トリクロロエチレン
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トリクロロエチレン


IUPAC名

trichloroethene
別称1,1,2-Trichloroethene,
1,1-Dichloro-2-Chloroethylene,
1-Chloro-2,2-Dichloroethylene,
Acetylene Trichloride, TCE, Trethylene, Triclene, Tri, Trimar, Trilene, HCC-1120
識別情報
略称TCE
CAS登録番号79-01-6 
PubChem6575
ChemSpider13837280 
UNII290YE8AR51 
EC番号201-61-04
KEGGC06790 
ChEBI.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul{line-height:inherit;list-style:none none;margin:0;padding-left:0}.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol li,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul li{margin-bottom:0}

CHEBI:16602 

ChEMBLCHEMBL279816 
RTECS番号KX4550000
ATC分類N01AB05
SMILES

Cl\C=C(/Cl)Cl

Cl\C=C(/Cl)Cl

ClC=C(Cl)Cl

InChI

InChI=1S/C2HCl3/c3-1-2(4)5/h1H Key: XSTXAVWGXDQKEL-UHFFFAOYSA-N 

InChI=1/C2HCl3/c3-1-2(4)5/h1H

特性
化学式C2HCl3
モル質量131.39 g mol?1
示性式ClCH=CCl2
外観無色液体
密度1.46 g/cm3 (20 °C)
融点

?73 °C, 200 K, -99 °F
沸点

87.2 °C, 360 K, 189 °F ([1])
への溶解度1.280 g/L[1]
溶解度ジエチルエーテル, エタノール, クロロホルム
屈折率 (nD)1.4777 at 19.8 °C
危険性
安全データシート(外部リンク)ICSC 0081
Mallinckrodt Baker
主な危険性吸入もしくは経口摂取すると有害
NFPA 704120
発火点420 °C
関連する物質
関連するビニルハライドクロロエチレン
関連物質クロロホルム
1,1,1-トリクロロエタン
1,1,2-トリクロロエタン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

トリクロロエチレン (trichloroethylene) は有機塩素化合物の一種である。エチレン水素原子のうち3つが塩素原子に置き換わったもの。洗浄剤として使われたが、発がん性があることが明らかとなった。常温では無色透明の液体で、不燃性である。揮発性があり、甘い香りを持つ。

脱脂力が大きいため、半導体産業での洗浄用やクリーニング剤として1980年代頃までは広く用いられていた。しかし発癌性が指摘され、代替物質への移行が行われている。

土壌汚染や地下水汚染を引き起こす原因ともなるため、各国で水質汚濁並びに土壌汚染に係る環境基準が定められている。日本では化学物質審査規制法により、1989年に第二種特定化学物質に指定された。国際がん研究機関の発がん性評価ではグループ 1 の「ヒトに対する発癌性が認められる」物質として規定されている。このがんリスクにより、労働安全衛生法第二類物質特別有機溶剤等にも指定されている。

工業的な合成法とされていたのは、銅などの触媒のもと、1,2-ジクロロエタン塩素、または塩素と酸素を作用させる方法であった。
製造

1970年代初頭より前にはアセチレンから2段階の工程で作られていた。まず、塩化鉄(III) 触媒の存在下、90 ℃ でアセチレンに塩素を作用させて 1,1,2,2-テトラクロロエタンとする。 HC ≡ CH + 2 Cl 2 ⟶ Cl 2 CHCHCl 2 {\displaystyle {\ce {HC\equiv {CH}+2Cl2->Cl2CHCHCl2}}}

次に脱塩化水素を行い、トリクロロエチレンを得る。この反応は水酸化カルシウム水溶液で行われる。 2 Cl 2 CHCHCl 2 + Ca ( OH ) 2 ⟶ 2 ClCH = CCl 2 + CaCl 2 + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {2Cl2CHCHCl2 + Ca(OH)2 -> 2ClCH=CCl2 + CaCl2 + 2H2O}}}

または、塩化バリウムまたは塩化カルシウム触媒を用い、気相中 300–500 ℃ に加熱してもよい。 2 Cl 2 CHCHCl 2 ⟶ ClCH = CCl 2 + HCl {\displaystyle {\ce {2Cl2CHCHCl2 -> ClCH=CCl2 + HCl}}}

今日では、大部分がエチレンから合成されている。まず塩化鉄(III) を触媒として塩素化し、1,2-ジクロロエタンとする。 CH 2 = CH 2 + Cl 2 ⟶ ClCH 2 CH 2 Cl {\displaystyle {\ce {CH2=CH2 + Cl2 -> ClCH2CH2Cl}}}

さらに塩素を加えて 400 ℃ 付近に加熱すると、トリクロロエチレンが得られる。 ClCH 2 CH 2 Cl + 2 Cl 2 ⟶ ClCH = CCl 2 + 3 HCl {\displaystyle {\ce {ClCH2CH2Cl + 2Cl2 -> ClCH=CCl2 + 3HCl}}}

この反応を触媒する基質は数多い。最も一般的に用いられるのは塩化カリウム塩化アルミニウムの混合物である。多孔質の炭素も用いられる。この反応ではテトラクロロエチレンが副生し、系に加えられた塩素の量によってはそちらが主生成物になることもある。一般的に、両者は一緒に回収され、蒸留によって分離される。
用途

様々な有機化合物の良溶媒である。1920年代に初めて広く使われ始めたとき、その主用途はダイズココナッツヤシからの植物油の抽出であった。他にも、食品工業においてコーヒーデカフェホップ香辛料からの香料の抽出に使われた。ドライクリーニング用の溶媒としても利用されたが、この用途は1950年代にはテトラクロロエチレンに取って代わられた。

毒性をもつことから1970年代以降ほとんどの国で食品および医薬品工業での使用が禁止された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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