トラベラー_(TRPG)
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『トラベラー』(Traveller)は、GDW(ゲームデザイナーズ・ワークショップ)より1977年に発売されたSFロールプレイングゲーム。デザイナーはマーク・W・ミラー1984年安田均の翻訳による日本語版が日本語で出版された初の本格的テーブルトークRPG(TRPG)としてホビージャパンから発売され、追加ルールなどのサプリメントと関連ゲームも多数翻訳された。日本語版のボックス・アートは加藤直之がイラストを担当した。

ホビージャパン版はその後絶版となったが、2003年より株式会社雷鳴が再度翻訳し販売している。雷鳴版は、オリジナル版に準じたコンポーネントを踏襲しているが、イラストは加藤直之が全て描き起こしている。

最初の制作元だったGDW社のボードシミュレーションゲーム『インペリウム(Imperium)』など、同社のSFゲームに共通して設定されていた架空の宇宙史に基づくSF/スペースオペラRPGであり、プレイヤー・キャラクターは広大な恒星間国家〈帝国〉とその周辺宙域を、ジャンプ・ドライブと呼ばれる超光速推進機関を搭載した宇宙船で旅することが出来る。

これまでに「トラベラー・ダイジェスト」などの専門誌を始め複数の出版社から数多くの追加設定資料、シナリオ集や関連小説が発行されており、この緻密なSF世界設定はガープスの世界設定サプリメントの1つであるGURPS Travellerとしても展開されている。
概要

57世紀という遥か遠未来、広大な星間国家である〈帝国〉が主な舞台となる。プレイヤーキャラクターは広大な宇宙を旅する一個人となって、様々な事件に出会い、それに対応し、解決して生き抜くことが目的となる。

SFが背景設定となっているが、プレイヤーキャラクターはいわゆるスペースオペラ的な超人ではなく、常識的な肉体的能力と知性しか持たない。後述するキャラクター作成ルールの特性から、年若いキャラクターがゲーム内で充分に活躍することは難しく、30代以降のキャラクターが一般的である。また、経済ルールが充実していることもあり「退職金を頭金にローンで中古の宇宙船を買って、それを使って交易をして金儲けをしつつ借金を返済する」といった地に足が着いた地味な展開が、本作における典型的なプレイスタイルの1つとなっている。ただし、スペースオペラ的な主人公を意識した『ヤングトラベラー』と言う追加ルールも存在する。

一方で、宇宙船や異星生物などSFらしいルールも整えられている。背景となる宇宙や惑星も、UWPと呼ばれるコードで環境や社会体制が表され、ダイスを振ってランダムに作成するシステムを備えていたため、プレイのための背景宇宙を「自分で作成する」ことができ、さらに、その後発表されたサプリメントを使用すれば、宇宙船やロボットなども自作することも可能である。

トラベラーには、現在ではClassic Traveller(CT)とも呼ばれる初版のルールシステム以来、MegaTraveller(MT)、Traveller:The New Era(TNE)、Marc Miller's Traveller(T4)、GURPS Traveller(GT)など、いくつかの版があり、複数のルールシステム・世界設定が存在する。以下のルール解説は初版に基づいたものである。
基本ルール

行為判定は6面サイコロ2個を使用し、その出目の合計がその行為毎に定められた特定の数値より大きいとその行為は成功となる。

スキル(技能)システムを初めて導入したRPGで、戦闘、技術、学問などSF冒険生活に関する様々な分野の技能が用意され、主に行為判定の際に修正ボーナス(ルールでは‘DM±n’と表現される)として使用される。ホビージャパン版では経験値やレベルアップ等の成長システムが外されているため、最初のキャラクター作成が重要視される。
キャラクター

作成時にキャラクターが経歴を重ねて成長して行くのがこのゲームの大きな特徴の1つである。18歳の若者として社会に出るところから始まり、経歴部門(後述)から希望のものを選び(あるいは徴用され)、与えられた任務の成否や生存などの判定を一期(4年)単位で行い、成功すれば各部門で積んだ経験を表すものとして技能や能力値が向上していく。しかし、ある程度の年齢を過ぎると老化現象の判定も加わり、加齢による肉体の衰えが始まり、更に知力の低下も起きる。それらの結果の積み重ねがキャラクターの作成となり、それ自体が一種のゲームのようになっている。

