トキソプラズマ症
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トキソプラズマ症

T. gondii
概要
診療科感染症内科学, 産婦人科学
分類および外部参照情報
ICD-10B58
ICD-9-CM130
DiseasesDB13208
MedlinePlus000637
eMedicinemed/2294
Patient UKトキソプラズマ症
MeSHD014123
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トキソプラズマ症(トキソプラズマしょう、Toxoplasmosis)とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)による原虫感染症である。世界中で見られる感染症で、世界人口の3分の1が感染していると推測されているが[1]有病率には地域で大きな差がある。健康な成人の場合には、感染しても無徴候に留まるか、せいぜい数週間のあいだ軽い風邪のような症状が出る程度である。しかし臓器移植後やエイズ患者など、免疫抑制状態にある場合には重症化して死に至ることもあり、重篤な日和見感染症といえる。重症化した場合には、脳炎や神経系疾患をおこしたり、心臓肝臓眼球などに悪影響をおよぼす。また、妊婦が初感染すると胎児が先天性トキソプラズマ症を発症する場合がある。予防するためのワクチンはない。

日本では家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されている(対象はめん羊、山羊、豚、いのしし)。なお、日本獣医学会の提言で法令上の名称が「トキソプラズマ病」から「トキソプラズマ症」に変更された[2]
病原体

トキソプラズマはアピコンプレックス門に属する単細胞生物である。以下の3つの形態をとる。
栄養型
栄養型は急増虫体(タキゾイト)と呼ばれており、細胞内に寄生して無性生殖により急激に増殖する。消毒液や胃酸などに対する抵抗性を持たないため、これを摂食しても感染は起きにくい。しかし眼や粘膜外傷から感染することがある。
シスト
筋肉組織中に厚く丈夫な壁に包まれた球形のシストを作る。シストには数千におよぶ緩増虫体(ブラディゾイト)が含まれており、無性生殖によりゆっくりと増殖している。シストは室温でも数日、4 ℃なら数ヶ月生存しており、-12 ℃までの低温にも耐えるが、熱処理(56 ℃15分)や冷凍処理(-20 ℃24時間)で不活化できる。
オーシスト
終宿主であるネコ科の動物に感染すると、有性生殖を行ってオーシストが形成される。オーシストは便中に排出され、環境中で数日間かけて成熟し、数ヶ月以上生存している。消毒液に対する抵抗性が高いが、シスト同様の処理で不活化できる。
感染経路

トキソプラズマは人間を含む幅広い温血動物に寄生するが、終宿主ネコ科の動物である。人間への感染経路としては、シストを含んだ食肉やオーシストを含むネコの糞便に由来する経口感染が主である。オーシストは耐久性があるので、直接糞便に接触しなくても、土壌を経由して野菜を汚染する場合がある。その他に妊婦から胎児への経胎盤感染がある。
食肉

おそらくほぼ全ての哺乳類鳥類がトキソプラズマに感染する可能性があり、したがって食肉は種類によらず感染源になりうる。とくに羊肉豚肉鹿肉など、高頻度にシストが見付かるものもある。感染動物由来の食肉を生食したり加熱が不十分だったりすると、感染の原因となる[3]。食肉そのものだけでなく、包丁まな板などが汚染されて、それが他の食材や手を汚染することもある。
ネコ

例えばネコの糞便中のオーシストが付着した物質を食餌としてネズミが食べることで感染し、ネズミの体内に形成されたシストはネコがネズミに噛み付くことで取り込まれる、という具合に生活環が成立していると考えられる。人間への感染経路としては、飼い猫のトイレ掃除、園芸、砂場遊びなどで手に付いたオーシストが口に入ることが考えられる。
胎盤

感染は通常腸管で起こるが、マクロファージに侵入し血流に乗って全身へ広がることができる。このとき宿主が妊娠していると、胎盤を経由して胎児に伝染する場合がある。伝染のリスクは感染時期によって異なり、妊娠初期の感染では低率で、しだいに増加し妊娠末期ではリスクは70%に達する。ただし、胎児の症状は感染時期が早いほど重篤になる。
その他

臓器移植輸血によって感染した例が知られている。また実験中に誤って注射したり、飛沫が眼や鼻に入って感染した例もある。
症状
免疫系が正常な場合

初感染でも、およそ8割の場合は発熱もなくリンパ節が腫れる程度でほとんど気付かれない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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