トランス_(音楽)
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トランスのDJおよび作曲家の一人 Bryan Kearney(ブライアン・カーニー)

トランス(:trance)は、ハウスから派生したEDMの一種である。125~145BPM付近で、短いシンセサイザーの旋律を際限なく繰り返し、うねるようなサウンドが特徴である。その反復されるリズムやメロディーが、さも脳内の感覚が幻覚催眠を催す「トランス状態」に誘うかのようであることからトランスと呼ばれている[1]。主にクラブシーンやレイヴパーティーなどで、DJによって再生される。トランスの中には2つの大きな流れがある。
歴史

ダンスミュージックとしてのトランスは、1980年代中期にアシッド・ハウスから派生した。ハウスから派生したのかテクノから派生したのかは判断が難しいが[1][2]、テクノ組のトランス参入は中期以降である。有名なDJには、Armin van Buuren(アーミン・ヴァン・ビューレン)、Tiesto(ティエスト)、Barthezz(バルテーズ)らがいる。

イビサ島ゴアは、トランス、テクノの聖地であり、ヒッピー、ドラッグ・カルチャーの発信基地としても有名である。トランスミュージックは、主に西ヨーロッパを中心に流行しているトランスと、ゴアに始まって世界規模で流行しているサイケデリックトランスがあり、これらは互いに影響しながら異なった変化を遂げた。ドイツフランクフルトで誕生したトランスは隣国ベルギーのニュービートなどから強く影響を受け、リズミカルなドラムパターンや叙情的なメロディを持っており、現在のトランスミュージックの基礎を作った。また、1990年代初頭からインド西海岸のゴアに持ち込まれたドイツ、ベルギーを初めとするハードコアテクノやジャーマントランスなどが、1993年から1994年頃ゴアトランスに発展した。

2010年代半ばより、Eddie Bitar や Sean Tyas、Talla 2XLC[注釈 1]などのアップリフティングトランスのアーティストが、サイケデリックの要素を取り入れたり、サイケデリックトランスの制作と並行したりするようになった。また、Vertical Mode や Waio、Ilai などのサイケデリックトランスのアーティストが、アップリフティングトランスやテックトランスのリミックスを行うなど、サイケデリックトランスとそれ以外の間で再融合がなされた。

日本では2000年代以降、avexが「サイバートランス」として大きく取り上げ、当時の若者文化を介して一般にもトランスというジャンルを認知させた。また、2010年代以降、Nhato や Bernis、N-sKing などの日本のアーティストが、Diverse System や Unitone などのオタク層向けレーベルを通じてリリースしているほか、彼らの一部は海外レーベルからもリリースしている。

2024年現在までに、ヨーロッパのほか、アラブ圏インドマレーシア南北アメリカオーストラリア、日本、イスラエル[注釈 2]などのアーティストが、主要な大手レーベルグループ(Armada Music、Black Hole Recordings、FSOE)からリリースした。
派生ジャンル
ハードトランス (Hard Trance)
「en:Hard trance
」も参照ハードトランスは、トランスから発展、派生した。