キャラクターの基本的能力を数値で表した能力値として、筋力、敏捷力、耐久力、知力、教育度、社会身分度[1]の6種が設定される。これをUPPと呼び、作成の最初にサイコロ2個の出目の合計で決定され、経歴を重ねるうちに判定結果などによる増減で1から15の範囲に変化する。並べて記述する際に全て一桁の数で表せるように16進数で表記されるので、あり得る数値は1からFということになる。

キャラクターが選択または徴兵されて入り、技能や能力を得ていく経歴部門には、主に下記のようなものがある。
海軍
このゲームでは宇宙軍を指す(惑星上の海を担当する意味での海軍は区別のため「水軍」と呼ばれる)。主に宇宙船に関する技能を得られる。
海兵隊
惑星への降下、制圧を行う軍。海軍の宇宙船内の治安維持や、乗り込んできた敵の排除も行う(ゾダーンの超能力部隊がテレポートで乗り込んでくる事がある)。主に個人戦闘に関する技能を得られる。無重力状態でも自由に動ける為の「0G戦闘」技能は海兵隊が一番得意。
陸軍
惑星上の陸戦を担当する軍。宇宙船を持たない未開惑星でもない限り空軍や水軍も包括する。主に個人戦闘に関する技能を得られる。また宇宙船以外の乗り物なら詳しい。
偵察局
未開星系の測量や探査、各星系政府への連絡や内偵を任務とする、帝国の公的機関。平時でも危険な職業だが、多彩な技能を習得でき数も他の経歴より多く習得できる可能性が高い。もちろんゲームバランス上、器用貧乏で専門職には劣る様になっている。任務で使用していた宇宙船(偵察艦)を退職時に手に入れる可能性がある。ただし偵察用のため扱い易くはあるが、恒星間宇宙船としては最弱の部類である。
商人
恒星間貿易に携わる個人・企業全般を指す。事故や遭難、宇宙海賊等の問題もあり、上記の4経歴より良いとは言え安全とは言えない。交渉系の技能を得られるが、宇宙船操縦はもちろん、海賊対策のために戦闘技能も得られない訳ではない。偵察局と並んで宇宙船を手に入れやすい経歴でもある。商船のため偵察艦よりは大きいが、半分が荷物室であり戦闘力は大して変わらない。
その他
それ以外の職業。後に出版されたサプリメント「帝国市民」では細分化され、貴族、学者、医者、官僚、宇宙海賊、宇宙鉱夫、空軍、水軍、未開人などが追加された。

これらの部門で定められた判定を繰り返していく中で、

冒険の旅に出るのに充分と思われるまでキャラクターの技能や能力が向上した(覚えられる技能は自由には選べないが)。

これ以上歳を取ったら老化により冒険に出るには厳しいと思われるようになった。

継続判定に失敗して心ならずもその部門を去ることになった。

上記のいずれかの時点で冒険が始まる。つまり、このゲームではキャラクターが社会に出てある程度の経験を積んで行く中で訪れた転機の後の“第二の人生”をプレイすることになる。逆に一般的なRPGの様に冒険中に能力が上がることは基本的に無い。

なお「帝国市民」で追加された極一部の職業を除き、一期おきに少なくとも1/36、高いと1/4以上の確率で死亡するため、ゲーム開始前に死亡と言うことも珍しくない(オプションだが死亡判定が出た場合、一期ではなく半期で部門を去る途中退役ルールもある。この場合、PCは死亡しない代わり、その期に修得出来る恩典は得られず退役する。当然、年齢も半期の2年分が加齢される)。また一期おきに任務を決められるため、同じ海軍所属だとしても最前線と基地勤務では生存率が違い、習得できる技能や習得率も違う。

経歴の項にあるように偵察局や商人出身者は宇宙船を手に入れることがある。操縦技能の有無は係わらないため、別のキャラクターを雇わないと宇宙船が動かないと言う事態もある。どちらの宇宙船にせよ最弱の部類のため、宇宙船の戦闘で解決をすることはほとんど無い。もっとも正規軍以外でT型哨戒艦以上の戦闘用艦艇を持てるのは傭兵部隊や財閥の私兵部隊であり、ゲームマスターが特に設定しない限りPCが持つことはない。基本的にRPGと言うより、ウォー・シミュレーションゲームとして遊ぶためのデータである。


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