トランスフェクション(transfection)とは核酸を動物細胞内へ導入する過程を指す。通常、動物細胞はウイルスによる導入以外は核酸の細胞内導入は滅多に起こらないが、人為的にある程度自由に核酸を導入する事が可能になってきている。 トランスフェクションという用語の意味は変化し続けている[1]。トランスフェクションの本来の意味は、「形質転換による感染」、すなわち、細胞へ原核生物 (感染性ウイルスまたはバクテリオファージ)のDNA(またはRNA)導入によってもたらされる感染である。形質転換という用語は、動物細胞生物学において別の意味(培養によって長期間の増殖を可能にする遺伝的変化、または癌細胞に典型的な特性の獲得)を持つので、動物細胞では、トランスフェクションという用語は、DNAの導入によって引き起こされる細胞特性の変化という現在の意味を獲得した。 真核生物の細胞に外来DNAを導入するには様々な方法がある:物理的処理(エレクトロポレーション、細胞の圧迫、ナノ粒子法、磁気粒子法 )や化学物質や生物学的粒子(ウイルス)による方法など。 遺伝子の送達は、例えば、遺伝子治療および作物の遺伝子改変に必要なステップの1つである。 細菌から哺乳動物への様々なタイプの細胞および組織のために開発された多くの異なる遺伝子送達の方法が存在する。遺伝子の送達方法は、非ウイルス性およびウイルス性の2つのカテゴリーに分類することができる[2]。 非ウイルス性の方法には、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション
用語
トランスフェクションの方法
化学物質によるトランスフェクションは、シクロデキストリン [5]、ポリマー[6]、リポソーム及び(下に述べるように、化学修飾またはウイルス修飾されているもしくはされていない)ナノ粒子等、いくつかの種類に分類することができる。
最も安価な方法として、1973年にF. L. GrahamとA. J. van der Ebによって最初に発見されたリン酸カルシウムを使用する方法が挙げられる[7][8]。リン酸イオンを含むHEPES緩衝生理食塩水を、トランスフェクションしようとするDNAを含む塩化カルシウム溶液と混合すると、正電荷を帯びたカルシウムと負電荷を帯びたリン酸の微細な沈殿物が形成され、DNAはその沈殿粒子表面に結合する。次いで、沈殿物の懸濁液を遺伝子導入する細胞(通常は単層に増殖した細胞培養物)に添加する。プロセス完全には理解されていないが、細胞は沈殿物の一部をDNAと共に内部に取り込む。このプロセスは、癌遺伝子を同定するために好んで用いられてきた[9]。
高度に分岐した有機化合物、いわゆるデンドリマーにDNAを結合し、細胞内に取り込ませる方法がある。
別の方法として、DEAE
トランスフェクションの他の方法にはヌクレオフェクションが挙げられる。ヌクレオフェクションはTHP-1細胞株のトランスフェクションに対して非常に効率的であり、成熟マクロファージに分化[21]とヒートショックできる、生存可能な細胞株を作製する。 DNAは、ウイルスをキャリアとして細胞に導入することも可能である。この技術はウイルス形質導入と言われている。アデノウイルスは、遺伝子を多種多様なヒト細胞に導入できるベクターで導入率が高いため、有用なウイルスとしてウイルス法によく使用される。レンチウイルスも、有糸分裂していない段階の細胞に形質導入する能力があるので、ベクターとして有用である。 安定トランスフェクションと一過性トランスフェクションでは、細胞に対する長期的な影響が異なる。安定トランスフェクションでは、細胞は導入されたDNAを継続的に発現し娘細胞に受け渡すが、一過性トランスフェクションでは、細胞は導入されたDNAを短時間発現し娘細胞に受け渡さない。トランスフェクションの用途によっては、導入された遺伝物質が一時的に発現すれば十分である。通常トランスフェクションプロセスにより導入されたDNAは核のゲノムに組み込まれないため、外来DNAは、有糸分裂によって希釈されるか分解される。エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)由来核抗原1(EBNA1)またはSV40 Large-T抗原を発現する細胞株は、ウイルスEBV(293E)またはSV40(293T)複製起点を含むプラスミドのエピソーム増幅を可能にし、希釈の速度を大幅に低下させる。導入された遺伝子を実際に細胞及びその娘細胞のゲノムに残したい場合は、安定トランスフェクションが実施なければならない。そのために、特定の毒素に対する耐性など細胞に選択可能な利点を与える、マーカー遺伝子が同時に導入される。トランスフェクトされた細胞のいくつか(ごく少数)は、偶然に外来遺伝物質をゲノムに組み込んでいる。 その後、毒素を細胞培養に添加すると、ゲノムにマーカー遺伝子が組み込まれた少数の細胞のみが増殖 RNAを細胞にトランスフェクトして、コードされたタンパク質を一時的に発現したり、RNAの分解速度を調べることも可能である。 RNAトランスフェクションは、分裂しない初代細胞でよく使用される。siRNAをトランスフェクトして、RNAサイレンシング(すなわち、標的遺伝子からのRNAおよびタンパク質の消去)を行うことも可能である。siRNAのトランスフェクトは、特定タンパク質(例えば、エンドセリン-1[22])の遺伝子ノックダウンの研究に使用され、遺伝子治療の実現に向けて応用が進んでいる。RNAサイレンシングの限界として、細胞に対するトランスフェクションの毒性と、他の遺伝子/タンパク質が発現してしまう潜在的な「オフターゲット」効果がある。
ウイルス法
安定及び一過性トランスフェクション
G418、ネオマイシン耐性遺伝子の生産物により中和
ピューロマイシン
フレオマイシンD1
ハイグロマイシンB
ブラストサイジンS
RNAトランスフェクション
関連項目
遺伝子ターゲティング
形質転換
形質導入
ベクター
引用文献^ "Transfection
^ ⇒“Advances in Gene Delivery Systems”. Pharm Med 25 (5): 293?306. (2011). doi:10.2165/11594020-000000000-00000
^ “Delivery of non-viral gene carriers from sphere-templated fibrin scaffolds for sustained transgene expression”. Biomaterials 28 (31): 4705?16. (November 2007). doi:10.1016/j.biomaterials.2007.07.026