トリュフ
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「トリュフ」のその他の用法については「トリュフ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
黒トリュフ(Tuber melanosporum )サン・ミニアートの白トリュフサン・ミニアートの黒トリュフ

トリュフとは、地下に生息する子嚢菌子実体のことで、主にセイヨウショウロ(Tuber)の多くののうちの一つである。セイヨウショウロ属以外にも、Geopora、Peziza、Choiromyces、Leucangiumなど100以上の属がトリュフに分類されている[1]。これらの属はPezizomycetesとチャワンタケ目(Pezizales)に属している。トリュフに似るRhizopogonやGlomusといった担子菌類は、Pezizalesから除外されている。

トリュフは外菌根なので、通常は樹木に密着して生息している。胞子の散布は、菌類を食べる動物(Fungivore)によって行われる[2]。これらの菌類は、栄養素の循環や乾燥に対する耐性など、生態学的に重要な役割を果たしている。

トリュフの中には食用として珍重されるものもある。フランス美食家ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランは、トリュフを「キッチンのダイヤモンド」と呼んだ[3]。食用のトリュフは、フランス料理をはじめとする各国の料理で高級食材として使用されている[4]。トリュフは自然の生息地で収穫される[5]ほか、栽培されている地域もある。
生態

子実体は、少なくとも初期には地下(深さはおおむね5-40センチメートル程度)に形成されるが、成熟するとしばしば地上に現れる。胞子の分散には、哺乳類リスノネズミモモンガ等)やある種のハエ(たとえばAnisotoma cinnamomea Panzer[6]、あるいは俗にトリュフバエmouches a truffe と呼ばれるSuillia pallida Fallen[7][8]など)が関与しているといわれている。

少なくともTuber 属に含まれる種は全てが外生菌根を形成し、ナラ属(Quercus)やブナ属(Fagus)、カバノキ属(Betula)、 ハシバミ属(Corylus)、クマシデ属(Carpinus)、ヤマナラシ属(Populus)あるいはマツ属(Pinus)などの樹木の細根と共生している。また、ハンニチバナ科(Cistaceae)に属するハンニチバナ属(Helianthemum)やゴジアオイ属(Cistus)などの植物の多くもまた、Tuber 属の菌との間で外生菌根を形成する[9][10][11]

Terfezia 属についてはカヤツリグサ科ヒゲハリスゲ属(Kobresia)の一種[12]や、ハンニチバナ属のいくつかの種[13][14]との間に共生関係を持つとの報告があるが、菌根の形態は Tuber 属のものとは異なるという。

の落ちた場所ではトリュフがよく育つ事が経験的に知られているが、これは落雷による高電圧印加により窒素が固定され、生じた亜硝酸塩が養分になるからとする研究がある[15]
種類

トリュフは大まかには黒トリュフと白トリュフに分けられる[16]。特にフランス産のペリゴール・トリュフ(黒トリュフ、T. melanosporum Vitt.)とイタリア産の白トリュフ(T. magnatum Pico)が珍重され、他にも数種のヨーロッパ産セイヨウショウロが食用に採取されている。日本ではクロアミメセイヨウショウロ(T. aestivum Vitt.。ヨーロッパにも分布し、夏トリュフと呼ばれる)やイボセイヨウショウロ(T. indicum Cooke et Massee)などの近縁種が報告されている。中国産のイボセイヨウショウロは、黒トリュフや白トリュフの廉価な代用品として大量に輸出されている。
黒トリュフ

黒トリュフはほぼヨーロッパでのみ生産され、中でもフランス(生産の45%)、スペイン (35%) 、イタリア (20%) が多い。スロベニアクロアチアでも少量生産されている。1900年にはフランスでは約1,000トンの黒トリュフが生産されていた。生産は1世紀にわたり大きく減少し、現在の生産量は通常20トン前後であり、最良の年でも46トンに過ぎない。フランス産のうち80%は南東フランスの上プロヴァンスヴォクリューズ県およびアルプ=ド=オート=プロヴァンス県)、ドーフィネの一部(ドローム県)、ラングドックの一部(ガール県)で生産され、20%は南西フランスのケルシー(ロット県)およびペリゴールで生産される。このトリュフは子実体発生の条件が整うと、その地上部には草の生えない「ブリュレ(焼け跡)」と呼ばれる領域を生じる。これは、未解明の物質によるアレロパシー作用である。

季節により収穫できる品種が異なり、夏トリュフ(Tuber aestivum)、秋トリュフ(Tuber uncinatum)、冬トリュフ(Tuber melanosporum)などがある[16]

中国産黒トリュフは主に雲南省四川省で収穫されるイボセイヨウショウロ(Tuber indicum)という品種である[16]。世界中に輸出されている[16]
白トリュフ白トリュフ

白トリュフ(Tuber magnatum)は北および中央イタリアに見られ、Tuber borchii (whitish truffle) はトスカーナ州ロマーニャ地方、マルケ州で見られる。

黒トリュフに比べて産地が限られ、生産量も少ない[17]。白トリュフは黒トリュフよりも香りが高いとされ、そのままスライスしたものが料理に用いられる[16]

日本にも、白トリュフであるホンセイヨウショウロ(Tuber japonicum)、ウスキセイヨウショウロ(Tuber flavidosporum)などが存在し、その他セイヨウショウロが20種以上存在するとされる[18]
食材としての利用
歴史

トリュフという言葉が文献に登場するのは、紀元前16世紀である。古代ギリシャ古代ローマの時代には生態や調理方法、あるいは健康への効能について数多くの文献が記され、ピタゴラスが健康への効能を説いたのが最初であるとされる。しかし、当時のトリュフは現在の黒トリュフとは異なり、テルファス(英語版)という食用きのこであった。ローマ時代が過ぎるとしばらくトリュフは忘れられた存在となった。再び脚光を浴びるのは14世紀のフランスからで、現在の黒トリュフのことである[19]

現在、食材として大いに賞揚されている。1825年ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Brillat-Savarin)はその著書『美味礼讃』の中で、トリュフを「台所のダイヤモンド」と称し、その媚薬としての効能を賞賛した。トリュフの媚薬としての効果は定かではないが、フランス、北部イタリア、イストリア地方の日常の料理、および国際的なグルメ界では今でも高い評価を保っている。

『南仏プロヴァンスの昼下がり』などで知られる作家のピーター・メイルが、トリュフの話題を南仏プロヴァンスを舞台にしたエッセイの中心にすえて、日本でも広く一般にその味覚が話題になるようになった。

2021年、「イタリアにおけるトリュフの探索と採集、伝統的な知識と実践」がUNESCO無形文化遺産に登録される[20]


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