トリートーン
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「トリトン」と「トライトン」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「トリトン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
トリトンの図

トリートーン(古希: Τρ?των, Tr?t?n)は、ギリシア神話に登場する海神である。長母音を省略してトリトンとも表記される。海神ポセイドーンアムピトリーテーの息子。深淵よりの使者とされ、人間の上半身と魚の尾を持つ人魚のような姿で描かれるのが典型である。

古代ギリシア美術では、のち複数いる種族として描かれるようになった。さらには馬の前足のついた、いわゆるケンタウロ・トリートーン(英語版)(イクテュオケンタウロス)の図像が彫刻などで一般化し、ローマ時代に至るまでモザイク画フレスコ画にもちいられた。
語釈

トリートーンという名前は「(世界を構成する)第三のもの」、即ち海の世界を意味する、との説を小説家のロバート・グレーヴスが展開している[1]
海の神トリートーン

ヘーシオドスの『神統記』によれば、トリートーンは海神ポセイドーンアムピトリーテーの息子で、海中の黄金宮殿で父母とともに暮らす、深海を司る神である[2]

父親と同じく、彼もまた三叉の矛(トライデント)を持っている。しかし、彼の最たる特徴は、波を立てたり鎮めたりするためにラッパのように吹く法螺貝である。高らかに吹き鳴らされるその音たるや、巨人たちが「強健な野獣のうなり声だ」と勘違いし逃げ出すほど恐ろしいものであった。(ヒュギーヌス『天文詩』 ii. 23)

ギリシア中を大洪水が襲った時、法螺貝を吹いて水を引かせ、デウカリオーンとその妻を助けた。
トリートーン神と英雄たち

トリートーンはまたローマ神話や叙事詩にも登場する。『アエネーイス』では、トリートーンは、アエネーアースのラッパ吹きミーセーノスがほら貝を吹いたことを自らへの挑戦とみなし、その吹奏の才をねたんで海に投じて殺した[注 1][3][4]

ヘーラクレースがトリートーンと組み合い格闘する場面は、古代ギリシア美術、とくに黒絵式陶器の定番モチーフの一つであった[5]。だが、これを物語る文献は現存していない[6]。だが例数はより少ないが、同題材を扱うとみられるギリシア陶器のなかに、ヘーラクレースの相手を「ネーレウス」または「海の老人(英語版)」と記す例があり、ヘーラクレースとネーレウスとの確執についてならば、記述する文献が現存する(偽アポロドーロス『ビブリオテーケー』)[7][8]。「海の老人」は、いくつかの海神にあてはめられる表現であり、ネーレウスも、これに該当する[7] 。また、ネーレウスは、トリートーンのようにしばしば半人半魚の姿で描かれていた[7]

ひとつの説明によれば、このネーレウスを全身とも人間の姿で描く慣習が、絵師たちのあいだで定着したため、この場面を描く場合に、半魚人をトリートーンと記さざるをえなくなった。そしてネーレウスは、格闘を傍らで観戦するかたちでこの場面に登場する例もある[9]

赤絵式の時代が到来すると、このヘーラクレース対トリートーンの題材は完全に廃れ、代わりにテーセウスによるポセイドーン宮殿への冒険などが題材にされてゆき、その宮殿にはトリートーンが配置されることもしばしばある[5]。この冒険を記述する文学には、トリートーンが陪席するとは記されないが[10]、トリートーンがそこにいるとして描かれてもなんら不自然な点はないと指摘される[5]
リビュアの湖のトリートーン

アルゴー船物語では古代リビュア(北アフリカ)に坐す神格として登場するが、これは海神とは別の神として扱うむきもある[11][4]。この挿話のトリートーンは、原典ではポセイドーンとエウローペーの子とあり、異母となっている[14]

アルゴー船がシュルティスの砂州に打ち上げられた際[注 2]乗組員らは大船をトリートーニス湖へ運び、そこの神であるトリートーンが彼らを地中海へと導いた[15][16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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