ディープ・インパクト_(探査機)
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ディープ・インパクト (Deep Impact)
テンペル第1彗星に弾丸を発射するディープ・インパクトの想像図
所属アメリカ航空宇宙局
ジェット推進研究所
公式ページ ⇒公式サイト
国際標識番号2005-001A
カタログ番号28517
状態運用終了
目的テンペル第1彗星の観測
観測対象テンペル第1彗星
打上げ場所ケープカナベラル空軍基地
打上げ機デルタIIロケット
打上げ日時2005年1月12日
13時47分8秒(EST
最接近日2005年7月4日
通信途絶日2013年8月8日以降
運用終了日2013年9月20日
質量650kg(本体)
370kg(インパクター)
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衝突の映像

ディープ・インパクト (Deep Impact)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA)のディスカバリー計画の一環として行われていた彗星探査計画、または探査機の名前である。

ディープ・インパクトは、2005年1月12日の打ち上げ以降、173日をかけて約4億3100万キロメートル (km)を旅したのち、テンペル第1彗星に向けて、重さ約370キログラム (kg)の衝突体(インパクター)を発射した。衝突体は、米東部夏時間の7月4日午前1時52分に彗星に衝突した[1]。衝突時のスピードは時速約3万7,000キロメートル (km/h)だった。

2007年以降は、名称をエポキシに変えて運用が続けられ、2010年11月4日にはハートレー第2彗星に接近して観測を行った。その後も延長ミッションが続けられていたが、通信が途絶えて復旧できなくなったため、2013年9月20日に運用が終了したことが発表された[2]
概要

この計画は、テンペル第1彗星に重さ370kgアルミニウムからなる合金製のインパクターを撃ち込み、その衝突によってできるクレーターや飛び散る塵から彗星の内部構造を調査するというものである。彗星の内部構造の解明、またその観測データからの太陽系惑星誕生のメカニズムの解明が期待されている。

観測は、探査機に搭載されたカメラ赤外線スペクトロメータで行われた。また、ハッブル宇宙望遠鏡スピッツァー宇宙望遠鏡、その他数々の地上の望遠鏡からも可視光線赤外線などによる観測が行われた。

インパクターには、人工知能が与えられ、搭載されているカメラで目標であるの画像を撮影、自ら解析し、もっとも効果的な観測が可能だと思われる地点(太陽光が当たる“昼”の部分で出来るだけ平坦な箇所)に衝突するように姿勢制御を行うように設計された。

NASAは、「彗星に名前を届けよう」というキャンペーンを企画した。これは、世界中から有志の名前を募集し、集まった名前をコンパクトディスクに書き込んで彗星に届けるものである。名前を書き込まれたCDは、インパクターに搭載されて彗星に衝突した。
エポキシ

当初の目標を達成したディープ・インパクトは、2007年より名称をエポキシ (EPOXI)に変更して活動を続けた。この計画は探査機に搭載された望遠鏡を用いて太陽系外惑星の観測を行う Epoch (Extrasolar Planet Observation and Characterization)と、新しい彗星の接近観測を行う DIXI (Deep Impact eXtended Investigation)の2つのミッションから構成されている。ディープ・インパクトを再利用したことで、計画は4,000万ドルの低予算で実現された[3]

2013年8月8日に衛星との最後の通信を行った後、交信ができなくなった。当時はアイソン彗星の観測を行うなど、週に1回の断続的な運用が行われていたが、衛星の姿勢が回転し、制御不能で通信ができない状態となった。NASAは復旧の努力を続けたが、2013年9月20日に公式に運用終了を発表した[4][5]
日程

2005年1月12日午後1時47分(米国東部時間): ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。打ち上げにはデルタIIロケットが使用された。

2005年7月3日: テンペル第1彗星に88万キロメートル (0.88 Gm)の地点まで接近し、衝突体(インパクター)を発射した。

2005年7月4日: 衝突体は彗星に着弾し、本機は爆発によって生じた塵を観測した(衝突体が銅とアルミニウムの合金製なのは、分析の際に彗星由来の物質と区別するため)。衝突体は衝突直前まで彗星の核を撮影した。なお、この日はアメリカ独立記念日だった。

2005年8月21日: 軌道修正に成功、2008年にボーティン彗星 (85P Boethin)とのフライバイなど新たなミッションが決定していた ⇒[1]ものの、その後ボーティン彗星を見失い、ミッションを再検討していた。

2007年12月13日: 名称をエポキシに変え、2008年1月末、太陽系に近い恒星の軌道を周回する惑星系を観測することになった。

2007年12月31日: 1回目の地球フライバイを実施。

2008年12月29日: 2回目の地球フライバイを実施。

2010年6月27日: 最後の地球フライバイを実施。

2010年11月4日: ハートレー第2彗星 (Hartley 2)に約700キロメートルまで最接近してその中心核を観測。

2012年10月4日: 地球近傍小惑星(163249)2002 GTを探査するために飛行速度を秒速2メートル (m/s)加速したと発表[6]

2013年1月17日: 地球に接近中のアイソン彗星を撮影[7]

2013年8月8日: この日の交信を最後に衛星とのコンタクトを喪失。

2013年9月20日: NASAが復旧を断念して、運用終了したことを発表。

2020年1月4日: 可能なら小惑星163249 (2002 GT)に最接近する予定だった[8]

関連した話題

2011年2月、テンペル第1彗星にNASAの別の探査機スターダストが訪れ、ディープ・インパクトによる衝突実験の痕跡や彗星の変化を調べた[9]。スターダストはディープ・インパクトより古参(1999年打ち上げ)の彗星探査機で、2006年に宇宙塵サンプルリターン任務を達成した後に、延長ミッションとしてテンペル第1彗星に訪れたものである[9]

ロシア占星術師マリーナ・バイは、ディープ・インパクトによる彗星の破壊で、宇宙の自然のバランスが破壊されたとして、2005年7月にNASAに対して精神的損害への賠償として約90億ルーブル(約350億円)を求める訴訟をモスクワで起こした ⇒[2]
脚注と参照^ NHKスペシャル ディープ インパクト ?生命の起源に迫る彗星(すいせい)探査? - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス
^“NASA's Deep Space Comet Hunter Mission Comes to an End”. NASA. (2013年9月20日). ⇒http://www.nasa.gov/press/2013/september/nasas-deep-space-comet-hunter-mission-comes-to-an-end/#.UkA12kCqM7M 2013年9月23日閲覧。


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