初期に掘り出した宝石のひとつであり、歴史的な産出場所は既に多くが枯渇しているが、今日でも稼動しているものもある。これらは、鉱脈の範囲が狭く、また人里離れているために、いずれも小規模で、季節限定の操業である。ほとんどが手作業で、機械化はわずかか、またはまったくされていない。しかし、特に米国では、トルコ石はしばしば大規模な銅の採掘事業の副産物として回収されている。
イラン

少なくとも2000年以上にわたり、ペルシャとして知られたこの地域は、トルコ石のもっとも主要な産地だった。というのも、高品位の素材が最も一貫して採取されていたためである。この「完璧な色合い」の鉱脈は、イランホラーサーン地方の主要都市マシュハドから25キロメートルにある標高2012メートルのアリ・メリサイ山(Ali-mersai)に限られる。これらの採掘所はシナイ半島のものと合わせて、最も古くから知られている。

イランのトルコ石はしばしば長石と置き換わる形で見つかる。一般に白い斑点が付いているが、その色合いと硬さは他の産地のものより優れていると考えられている。イランのトルコ石は何世紀にも渡って採掘され、取引されてきており、おそらくヨーロッパに最初に渡ったのはイランのものであったろう。
シナイ半島

少なくとも第1王朝(紀元前3000年頃)または恐らくそれ以前から、エジプトではトルコ石がシナイ半島でエジプト人によって採掘され、用いられていた。現地のMonitu人はシナイ半島を「トルコ石の国」と呼んでいた。この地域にはおよそ650平方キロメートルに渡る6か所の鉱山があり、それらすべては半島の南海岸にある。これらの中で歴史上もっとも重要なのは、セラビト・エル・カジムと、ワジ・マガレであり、知られた鉱山の中で最古のものだと言われている。前者はハトホルのための古代の神殿から4キロメートルの場所にある。

このトルコ石は、玄武岩に覆われているか、またはもともと覆われていた砂岩の中で見つかる。


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