デュロキセチン
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デュロキセチン

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

(S)-(+)-N-Methyl-3-(1-naphthyloxy)-3-(2-thienyl)propylamine

臨床データ
ライセンスEMA:リンク、US FDA:リンク
胎児危険度分類

US: C




法的規制

US: ?-only

投与経路経口投与
薬物動態データ
生物学的利用能? 50% (32% to 80%)
血漿タンパク結合? 95%
代謝肝代謝
CYP1A2
CYP2D6
半減期13.46時間
(40mg, β相, 1日目)
排泄尿中: 72%, 糞中: 18.5%
識別
CAS番号
116539-59-4 (free base)
136434-34-9 (HCl)
ATCコードN06AX21 (WHO)
PubChemCID: 60835
DrugBankAPRD00060
ChemSpider54822
KEGGD07880
化学的データ
化学式C18H19NOS
分子量297.41456 g/mol
SMILES

CNCC[C@@H](C1=CC=CS1)OC2=CC=CC3=CC=CC=C32

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デュロキセチン(Duloxetine)は、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれる抗うつ薬の一つである。日本では2010年からサインバルタの商品名で知られる。薬機法における劇薬である。

日本での適応は、うつ病・うつ状態に加え、糖尿病性神経障害・神経因性疼痛・線維筋痛症・慢性腰痛症に伴う疼痛である。機能性ディスペプシアの症状に効果があるとする医師も多い[1][2]
開発

フルオキセチン(プロザック)の開発にも携わった、イーライリリーによって1980年代後半に合成され、1988年に開発がスタートした。

しかし、1996年に第III相試験に入らないことを決定したイーライリリー社は開発から退き、日本での塩野義製薬の単独開発が始まり、その成果を見たイーライリリー社は1999年に再開発を始め、2001年にFDAに申請、2004年4月に承認された。2012年現在、日本をはじめ95カ国で承認されている。

日本では2010年4月にデュロキセチン塩酸塩(Duloxetine HCl)として、イーライリリーおよび塩野義製薬からサインバルタの商品名で薬価収載されている。
適応デュロキセチン20mg(東和薬品後発薬

日本での適応は、うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛である。

日本では2012年2月に「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」が適応された。2015年5月、「線維筋痛症に伴う疼痛」について適応された[3]。2016年12月に「変形性関節症」について、適応が追加された[4]

また、アメリカ合衆国では、糖尿病性ニューロパチー線維筋痛症全般性不安障害に適応があり、ヨーロッパでは、腹圧性尿失禁、糖尿病性ニューロパチー、全般性不安障害に適応がある。
薬理

結合特性[5][6]レセプター/トランスポーターKi (nM)
セロトニン0.7~0.8
ノルエピネフリン7.5
ドーパミン240
5-HT2A504
5-HT2C916
5-HT6419

デュロキセチンは既存のSNRI(ミルナシプランベンラファキシン)と同様にセロトニン(5-HT)およびノルアドレナリン(NA)の再取り込みを阻害し、シナプス間隙、細胞外の5-HTとNAの濃度を上昇させる。SNRIでも既存のSNRIと比べ、5-HTおよびNA再取り込み阻害作用が強く、ドーパミン(DA)再取り込み阻害作用はほとんどない。特徴としても、各神経物質受容体に対しての親和性が低く、抗コリン作用やα1拮抗作用による心毒性が少ないとされる。これらと5-HT, NA再取り込み作用の機序から、副作用を抑えた三環系抗うつ薬と見ることができる。

また、前頭前皮質におけるDAの濃度が上昇する。これは、前頭前皮質にDAトランスポーターの分布が少なく、そのためNAトランスポーターを介して前シナプス終末部に取り込まれる。しかし、デュロキセチンはNAトランスポーターを阻害するため、DAの再取り込みも阻害し、細胞外の遊離DAの濃度が高まるとされる。

抗うつ薬中断症候群も他のSSRIやSNRIに比べて軽いという[7]
併存疾患に対しての効果.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2015年10月)

うつ病患者には、大うつ病エピソード以外にも付随する症状を伴っている場合が多い。特に、慢性疼痛や血管運動症状などがあり、それに付随する形でうつ病患者では非ステロイド性抗炎症薬の使用量が多くなる傾向にある。

線維筋痛症などの慢性疼痛や血管運動症状のように5-HTとNA再取り込み阻害作用が適度なバランスである必要がある疾患に対し、

NA/5-HT レート試料:ヒト トランスポーター
 5-HTNADANA/5-HT ratio
デュロキセチン0.8±0.017.5±0.3240±239.4
ベンラファキシン82±32483±437647±79330.3
ミルナシプラン123±11200±2>100001.6

上記の表のように、デュロキセチンは5-HT再取り込み阻害とNA再取り込み阻害が約10対1と理想的なバランスであり、米国や欧州では慢性疼痛を含めて様々な症状に応用がされている。
使用上の注意

本剤の意識消失発作の発症頻度は0.27%と低い。日本における発売後8ヵ月間で多剤投与中の追加投与で2例の意識消失発作を起こしたという報告がある[8]。1例目は手足を動かしていたことから痙攣発作である可能性が高く、2例目も発作時の脈拍、血圧が正常であったために痙攣発作である可能性が高い[8]。また、2例ともにデュロキセチンの投与の中止によって、発作は起こらなくなった。

一般的に抗うつ薬は発作の閾値を下げうるので[9]、抗うつ薬の多剤投与を行っている患者には特に注意を要す。


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