トランス女性(トランスじょせい・英: trans woman、 Male to Femaleの略称・ MtF )は、出生時には男性と割り当てられたが、女性としての性同一性とジェンダー表現をもつトランスジェンダーである。トランスジェンダー女性とも呼ぶ。
概要「トランスジェンダー」も参照
トランス女性は出生時に割り当てられた性別である男性とは異なり、女性としての性同一性(ジェンダー・アイデンティティ)を持っている[2][3]。トランス女性を「元男性」といった言い方で表現するのは不適切であるとされる[4]。性同一性は自称ではなく、ある程度の一貫性や継続性があるものなので、個人で自由に好きなように性別を選択できるものではない[5][6][7][8]。そのため男性が「今日から女性だ」と言えばすぐさまトランス女性となるといったものではない[9]。
他には「トランスセクシュアル女性(トランスセクシャル女性)」という言葉もある。ただし、現在ではトランスセクシュアルという言葉はトランスジェンダーという用語と比べると使用が避けられる傾向にある[10]。
「MtF」という表現もトランス女性と同義であるが、性別二元論的であり、医療化を強化しているとみなされることもあり、この用語の使用は推奨されないと説明されることがある[11]。
出生時に割り当てられた性別が女性で、性同一性も女性である場合は「シスジェンダー女性」と呼ぶ。また、出生時に割り当てられた性別が女性で、性同一性が男性である場合は「トランスジェンダー男性(トランス男性)」となる[12]。
トランス女性とよく似た言葉に「トランスフェミニン」がある。トランスフェミニンとは、出生時に男性に割り当てられた(「Assigned male at birth」の頭文字をとって「AMAB」とも呼ぶ)ものの、自分を女性であると認識している人々を指す包括的な用語である[13][14]。トランスジェンダー女性だけでなく、女性らしさを認識するノンバイナリーの人々や、部分的に女性らしさを認識するデミガール、ジェンダー・フルイド、さらには女性らしさを認識する他のAMABの人々も含む[13]。
トランス女性は女性らしい格好を好む人もいれば、そうでない人もいる[15]。しかし、トランス女性はシスジェンダー女性よりも「女らしくしなければいけない」という圧力を受けることもある[15]。「ジェンダー表現」も参照
トランス女性の性的指向は他のセクシャリティと変わらず様々である。2012年に約3000人のアメリカ国内のトランス女性を対象にした性的指向調査では、31%が両性愛(男女双方が恋愛対象)が最多となった。そして、29%が同性愛(女性が恋愛対象)、23%が異性愛(男性が恋愛対象)、7%が無性愛、7%が「クィア」、2%が「その他」と回答した[16]。 この節はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。ノートでの議論と記事の加筆
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詳細は「性別移行」を参照
トランス女性が性別移行において医学的な手術を行うかどうかは個人で異なる[17]。そもそもトランスジェンダーの人々がみんな性別違和を感じているとは限らない[18]。
トランスジェンダーの全体ではないが身体的性別の移行を望む場合、日本では医学的診断である性同一性障害の診断を受けることによって女性ホルモン補充療法(HRT)や性別適合手術や美容医療等[19]及び家庭裁判所において氏名変更などが公に可能になる。併せて、2004年に施行された性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律による要件を満たす事が記載された厚生労働省の定める二人以上の医師の診断書並び本人の性別取り扱いに関する申し立て書と出生からの全ての戸籍謄本が裁判官により認定されれば戸籍を変更することが可能である。施行から18年半近くの2022年末までに性別変更をした性同一性障害当事者は総計1万1919人である[20]。備考としてトランスジェンダーと認知されている当事者で性別適合手術と戸籍変更を合わせて変更を出来た方は全体の2割弱である。理由は手術における断種問題を含める健康面の問題と手術費用を全額自己負担をする金銭面の問題がトランスジェンダー当事者にとって強い負担になる所以になっていた[21]。
日本では、性同一性障害特例法に対して第4号の要件については2023年10月25日に最高裁判所大法廷が憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権)に違反し無効であると判断された事に併せて、主に陰茎切除術等のトランス女性に必須であった「変更先の性別の性器に類似した外観を持つようにするための手術を必要とする要件」(本法3条1項第5号)については高裁にて検討されていないとしてここでは判断はせずに審理を高裁に差し戻した[22][23]。最高裁の判断を受け、その事後は家庭裁判所の手続きにおいて断種手術を伴う性別適合手術及び去勢手術等は不要になった[24][25]。