ハードトランスが発展する中で、他のハードなダンスミュージックとの関係性が、密接になっていった[3]。激しいビートが特徴のトランス。代表的なアーティスト、DJには、YOJI BIOMEHANIKA、Dark By Design、Emilio、Guyver、K90らがいる
アシッドトランス (Acid Trance)
アシッドテクノから派生した。当時テクノやハウスで定番の機材となっていたローランドTB-303ベースシンセサイザーのうねった音でメロディーや展開を作っていたのが特徴である。代表的なアーティストはアート・オブ・トランス(英語版)、ハードフロアなど。
ゴアトランス
ヒッピーの聖地、インドゴア地方で誕生し発展したトランス。イスラム音階などの民族音階を用いたメロディに宗教をイメージさせる民族的なパーカッション・音声をサンプリングしており、有機的でエスニックな楽曲が主流となっている。クラブシーンにおいては1990年代前半から後半にかけて世界的に大きく流行したが、2000年代に入ってからはゴアトランスをフェイバリットとしていたコンポーザーの引退・レーベルの消滅が相次ぎ、残ったアーティストもここより派生したサイケデリックトランスを嗜好する傾向が強くなり、徐々にマイナージャンルへと縮小していった。一方で、ご当地インドでは民族音楽との融和性が高いことから、マサラムービーのダンスシーンで用いられるなど、文化的定着を見せている。なお、当時シーンを牽引したアーティストはイスラエル出身が多かった。代表的なアーティストはアストラル・プロジェクション(英語版)、ラジャ・ラム (The Infinity Project)、Man With No Name(英語版)など。
サイケデリックトランス
1990年代後半にゴアトランスから派生したジャンル。明確な境界や定義はないが、ゴアトランスと比べるとよりハードかつ無機質でメタリックな質感の音色が多用され、よりサイバーな印象が強くなっている。また、9.11等を受けてか、アラビア語ウルドゥー語のようなアジアのエスニックな言語ではなく英語ヘブライ語をサンプリングする傾向が強い。2000年代以降に世界各地で流行の兆しを見せ、イスラエル、イギリスフランスを始め、オーストラリア南アフリカロシア、そして日本などのレーベルからCDがリリースされている。代表的なアーティストはジュノ・リアクター、GMS(英語版)、HallucinogenInfected MushroomShpongle、Skazi(英語版)、Talamasca(英語版)、Astral Projection、The Infinity Project、Kox Box、Man With No Nameなど。
ユーロトランス (Euro Trance)、ハンズアップ (Hands Up)
主にヨーロッパを中心に展開されているトランス。かなりハードなキックとベースラインなどハードコアテクノの派生とも言える要素も含まれているが、比較的音数が少なくアップテンポでメロディアスなメロディーラインが特徴と言える。
ダッチトランス (Dutch Trance)
1990年代後半に派生したユーロトランスの1ジャンル。ローランド製JP8000/8080シンセサイザーに搭載されたSuper Sawオシレーターの音色を多用した楽曲が多く、それを利用した壮大でメロディアスな楽曲が代表的である。1998年にリリースされたSystem F - Out Of The Blueで西ヨーロッパを中心に流行したが、主要なアーティストの多くがよりプログレッシブな音へシフトしたこともあり現在は下火である。なお、System Fを始めとする代表的なアーティストの多くがオランダ出身であり、オランダを中心に流行し始めたことからダッチ(Dutch:オランダの)トランスと呼ばれている。しかしスタンダードになってしまったが故に特徴を示すジャンル名としては形骸化してしまっている。代表的なアーティストはArmin van BuurenFerry CorstenRank 1Tiestoなど。
プログレッシブトランス (Progressive Trance)
このジャンルはテクノやハウスなど他のジャンルとクロスオーバーする傾向が強く、プログレッシブ・ハウスとの明確な線引きもないためしばしば混同して呼称される。プログレッシブ(進歩的)の名の通り、既存のカテゴリーにとらわれない実験的でジャンルレスな楽曲が多いのが特徴である。また海外ではこれらのジャンルを総称してプログレッシブダンスミュージックと呼称することもある。括る言葉はまだ生まれていないがプログレッシヴトランスというジャンル内でも2つのタイプに分かれる。1つはSasha、John Digweedらプログレッシヴハウスの延長線上にいるタイプ。もう1つはMarkus Schulzに代表されるユーロトランスと密接に連携してきたタイプで、こちらは2004年以降増えており今日の主流となっている。代表的なアーティストはSander Kleinenberg(英語版)、Sasha(英語版)(ハウス寄り)、Gabriel & Dresden(英語版)、Markus Schulz(英語版)(トランス寄り)など。
エピックトランス (Epic Trance)
1990年後期日本のクラブ誌LOUDの執筆DJらにより専ら使用され始めたのが国内での起点であり、その軌跡は当時のインディーズ版やメジャー版の出版の際のライナーノーツでも引用を確認できる。


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