デッカードブラスター
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デッカードブラスター(レプリカ)
飛騨高山 留之助商店「日本で販売されたレプリカ」の節参照)製作のもの

デッカードブラスター(Deckard Blaster)とは、映画ブレードランナー』、および続編である『ブレードランナー 2049』に登場する架空の銃の名称である。登場作品からブレードランナーブラスター(Blade Runner Blaster)とも呼称される。

「デッカードブラスター」、もしくは「ブレードランナーブラスター」の呼称は公式のものではなく、これ以外の名称で呼ばれることもある。
概要

1982年に公開されたアメリカのSF映画、『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督)の劇中において、ハリソン・フォード演じる主人公、リック・デッカードが使用した架空の銃器で[注釈 1]、劇中では特にデッカードのみが所持・使用しているわけではないが[注釈 2]、「デッカードブラスター」の呼称で知られている。

映画の制作に当たっては、美術デザインを担当したシド・ミードが一連の作業の一環としてデザインを行ったが、ミードのものは不採用となり、これを受けて改めて小道具主任のテリー・E・ルイス(Terry E.Lewis)[2]と美術スタッフによって実銃改造のプロップが製作され[3][4][5]、現在「デッカードブラスター」と通称されているものが誕生した。これらのプロップは映画製作後行方不明となり、長年に渡って「SF映画に登場する武器」として著名であることに反して詳細が不明な存在であったが、1992年2006年に現物が発見され、従来は不明であった細部の詳細が判明した。

架空の存在でありながら著名な存在であり、登場作品である『ブレードランナー』はSF映画を始めその後の無数の創作作品に多大な影響を与えたため、この“デッカードブラスター”も多数の作品にオマージュされ、大きな影響を与えた。造形物としての人気も高く、ガレージキットの黎明期から様々なモデラー、およびメーカーがレプリカを製作・販売している。銃本体だけでなく、専用に製作されたホルスターも数多くのレプリカが製作された。

2017年に公開された続編である『ブレードランナー 2049』にも同形のものが登場する。
(後述「#『ブレードランナー 2049』におけるブラスター」を参照)
名称

この「映画『ブレードランナー』に登場し、主人公のデッカード他が使っている銃」については、公式な命名がなされていない。アメリカを始めとした海外のファンの間では当初は“Deckard Gun”もしくは“Deckard Pistol”と呼称されており、いつ、どのような経緯で“(Deckard)Blaster”と呼ばれるようになったかは判然としていない。原作(実質的には原案)であるフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の作中にも“ブラスター(Blaster)”の名称は登場していない[注釈 3]

日本では、1982年の初公開時の映画パンフレットにおいて、
ブレードランナーの強力な唯一の武器?ブラスター
ブラスター(未来の火器)は、レイガン(光線銃)、ニュートロンガン(中性子銃)、ソニック・ブラスター(超音波銃)、など多種多様だが、唯一レプリカントに対抗できるブレードランナーの愛用銃はスーパーテクノロジー時代の最新型レーザーガン[注釈 4]だ。

として「ブラスター」の名称で解説されたため、この銃は「ブラスター」と通称されるようになった。その後、1980年代半ばに発売されたガレージキットにおいて「デッカードブラスター」の名称が用いられており、1986年に発行された模型雑誌でも製作記事ではその名称で紹介されている[6]。以後、日本ではガレージキットの製品名に影響される形で“デッカードブラスター”の呼称が定着していった。

他にファンが付けた呼称には「M2019 ブラスター(M2019 Blaster)」(作品の設定年代が西暦2019年であることから)、「M2019 LAPDブラスター(M2019 LAPD Blaster)」「LAPD 2019 ブラスター(LAPD 2019 Blaster)」(“LAPD”とは「ロサンゼルス市警察」(Los Angeles Police Department)の略号で、作品の舞台がロサンゼルスとされていることから)等がある。

「Pflager Katsumata Series-D Blaster(PKD-Blaster)」という呼称も存在し、“Pflager Katsumata”とは製造メーカー名もしくは設計・開発者の名である、と解説されていることがあるが、この名称は作品のファンによる二次創作で、原作である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の著者、フィリップ・K・ディック(Philip Kindred Dick)の名の頭文字にかけたオマージュである。“Katsumata”の名は、東映動画(現・東映アニメーション)で数多くの作品の演出を手掛けた勝間田具治(かつまた ともはる)に因むとされる[7]

日本ではあまり用いられていないが、“2019 Detective Special”という呼称もある。これは直接的にはコルト社が1927年に最初のモデルを発売したリボルバー拳銃、コルト・ディテクティブスペシャルに因むもので、刑事警察官や公的機関の捜査官、あるいは私立探偵が好んで用いる、コートブレザーといった上着の下に隠して携行することが容易な、小型で銃身の短いリボルバー(“スナブノーズ(SNUB NOSE)[注釈 5]”と呼ばれる)である。
それら“ディテクティブスペシャル”はハードボイルド小説の中で主役の探偵や刑事のキャラクターを表現するための道具として重要な位置を与えられて登場することが多く、これらの点から、『ブレードランナー』もそのハードボイルドの作風、そして主人公のデッカードはそれらの作品における探偵や刑事としての性格を与えられたキャラクターであることから、これになぞらえて呼称されたものである[注釈 6]

「M2019」や「LAPD Blaster」、「PKD-Blaster」「2019 Detective Special」といった呼称については、個人製作のレプリカ品を発表する際、特にガレージキットを販売する際に用いられている例が多い。これは、無認可で「ブレードランナー」や「リック・デッカード」等の作品固有の名称を使用した場合、著作権侵害の問題が発生することを避けるためである。
(後述「#レプリカ」の項目参照)
デザイン

『ブレードランナー』の制作にあたり、当初は“ブラックホール・ガン(Black hole gun)”という名称の架空銃が構想されており[8]後述)、作品全般の美術設定を担当したシド・ミードが作業の一環としてそれに従ったデザインを行っていた。

だが、実際の製作にあたっては、ミードのデザインのうち、リドリー・スコット監督から「近未来的にすぎる」とされたいくつかのものが不採用となっており[9]プロップの製作が準備されていた[注釈 7]ミード版のデザインのものも、この際に同様に不採用になったと推定される。ミードはより現実の銃に近いデザインを新たに描き起こしたが、これも採用されなかった。

ミードのデザインが不採用になったため、アシスタントアートディレクターであるスティーブン・デーン(Stephen Dane)[10]が実在の銃を基にしたデザイン画を製作したが、これも採用されなかった[11][12]。結果、小道具主任のテリー・ルイスが急遽担当することになり、撮影スケジュールに間に合わせるために急ぎ製作された。

製作にあたってリドリー・スコットより出された要望として、作品の根幹である「近未来を舞台としたハードボイルド」の作風に則った、しかし極端に未来的ではない拳銃、という点があった[注釈 8]。この要望に従いつつ、まず参考にされたのは映画『マッドマックス』で主人公マックスが用いる並列銃身のソードオフ・ショットガン[注釈 9]である[13]

デザインのイメージを固めるため、ルイスとアソシエイトプロデューサーのアイバー・パウエル(Ivor Powell)[14]は当時最先端とされる銃の資料を集めてデザインの参考とし、更にR・スコットと共にロサンゼルスの銃砲店(英語版)を廻った。


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