デトックス
[Wikipedia|▼Menu]
デトックスフットバス(足湯)。液体の錆びた色は、鉄電極の電気分解によるもので、排泄された毒素ではない[1][2]。水中に足がなくても水の色は変わる[1][2]デトックスウォーター(ハーブ、レモン、生姜)

デトックス(英語: detox, detoxification、「解毒」の短縮形)とは、代替医療の一種で、不特定の「毒素」(時間とともに体内に蓄積され、個人の健康に短期的にも長期的にも望ましくない影響を与えると支持者が主張する物質)を体から取り除くことを目的とする治療法である[3][4][2][5]。デトックスに関連する活動には、ダイエット、断食、特定の食品のみの摂取または回避、大腸洗浄(英語版)、キレーション療法、運動やサウナによる発汗などがある[4][2]。しかし、人間の体には、もともと不要な物質をろ過して排出する機能が備わっており、実証されていない デトックスを行う必要はない[6][7][8]

代替医療としてのデトックス(英語版)は、体内にたまった毒素老廃物を排出することで健康になると説明し、健康食品や医療機器を販売している[4][5][2]。デトックスと似た言葉に「クレンジング(洗う、浄化する)」があり、デトックスやクレンジングは、民間療法としてだけではなく、自費診療クリニックで高額な対価をとって提供されている[9][10]。デトックスの概念は瀉血浣腸、断食として数千年前から存在していたが[11]、その医学的根拠のなさから、科学者や健康団体から批判を受けている[12]。「毒素」は通常定義されておらず、患者に毒素が蓄積されたという証拠もほとんどない[13][4][5]。病気を患っている場合、デトックスの有効性を信じることで、本来の効果的な医療を受けるのが遅れたり、治癒の機会を逃すことがある[14]補完医療の名誉教授であるEdzard Ernstは、「デトックス」という言葉は、従来の依存症治療に対する医療用語を「起業家や詐欺師藪医者偽医療を売るために乗っ取った」言葉であると説明している[15]。イギリスの団体Sense about Scienceは、デトックス食や製品を「時間とお金の無駄」と評し[8]、イギリス栄養士会(英語版)はこの考えを「ナンセンス」「マーケティング神話」と呼んでいる[16]。 イギリスの国民保健サービス(NHS)は「デトックスと呼ばれる言葉自体が怪しいものであり、それを改善すると称している方法は全く無意味」と国民に警告している[17]。日本では、健康食品などに「デトックス」「血液サラサラ(血液を浄化する)」「好転反応下痢や吹き出物などを解毒作用の現われだとする)」といった医薬品的な効果効能表示(店頭や説明会における口頭での説明も含む)を行うことは、薬機法(旧薬事法)で禁止されており、健康増進法景品表示法違反になることもある[18][19][20]

医療としてのdetoxification(解毒)は、生理学的に生物の体内に溜まった有害な毒物を排出させることであり[3][21]アルコール依存症薬物依存症における薬物排出を目的とする[4][22][23][24]。また、腎機能が落ちた人の透析や(限られたケースだが)重金属の排出に限定したキレーション療法などの手法で解毒を行うことができる[4]

この記事では、主に代替医療としてのデトックスを説明する。
医療
代謝解毒

人体にはもともと老廃物や有毒物質を除去するシステムが組み込まれており、血液や腸を浄化するための器官がある[25]。人間の体内に取り込まれた有害物質は、主に肝臓で分解、腎臓でろ過され、便や尿から排出される[26][27][28]。肝臓は有害な物質を分解して毒性の少ない物質に変え、腎臓は血液の中の有害物質を濾過して尿として排出する[28]。汗腺は、有毒物質を排出するための器官ではなく、1日に人間が取り込む何らかの有害物質のうち、汗から排出されるのは約0.02%である[6]

インペリアル・カレッジ・ロンドンの教授で毒物学者であるアラン・ブービスは、「体内の解毒システムは、驚くほど洗練され、多機能である。私たちが進化してきた自然環境は敵対的であるため、そうでなければならなかった。人々が実証されていない デトックスダイエットで、これらのシステムを著しく壊す危険を冒す覚悟があるのは驚くべきことで、むしろ害になる可能性が高い」と述べている[8]
キレーション療法デフェラシロクスは、サラセミア患者の輸血による鉄過剰症の治療に用いられる。詳細は「キレーション療法」を参照

医学には「解毒」という治療法が存在する[17]。医療行為としてのキレーション療法は、キレート剤を投与して重金属を体外に排出する医療行為であり、急性重金属中毒などの症状を治療する手段として使用されている[29][30]ジメルカプロールという薬物は重金属中毒の解毒(キレート剤)に使用し、プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)は農薬の解毒に使用し、サリンなどの神経毒にも効果がある[17]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:334 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef