トランス型不飽和脂肪酸(トランスがたふほうわしぼうさん、英: trans unsaturated fatty acids)、トランス脂肪酸は、構造中にトランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸。トランス脂肪酸は天然の動植物の脂肪中に少し存在する。水素を付加して硬化した部分硬化油を製造する過程で多く生成される。マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングはそうして製造された硬化油である。他にも特定の油の高温調理やマイクロ波加熱(電子レンジ)によっても多く発生することがある。また天然にはウシ、ヒツジなど反芻動物の肉や乳製品の脂肪に含まれる。
LDLコレステロールを増加させ心血管疾患のリスクを高めるといわれ、2003年に世界保健機関(WHO)/国際連合食糧農業機関(FAO)合同専門委員会によって1日1%未満に控えるとの勧告が発表され[1]、一部の国は法的な含有量の表示義務化、含有量の上限制限を設けた[2]。世界保健機構(WHO)は、トランス脂肪酸を2023年までに根絶させることを目指している[3]。日本では、製造者が自主的に取り組んでいるのみであるが[4]、同じように目標値が設定されている飽和脂肪酸の含有量が[1]増加している例が見られる[5]。
パン、ケーキ、ドーナツ、クッキーといったベーカリー、スナック菓子、生クリームなどにも含有される[6]。他にもフライドポテト、ナゲット、電子レンジ調理のポップコーン、ビスケットといった食品中に含まれ、製造者の対策によって含有量が低下してきた国もあれば、そうでない国もある[2]。そうした食品を頻繁に食べれば、トランス脂肪酸を摂取しすぎることもある[7]。 植物油や魚油に含まれる天然の不飽和脂肪酸では、ほとんどの二重結合はシス型をとり、折れ曲がった構造である。一方、飽和脂肪酸を製造するために水素を添加し水素化させると、飽和脂肪酸になり切れなかった一部の不飽和脂肪酸のシス型結合がトランス型に変化(エライジン化し)し、直線状の構造を持つようになる[4]。このような不飽和脂肪酸をトランス脂肪酸という。水素化は、酸化による劣化が起こりやすいという面で扱いにくい不飽和脂肪酸から、酸化による劣化がしにくいという面で扱いやすくするために行われる。[要出典] 一価不飽和脂肪酸飽和脂肪酸 トランス脂肪酸は、自然界には反芻動物(牛、ヤギなど)の脂肪分に含まれている[2]。反芻動物の肉や乳の脂質のうち2-5%を占める。これら動物の体内で微生物により産生されている。天然のトランス脂肪酸として、共役リノール酸やtrans-バクセン酸などがある。これらの天然のトランス脂肪酸は天然の不飽和脂肪酸の中にわずかに含まれており、乳製品であるバターなどにもわずかに含まれる。 人工のトランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸を製造するための水素化や、不飽和脂肪酸を多く含む植物油の精製の際に生じる。そのため、不飽和脂肪酸を多く含む油脂を水素化して製造するマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングには数%から十数%含まれる。 また、高温で長期間加熱された植物油にはtrans-ヒドロペルオキシド不飽和脂肪酸を初めとする多様なトランス脂肪酸類が含まれる。なぜなら、cis体である不飽和脂肪酸が空気酸化されるとヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸
構造
トランス(エライジン酸)シス(オレイン酸)飽和(ステアリン酸)
エライジン酸は、トランス型の不飽和脂肪酸であり、植物性脂肪の部分的な水素添加やエライジン化によって生成される。融点43-45℃。水素原子(H)が炭素(C)の二重結合をはさんで反対側についている状態。オレイン酸は、シス型の不飽和脂肪酸であり、天然の植物性脂肪の一般的な成分である。融点16.3℃。水素原子が炭素の二重結合をはさんで同じ側についている状態。ステアリン酸は動物性脂肪で見つかった飽和脂肪酸であり、完全に水素が付加した成分である。二重結合を持たないため、ステアリン酸はシスやトランスの形をとらない。
これらの脂肪酸は、同一の化学式で二重結合の方向のみが異なる幾何異性体である。この脂肪酸は二重結合を含まず、前の2つの異性体ではない。
食品中の存在