デング熱
デング熱で見られる典型的な発疹
概要
診療科感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10A90
デング熱
別称dengue fever
概要
診療科感染症
症状発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛・嘔吐・下痢など
原因デングウイルス
合併症デング出血熱、心筋炎、脳炎、ギラン・バレー症候群など
治療輸液による全身状態の改善など
予後デング熱全体の致死率は低いが、デング出血熱の致死率は高い。
分類および外部参照情報
Patient UKデング熱
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デング熱(デングねつ、まれにデンゲ熱とも、英: dengue fever [?d??gi -], breakbone fever)とは、デングウイルス(w:Dengue virus)が原因の感染症であり、熱帯病の一つである。蚊の吸血活動を通じて、ウイルスが人から人へ移り、高熱に達することで知られる一過性の熱性疾患である。症状には、発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。
治療方法は対症療法が主体で、急性デング熱にはいま起きている症状を軽減するための支持療法 (supportive therapy, supportive care)が用いられ、軽度または中等度であれば、経口もしくは点滴による水分補給、より重度の場合は、点滴静脈注射や輸血といった治療が用いられる。ただ稀ではあるが、生命を脅かすデング出血熱に発展し、出血、血小板の減少、または血漿(けっしょう)漏出を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して出血性ショックを引き起こすこともある。
主な媒介生物はヤブカ属の中でも特にネッタイシマカ(Aedes aegypti)やヒトスジシマカ(Aedes albopictus)などの蚊によって媒介される。このウイルスには4つの異なる型があり、ある型に感染すると、通常その型に対する終生免疫を獲得するが、他の型に対する免疫は短期間にとどまる。また、異なる型に続けて感染すると、重度の合併症のリスクが高まる。
デング熱が文献に現れるようになったのは1779年からであり、ウイルスが原因であることや伝染経路について解明されたのは、20世紀初頭である。第二次世界大戦以降、デング熱は世界的に広まり、1960年代からその発生数は急激に増加している。現在では、110か国以上で毎年およそ5000万人から1億人が感染する風土病となっている。うち70%がアジアで、インドは全世界の34%を占める世界一の感染者数を持つ。また「実際の感染規模は政府公表の数百倍を超える」とする専門家もいる[1]。
主な原因として、急激な都市化や地球温暖化、また国際化による人の往来の増加による感染拡大が関与していると考えられている。対策としては、蚊の駆除の他に、ワクチンの研究やウイルスに直接働きかける薬物治療の研究が進められている。
臨床像デング熱の症状を示す略図
デングウイルスに感染しても8割は無症状であり、それ以外も軽度の症状、例えば合併症を伴わない発熱症状が現れるだけがほとんどである[2][3][4]。しかし、5%の感染者では重症にまで発展し、さらにごく一部では生命を脅かすこともある[2][4]。潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は3日から14日であるが、ほとんどの場合は4日から7日である[5]。このため、デング熱の流行地域から戻ってきた旅行者が、帰宅してから14日以上経った後で、発熱やその他の症状が出始めた場合、デング熱である可能性は極めて低い[6]。子供の場合、風邪や胃腸炎(嘔吐や下痢)とよく似た症状がたびたび現れ[7]、症状は一般的に大人よりも軽いが[8]、その一方で重度の合併症に陥りやすい[6][8]。
臨床経過デング熱の臨床経過[9]
デング熱の症状の特徴は、突然の発熱、頭痛(一般的に目の奥の痛み)、筋肉や関節の痛み、発疹である。英語で別名「break-bone fever」と呼ばれているが、デング熱に伴う筋肉や関節の痛みに由来している[2][10]。感染には、発熱、重症、回復の3段階がある[11]。
発熱期には、40℃以上の高熱が出ることがよくあり、全身の痛みや頭痛を伴う。通常、このような症状が2日から7日続く[9][10]。この段階で発疹の症状が現れるのは、50 - 80%である[10][12]。1日目または2日目に紅斑が現れるか、さらに4日から7日疾患段階が経過した後に、はしかに似た発疹が現れる[12][13]。またこの時点で、点状出血(皮膚を押したときに消えないまま残る小さな赤色の点で、毛細血管の破綻が原因)がいくつか現れ[9]、口や鼻の粘膜から軽度の出血がある場合もある[6][10]。基本的に、発熱自体は1日か2日の間で急に熱が上がって下がるという二相性を示すが、どのような頻度でこの二相性発熱が生じるかはまちまちである[13][14]。
中には重症に発展する人もいる。重症に至る場合、それは高熱から回復した後であり、通常1日から2日続く[9]。この段階で、毛細血管の透過性が増し、水分の漏れが増加することで、胸腔や腹腔に多量の水分が溜まる場合がある。これにより、血液量減少が生じたり、循環性ショックが生じたりする[9]。またこの段階では、臓器障害や大量出血が、一般的には消化器で起きることがある[6][9]。デングショック症候群と呼ばれる循環性ショックやデング出血熱と呼ばれる出血が発症する割合は、全症例の5%未満であるが[6]、以前に他の血清型のデングウイルスに感染したことがある場合(つまり、2回目の感染の場合)は、そのリスクが増える[6][15]。
引き続き、血流に漏れた水分が再び吸収されることによって症状は回復していく[9]。これは通常2、3日かかる[6]。回復は目覚しいが、激しい痒みが発生したり、徐脈(心拍が遅くなること)がよくある[6][9]。