トリマラン
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USA-17 ?90-フート-全長 (27 m)のトリマラン。旧名BOR90。フィリピンの伝統的なパラウ船ダブルアウトリガーヨット(バンカ船)

トリマラン(trimaran)またはダブルアウトリガー(double-outrigger)とは三胴船で、普通は主船体と、主船体から張り出した横桁に取り付けられた2つの小さなアウトリガー船体(または「フロート」)で構成される。現代のトリマランのほとんどは、レクリエーションやレース用に設計された帆走用ヨットである。

その他にはフェリー軍艦がある。大型艦船では主船体と副船体にも大きな接合強度が必要で、この部分をが並んだ台として2階建状に幅広の上部船体を載せている形態が多い。
概要

海域東南アジアオーストロネシア文化の伝統的なダブルアウトリガーカヌーに由来する。特にフィリピンと東インドネシアでは、この伝統的な漁船の船体設計が依然として多数を占めている。ダブルアウトリガーは、古いカタマラン(双胴船)シングルアウトリガー船の設計から派生した[1][2]

オーストラリアの造船会社オースタルによるとカタマラン(双胴船)やモノハル(単胴船)と比較し、外船体の配置を最適化することで波の発生を最小限に抑え、その結果、貨物1,000トンを積載した状態では速度を発揮する際に必要な出力を最小化できる、横方向からの力を受けた時の揺れがカタマランよりも少なくなり、向い波を受けたときの縦揺れも抑えられ、船酔いの抑制にも優れているなどのメリットがある[3]。また船幅の拡大が容易となり排水量と比較して甲板の面積が広くなる[4]

マイナス面としては船体構造が複雑になるので、積載重量当たりのコストが高価になり、重量物の輸送に向かない(低密度の貨物や旅客向け)、積載重量当たり船体サイズが大きくなり船体下部の構造が複雑になるためドック入りが難しくなる[3]。また速度性能は高いが船幅が大きくなるためモノハルと比較すると旋回性能が劣る[4]

2005年から2020年の間に、オースタルは14隻のアルミニウム製の高速トリマラン船を建造した。そのうち11隻はアメリカ海軍向けだった。 2020年は、11隻のトリマランが建造中または受注中である。オースタルはオーストラリアとアメリカに加えて、ベトナムフィリピンに造船所を有している[5]

「トリマラン」という言葉は、「3」を意味する接頭語の「tri-」に、「双胴船(カタマラン)」を意味する「(cata-)maran」の後半を繋いだかばん語であり[6] 、ウクライナ生まれで現代的な多胴船の先駆者であるビクター・チェチェット(Victor Tchetchet)の造語だと考えられている[7]
帆走用
歴史イラヌン人(英語版)のLanong船。ダブルアウトリガーの軍船で、フィリピンマギンダナオ王国スールー王国18世紀から19世紀後半まで使われた。また、襲撃や海賊にも使用されていた[8]オーストロネシアの船の発達における形態の派生過程(Mahdi、1999)「バラティック」はレプリカで、フィリピンビサヤ諸島の伝統的なオーストロネシア文化のトリマランであるパラウ船(Paraw)を模している。

最初のダブルアウトリガー船オーストロネシア人によって開発され、今日でも海域東南アジアの伝統的な漁師によって広く使用されている。これは、古代のシングルアウトリガー船から発展した物で、風下時のタッキングの不安定さを解決した[9]。ただし、ミクロネシアポリネシアのオーストロネシア人の間では、ダブルアウトリガーは開発されなかった(メラネシア西部には存在する)。代わりに、シングルアウトリガーとカタマランが使用された[1][2][10][11][12]

ダブルアウトリガーの軍船は古代から近世まで、海域東南アジアで広く使われた。例としては、フィリピンのビサヤ諸島パンパンガ州のカラコア(karakoa)[13][14]、イラヌン人やバンギギ人のラノン(lanong)[8]モルッカ諸島のコラコラ(Kora kora)[15][16]ムンタワイ諸島のナバトボゴル(knabat bogolu )[17]、そしてボロブドゥール遺跡の船のレリーフ(Borobudur ship)。これらは植民地時代にヨーロッパ人によって「プロア(英語版)」と呼ばれることが多かったが、この言葉は広く現地の在来船を指し、ダブルアウトリガー船以外のシングルアウトリガー船やアウトリガーのない船を指すこともある[18][19]
20世紀

セーリング用カタマランとトリマランは、1960年代と1970年代に人気を博した[11][20]。現代的なセーリングトリマランは、1945年にアメリカで、長さ約24フィート(7メートル)の船舶用の合板で2隻のトリマランを建造したウクライナからの移民のビクター・チェチェットによって始まった。彼が「トリマラン」という用語を作り出したと信じられている[7]。1950年代と1960年代に、アーサー・パイヴァー(Arthur Piver)は合板組み立て式のトリマランを設計・製造した。これは重く、現代の基準では海に馴染むものではなかった。それにもかかわらず、これらのいくつかは海を渡った[21]。他のデザイナーたちが彼に続き、トリマラン・クルーザーの性能と安全性が改良された。

これらは自作用キットだったが、完成品も販売されるようになった。そのうちのいくつかは長さ19?36フィート (5.8?11.0 m)で、「日曜船乗り」用に車で曳いて輸送できるように設計されている。インドネシア西スラウェシのマジェネで撮影。伝統的なオーストロネシアのクラブクロウセイル(英語版)を備えたダブルアウトリガーヨットであるサンデク船(Sandeq)

現代の西洋製のトリマランは、通常、タンジャセイル(英語版)やクラブクロウセイル(英語版)のようなオーストロネシア式の帆装ではなく、標準的なバミューダリグ(英語版)である。また、全体ではかなり幅広になっている。さらに、フロートも、アウトリガーカヌーの物よりもはるかに浮力があり、大きな船形に見合っている。それは傾斜して沈んだ分だけ抗力になり、フロートがどこまで沈んでいるかはリーフィング(英語版)(縮帆)するタイミングの目安になる。

向かい風に対する最大速度、最大速度、追い風の場合の速度に関するDoran(1972年)による客観的な比較では、ふたつの伝統的なアウトリガー船、フィリピンのダブルアウトリガーのベンタと、カロリン諸島のシングルアウトリガーのワ (船)(英語版)の両方を使った。それぞれ、当時の現代的トリマランよりも優れていた[22]LoeRea 、映画「ウォーターワールド」で使用された60フィート(18メートル)のトリマラン
折りたたみトリマランハイシエラレガッタでのウェタトリマランレース


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