トランジ(フランス語:Transi)は、中世ヨーロッパの貴族や枢機卿などの墓標に用いられた、朽ちる過程の遺体の像やレリーフである。
12世紀から16世紀のフランス語ではtransiは死者について使う名詞であり、その動詞形のtransirは「死にゆく」「通り過ぎる」という意味で用いられた[1]。元々はラテン語の動詞transireに由来する。
中世からルネサンス期にかけてのヨーロッパで盛んに作られ、その多くは死後時間の経った死骸の姿で、体には穴があき、蛆やカエルなどが張りついていることが多い。これらはメメント・モリ(死を想え)と呼ばれる教えにもとづいて、見た者に浮世のはかなさを説くものとなっている[2]
トランジには個人の墓碑以外に、「世のための見世物」となるモニュメント的な墓碑もある。高僧の墓碑では、傲慢の戒めや魂の救済のプロセスなど多数の警句やメッセージが込められ、普通の横臥像(ジザン)や跪拝像と組み合わせた多層式墓碑が作られた[1]。
トランジを作った人々は聖俗各界の要人や富裕層であり、生前の遺言によって死後に作られた。トランジの流行は14世紀の後半から16世紀までであり、ルネサンスの開花とともに消滅した。
注釈^ a b 小池寿子『死を見つめる美術史』ポーラ文化研究所 1999年、ISBN 4938547473 pp.56-72.
^ 猟奇博物館へようこそ(加賀野井秀一 白水社)77頁
外部リンク
⇒身体をめぐる断章 その17
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更新日時:2017年10月12日(木)14:07
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