トリック・オア・トリート
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ミシガン州レッドフォード郡区スケルトンの仮装をしてトリック・オア・トリートをする子供。1979年10月31日。

トリック・オア・トリート(英語: Trick-or-treating)は、いくつかの国で行われているハロウィンの伝統的な風習であり、また、その掛け声である。10月31日の夜にハロウィンの仮装をした人々が家々を回り、「トリック・オア・トリート?(trick or treat?)」と住人に尋ねる。日本では「トリック・オア・トリート」の後に、「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」と言う。

「トリック」は、施しを受けられなかったときに住人や所有物に対しいたずらをするという脅しであるが、通常は何もしない。「トリート」は施しで、通常キャンディなどのお菓子であるが、代わりにお金を渡すところもある。

トリック・オア・トリートの起源はスコットランドアイルランドに遡る。これらの地域では少なくとも16世紀から、ハロウィンに仮装した人々が家々を回り、ちょっとしたパフォーマンスをして食べ物や施しを受ける「ガイジング(guising)」という風習があった。19世紀のスコットランドやアイルランドでは、ハロウィンに仮装した人々が家々を回って、を朗読して食べ物を貰い、歓迎されない場合には不幸が訪れると警告したという記録が多く残されている[1][2]。北アメリカでは、仮装した子供たちが家々を巡り食べ物やお金を貰うガイジングは、1911年のカナダ・オンタリオ州に最も古い記録がある[3]。「トリック・オア・トリート!」の掛け声は同じオンタリオ州で1917年に記録されたのが最初である。スコットランドやアイルランドでは、2000年代にようやく「トリック・オア・トリート」と言うようになった[4]。それまでアイルランドの子供たちは、玄関の前で「ハロウィンパーティを手伝って(help the Halloween party)」と言うのが一般的だった[4]

トリック・オア・トリートは、イギリスやアイルランド、アメリカ、カナダ、オーストラリアといったアングロスフィア(英語版)の国々で広く行われている。また、その他の国でも似た風習がある。
歴史
起源「ソウルケーキ、ソウルケーキ、全てのキリスト教徒の霊魂にソウルケーキのお恵みを」[5]

ハロウィンは冬の始まりを告げる10月31日から11月1日に行われるケルト人の祭り、アイルランド島スコットランドマン島におけるサウィン祭ウェールズコーンウォールブルターニュにおけるカラン・ガーフ祭(英語版)が起源ともされ、キリスト教布教以前のものと信じられている。9世紀にはカトリック教会が11月1日を諸聖人の日と定めた。ケルト語族の中では、精霊や妖精(エース・シー(英語版))、死者の霊魂を食物や飲物を捧げて鎮める時とされており、同様の信仰や風習はヨーロッパの他地域にもみられる。トリック・オア・トリートは、人々が死者の霊魂になりすまし、それらのために供物を受け取るという伝統から発展したとの説がある。S.V.ペドルは、「幸運と引き換えに報酬を要求する、老いた冬の精霊を擬人化したもの」と主張している[6]。精霊や霊魂になりすますことで、それらから身を守ることもできると信じられていた[7]

15世紀以来、キリスト教徒の間では万聖節の時節(英語版)(10月31日から11月2日)にソウルケーキ(英語版)を分け合う風習(ソウリング、ソウルケーキング)が行われてきた[8][9][10]。人々は家々を訪れ、死者の代理として、または死者の魂への祈りの見返りとして、ソウルケーキを貰った[11]。後には、ハロウィンに家々を巡り、窓の外で「Soul, souls, for a soul-cake; Pray you good mistress, a soul-cake!(ソウル、ソウル、ソウルケーキ。善良な奥様、ソウルケーキのお恵みを!)」などの歌を歌い、ソウルケーキをせがむようになった[12]。ソウリングは、ブリテン島の一部、フランドル、南ドイツ、オーストリアで行われた記録が残っている[13]ウィリアム・シェイクスピアの喜劇「ヴェローナの二紳士」(1593年)にこの風習が登場し、小姓のスピード(SPEED)が主人を、ハロウィンの物乞いのようにめそめそ泣くと非難している場面がある[14]。イングランド西部、ウェールズ国境付近でソウリングは一般的な風習であった[10]。19世紀イギリスのとある作家によれば、「ファンタスティックな衣装を着た子供の集団が農家や小屋を巡り、歌を歌いながら、「soal-cakes」と呼ばれるケーキ、リンゴ、お金など、善良な人がくれるものなら何でもせがった。[15]
ガイジング北アイルランド、ロンドンデリーのハロウィンショップ。ハロウィンの仮面は、アイルランドやスコットランドでは「false faces」と呼ばれている。

スコットランドやアイルランドでは、子供たちが仮装して家々を巡り、食べ物や硬貨、ハロウィンパーティのために用意されたリンゴやナッツ(最近はチョコレートも)を貰う「ガイジング(guising)」という風習がある[4][16][17]。なお「ガイジング」は、子供たちの仮装(disguises)に由来する[2][18]。スコットランド中西部方言では「ガロシャンズ(galoshans)」と呼ばれる[19]。スコットランドでは、仮面か顔に色を塗ったり黒くした白装束の若者が家々を巡り、詩を歌い、ときには歓迎しなければ悪ふざけするぞと脅していた[20][21]

スコットランドでは16世紀から、しばしば新年の行事としてガイジングの記録が残っている。エルギンの長老派教会の小会(英語版)の記録には1623年の正月に踊った男女の名前が書かれているが、6人の男が仮面とバイザーを着けて教会の敷地や家の庭で剣舞を行い、それぞれ40シリングを稼いだとある[22]。また、1895年には、カブをくり抜いて作ったランタンを持ち仮装した人々が家々を訪れ、ケーキや果物、お金を貰った記録がある[23]

ハロウィンの仮面は、アイルランドやスコットランドでは「false faces」と呼ばれていた[24][25]。ある作家は1890年にスコットランドのエアで仮装をする人々について書き残している:.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}I had mind it was Halloween . . . the wee callans were at it already, rinning aboot wi’ their fause-faces (false faces) on and their bits o’ turnip lanthrons (lanterns) in their haun (hand).[25]

ガイジングは金持ちの家に対しても行われ、1920年代、少年たちがハロウィンに、裕福な村のサウス・ラナークシャーのソーントンホール(英語版)までガイジングをやりに行っていた[26]ノース・エアシャーのアードロッサン(英語版)で1950年代に行われたガイジングでは、ある子供が近所の家のドアをノックしてパフォーマンスを行い、12シリング6ペンスを貰ったとの記録がある[27]


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