トモグラフィー
[Wikipedia|▼Menu]

トモグラフィー(: tomography)[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][注釈 1][注釈 2]は、物理探査医療診断等で用いられる逆解析技術の一つ。日本語訳は、断層映像法または断層影像法である。コンピュータを用いて処理することで、画像を構成する技術はコンピュータ断層撮影と呼ばれる。

その多くは、対象領域を取り囲む形で、走査線(線源と検出器)を配置し、内部の物性音速比抵抗、音響インピーダンス密度など)の分布を調べる技術である。評価したい対象物によって、X線CT地震波トモグラフィー海洋音響トモグラフィーなどと呼ばれている。Figure1: CT撮影(人体)の様子[注釈 3]
概要

本記事では、トモグラフ像の撮影と、復元について、原理と装置構成を説明する。トモグラフ像の撮影方法には、主に、平行ビーム光学系を用いる方法(図2参照)と、扇形ビーム(ファンビーム)光学系(図3参照)と円錐ビーム(コーンビーム)を用いる方法がある[注釈 4][注釈 5]
画像再構成アルゴリズム

CT画像再構成法は解析的再構成法、代数的再構成法、統計的再構成法に大別され、逆投影法は解析的再構成法に分類され、逐次近似画像再構成法は代数的再構成法と統計的再構成法に分類される[1][13]。これまでCT画像再構成法の主流はフィルタ補正逆投影法(filtered back projection:FBP法)であったが、近年では画像ノイズ低減効果やアーチファクト低減効果が期待される逐次近似画像再構成法(iterative reconstruction:IR法)が増えつつある[1][13]
逆投影法(Back projection)
逆投影法では1回の計算で解(再構成像)が求まる[13]
逐次近似画像再構成法(Iterative reconstruction)
逐次近似法は最初に初期画像を仮定してこの画像から計算で作成した投影(順投影)と実測投影との整合性を反復計算によって高めていく手法で、反復計算により計算時間を多く必要とするものの、コンピュータの高速化に伴って統計雑音の性質、装置の分解能、被写体の滑らかさなどの事前情報などを式中に組み込める柔軟性や近年発展の著しい圧縮センシング理論を取り入れることにより徐々に増えつつある[13][14]
平行ビーム光学系を用いたトモグラフ像の撮影と復元

トモグラフィーの数学的な基礎はラドン変換と、ラドン逆変換である[1]。ラドン変換は、トモグラフィーの基本原理であるばかりでなく、例えば、ハフ変換等にも応用される[15][16][17]。応用範囲の広い数学的手法であるが、ここでは、トモグラフィーのモデル化という観点に重きをおいて説明する。Figure2: 平行ビーム照射光学系によるトモグラフ像撮影原理;
被写体と、透過光との角度を、 θ {\displaystyle \theta } とするような、平行ビーム照射光学系を考える。この光学系による投影像は、ある種の線積分の結果と見做すことが出来る。前記の線積分は、被写体をビームが貫通した際に生じた減衰量(attenuation)を表している。図中の符号はそれぞれ、以下の通り (1)被写体, (2)平行ビーム光源, (3)スクリーン, (4)透過光, (5)平行ビーム光源、スクリーンの軌道, (6)平行ビーム光源、スクリーンの軌道の中心, (7)透影像(一次元画像; p ( s , θ ) {\displaystyle p(s,\theta )} をそれぞれあらわす。

関数 μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} のラドン変換は、以下の式で与えられる。 p ( s , θ ) = − ∫ − ∞ ∞ μ ( s cos ⁡ θ − t sin ⁡ θ , s sin ⁡ θ + t cos ⁡ θ ) d t {\displaystyle p(s,\theta )=-{\int }_{-\infty }^{\infty }\mu (s\cos \theta -t\sin \theta ,s\sin \theta +t\cos \theta )\,dt}

即ち、「 μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} のラドン変換の ( θ , s ) {\displaystyle (\theta ,s)} での値 p ( s , θ ) {\displaystyle p(s,\theta )} 」は、「関数 μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} の直線 l [ θ , s ] ( t ) {\displaystyle {l}_{[\theta ,s]}(t)} に沿う線積分の値」である。但し、 l [ θ , s ] ( t ) {\displaystyle {l}_{[\theta ,s]}(t)} は、 l [ θ , s ] ( t ) = [ s cos ⁡ θ − t sin ⁡ θ s sin ⁡ θ + t cos ⁡ θ ] {\displaystyle {l}_{[\theta ,s]}(t)={\begin{bmatrix}s\cos \theta -t\sin \theta \\s\sin \theta +t\cos \theta \\\end{bmatrix}}}

で定まる直線(tについての直線)である。ここで、上式をtについての直線とみなす際には、 θ {\displaystyle \theta } ,sは、固定されているものと考えるが、その際、 θ {\displaystyle \theta } は前記の直線の傾き角を表し、sは、前記の曲線と原点との間の距離を表すことに注意されたい。

本節では、座標(x,y)における被写体の吸収係数を μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} とおく。そのうえで、
吸収係数の位置依存性 μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} にラドン変換を施すことで、測定結果、即ち透過光によって得られた像 p ( s , θ ) {\displaystyle p(s,\theta )} が得られる(モデル化される)こと

測定結果にラドン逆変換を施すことで、 μ ( x , y ) {\displaystyle \mu (x,y)} が復元されること。

を説明する。
平行ビーム光学系によるトモグラフ像撮影のモデル化

被写体を光線が透過した際に、透過光がどれだけ減衰するかを考えることで、上記のラドン変換が導出される。以下、その導出を行う。

ラドン変換を考える際、光線は幾何光学的な光を考える。即ち、光線は、極めて直進性がよく、吸収はされるが、回折散乱をしないと考え、さらに反射もしないと考えてよいとする。例えばX線を、人体に透過させる場合には、このように考えて差しさわりない。幾何光学において、光線は直線で表される。光線の軌跡が、x-y断面上の直線 l {\displaystyle l} で表される場合について考える。

吸光が、ランベルト・ベールの法則[1]に従うとすると、前記光線の入射強度を I 0 {\displaystyle {I}_{0}} 、透過後の強度を I {\displaystyle I} 表記したとき、 I = I 0 exp ⁡ ( − ∫ μ ( x , y ) d l ) = I 0 exp ⁡ ( − ∫ − ∞ ∞ μ ( l ( t ) ) 。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:94 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef