トランスジャパンアルプスレース
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トランスジャパンアルプスレース
開催地
富山県岐阜県長野県静岡県
開催時期8月(隔年)
種類トレイルランニング
距離415km
(累積標高差 約27,000m)
創立2002年
公式サイトwww.tjar.jp
プロジェクト:スポーツテンプレート

トランスジャパンアルプスレース(Trans Japan Alps Race、略称:TJAR)は、トランスジャパンアルプスレース実行委員会が主催するトレイルランニングウルトラマラソン大会、アドベンチャーレースである。2002年に第一回を開催して以降、2年に一度の開催となっている。
大会要項
コンセプト

本大会はトレイルランニングの大会と捉えられがちだが、実際はランニングよりも登山の要素を重視しており、参加選手には可能な限りサポート・エイドを受けない自己完結した登山が求められている。大会主催者は2022年大会要項で大会のコンセプトを次のように述べている[1]。大会創始者「岩瀬幹生」が夢みた3つのアルプスを繋いで日本横断。これを仲間と競ってみたい。そのスタイルは多くの助け(サポート・エイド)を受けてのチャレンジではなく自らの力で走破する事を目指しています。限りなく自己完結したスタイル。山岳、気象、装備、体調管理面の知識、経験など非常に高いレベルを求めます。トレイルランニングをイメージする人も多いですが考え方のベースはランニングではなく登山そのものです。なんらかの事故、トラブルが起きても自己対応となります。まずは余裕を持って山で生活、行動できること。この資質を見極めるため参加要件として厳しい条件をつけました。趣旨を理解したうえでのチャレンジをお待ちしております。
コースコースで最難所の北アルプス剱岳から別山の下りコースで最高所の南アルプスの標高3,120 mの赤石岳

日本海側の富山湾から日本アルプス北アルプス中央アルプス南アルプスを縦断して太平洋側の駿河湾までの約415キロメートルを、8日間以内に、交通機関を一切使わずに自分の足で走るか歩いて走破する競技である[1]

全行程は距離415km、累積標高差26,662m[2]、平均傾斜6.4%であり、国際的なトレイルレースのもっとも過酷な部類のCategory ALに相当し[3]、時には選手が極度の疲労から幻覚や幻聴の中で競技を行うなど、大会の過酷さが度々メディアで特筆されている[4]。海外で最も過酷なウルトラマラソン・トレイルレースのひとつといわれる[5]ウェスタンステイツ・エンデュランスラン(160kmを24時間以内、登りで5500m)と比べてもその2.6倍の距離を走るという過酷さである。コースは平均的なハイカーのペースで約33日かかる距離で[注 1]、参加者はこのコースを約5日から8日で走破する。

スタート地点とゴール地点は海抜0メートル、最高所は南アルプスの赤石岳標高3,120メートル)[6]。2022年大会では必ず通過しなければならないチェックポイントが30か所あり、そのうち5か所は規定日時までに到着できなかった時点でリタイアとなる関門である[1]。チェックポイント間のコース設定は選手の任意であるが、通常は山岳地帯は各アルプスの一般登山道を通り、平地では県道国道などの一般道路を通る。最初の山岳区間にあるチェックポイントの剱岳へ至る早月尾根は日本で有数の標高差がある登山道である。剱岳から前剱岳への下りは、本コースでの最難所の岩場となっている。南アルプスに入山する直前のチェックポイント【市野瀬】に限っては食糧や装備品等のデポが可能で、宅配便サイズ120以内の段ボールに事前に収めた食料や装備品などを補給・交換したり、通過済み区間の地図や破損した靴などの不要となった装備品を返送することができる[1]

2022年大会での30か所のチェックポイントとそのうち5か所の関門の到着規定時間を記す。2022年大会は8月7日0時にスタートし、以下に【括弧】で表示した上高地に同月9日8時、市野瀬に同月11日12時、三伏峠に同月12日17時、井川オートキャンプ場に同月14日4時、ゴールの大浜海岸に同月14日24時までに到着しなかった場合にはリタイアとなった[1]早月川河口(スタート) - 馬場島 - 剱岳 - 立山 (大汝山) - 五色ヶ原 - 薬師岳 - 太郎平小屋 - 黒部五郎小舎 - 双六小屋 - 槍ヶ岳山荘 - 【上高地】 - 奈川渡ダム - 境峠 - 薮原駅 - 旧木曽駒高原スキー場 - 木曽駒ケ岳 - 空木岳 - 駒ケ根高原 - 【市野瀬】 - 仙丈ヶ岳 - 塩見岳 - 【三伏峠】 - 荒川岳 (前岳) - 赤石岳 - 聖岳 - 茶臼小屋 - 【井川オートキャンプ場】 - 井川ダム - 富士見峠 - 静岡駅 - 【大浜海岸】(ゴール)[1]
ルール

選手が可能な限り自己完結で山岳地帯を走破することを重視しつつ、安全性や自然環境保護にも配慮する必要があるため、大会主催者は選手が厳守すべき様々なルールを設定している。自己完結を重視する観点から、山小屋・避難小屋・旅館温泉施設・商店・民家等での宿泊や仮眠は禁止で、山岳区間においてはキャンプ指定地でテントツェルト泊を行う事が定められている。ただし緊急時ビバークはキャンプ指定地以外の屋外でも可能で、や動物による生命の危機時のみはあくまでも一時避難として山小屋や避難小屋の利用が許可されている。また2020年大会からは山小屋での水以外の飲食物の購入と食事サービスの利用が禁止されているため、選手は山岳区間での食料を全て自分で背負っていかなければならないが、市街地では飲食店での食事やコンビニエンスストアスーパーマーケットでの食糧調達や温泉施設での入浴が許可されている。選手は山小屋でのキャンプ受付や水の購入(山小屋利用は5時から18時に限定)や、市街地での食事や買い物や入浴が済んだ後は速やかに屋外に退出しなければならない。さらにサポーターとの飲食物や装備品の受け渡しやサポーターによるマッサージ禁止、医療スタッフによる手当て禁止(手当てを受けたら自己対応不能としてリタイア)などが定められている[1]

選手と他者への安全性の観点からは、3,000m級の日本アルプスで3泊までのビバークに耐えうる必携装備品の常時携帯(2022年大会は防寒具GPS端末など28項目)、剱岳・立山・槍ヶ岳の登山道の一部区間での走行禁止、夜間とトンネル進入時の後方赤色点滅灯の使用などが定められている[1]

自然環境保護の観点からは、登山道のショートカットとゴミ捨ての禁止、屋外での用便時の携帯トイレの使用とストック使用時の石突への脱落防止措置済みのストップキャップの装着などが定められている[1]

大会主催者は、選手がチェックポイントを通過しなかったり関門の規定時間に間に合わなかった場合に加えて、ルール違反が確認された場合や、健康状態の悪化(コース保持不可能、転倒多数、判断能力低下、低体温症など)から競技続行不可能と判断した場合には、選手を強制リタイア(失格)処分にする権限を持つ。各山岳区間には、過去大会の完走者や大会参加に応募しながら抽選から漏れた人から選抜された複数名のスイーパーが配置され、最後尾の選手などの健康状態を監視する[1]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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