ディラック定数
[Wikipedia|▼Menu]

換算プランク定数
ディラック定数
reduced Planck constant
Dirac's constant
記号ħ
値 1.054   571   817... × 10 − 34 J ⋅ s {\displaystyle 1.054\ 571\ 817...\times 10^{-34}{\mbox{J}}\cdot {\mbox{s}}}
相対標準不確かさゼロ
語源マックス・プランク
ポール・ディラック
テンプレートを表示

換算プランク定数(かんさんプランクていすう、: reduced Planck constant)またはディラック定数(ディラックていすう、: Dirac's constant)ħ は、プランク定数 h を 2π で割った値を持つ定数である。
数値

2019年5月20日に施行された新しいSIの定義では、プランク定数を定義値として定めることによって質量キログラム)を定義している。このためディラック定数も定義値となり、不確かさのないものとなった。

その値は ℏ ≡ h 2 π = 1.054   571   817... × 10 − 34   J ⋅ s = 6.582   119   569... × 10 − 16   eV ⋅ s {\displaystyle {\begin{aligned}\hbar \equiv {\frac {h}{2\pi }}&=1.054\ 571\ 817...\times 10^{-34}\ {\mbox{J}}\cdot {\mbox{s}}\\&=6.582\ 119\ 569...\times 10^{-16}\ {\mbox{eV}}\cdot {\mbox{s}}\end{aligned}}}

である[1][2]。ħ は「エイチ・バー」と読む。
物理的意義

物理的には、プランク定数が周波数 ν とエネルギー E の間の比例定数を意味するのに対して、換算プランク定数は角周波数 ω とエネルギー E の間の比例定数を意味する。すなわち、 E = h ν = h 2 π ⋅ 2 π ν = ℏ ω {\displaystyle E=h\nu ={\frac {h}{2\pi }}\cdot 2\pi \nu =\hbar \omega }

の関係が成り立っている。また、以下のように運動量 p と角波数 k の間の比例定数と見ることもできる。 p = h λ = h 2 π 2 π λ = ℏ k {\displaystyle p={\frac {h}{\lambda }}={\frac {h}{2\pi }}{\frac {2\pi }{\lambda }}=\hbar k}

ディラック定数は原子単位系における作用の単位である。
角運動量

電子軌道角運動量 L の大きさ |L。と z 成分 Lz は 。 L 。 = l ( l + 1 ) ℏ L z = m ℏ {\displaystyle {\begin{aligned}&|{\boldsymbol {L}}|={\sqrt {l(l+1)}}\hbar \\&L_{z}=m\hbar \end{aligned}}}

と表され[3]:138,334頁[4]、ディラック定数を基本単位としていることが分かる。ここで、n を主量子数とすると、l は l = 0, 1, 2, 3, ⋯, n − 1 までの値を取る方位量子数[3]:335頁[4][5]、m は m = 0, ±1, ±2, ⋯, ±l の (2l + 1) 個の値を取る磁気量子数で[3]:138頁[4][6]、軌道角運動量を極座標 (r, θ, φ) で表わした場合の部分が l、動径部分が m である[4]。また、電子スピン角運動量は ±.mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/2ħ で[7]量子力学の分野ではプランク単位系を用いることが多く、その場合の電子のスピンは ±1/2 と書き、この ±1/2 をスピン量子数と呼ぶ。

二原子分子回転運動を表す際、J を回転量子数とすると、回転の角運動量の大きさは √J(J + 1)ħ、回転運動のエネルギーは BJ(J + 1) と表され、回転定数 B の中に B = ħ2/2I とディラック定数が現れる。ここで、I は分子の重心まわりの主慣性モーメントの非零成分である[3]:51頁。
不確定性原理

量子力学によって記述されるような物理現象観測においては、不確定性原理によって位置不確かさ Δx と運動量の不確かさ Δp の積 Δx⋅Δp、あるいはエネルギーの不確かさ ΔE と時間の不確かさ Δt の積 ΔE⋅Δt は、ħ/2 より小さくなることはないとして Δ x ⋅ Δ p ≥ ℏ 2 Δ E ⋅ Δ t ≥ ℏ 2 {\displaystyle {\begin{aligned}&\Delta x\cdot \Delta p\geq {\frac {\hbar }{2}}\\&\Delta E\cdot \Delta t\geq {\frac {\hbar }{2}}\end{aligned}}}

と表される[3]:303頁[8]



記号

ディラック定数には H にバーを付した ? の小文字 ? が用いられることもあるが、Unicode には専用の文字 U+210F ℏ .mw-parser-output span.smallcaps{font-variant:small-caps}.mw-parser-output span.smallcaps-smaller{font-size:85%}planck constant over two pi が用意されている。またTeXでは \hbar コマンドが用いられる。

記号UnicodeJIS X 0213文字参照名称
ℏU+210F1-3-61ℏ
ℏPLANCK CONSTANT OVER TWO PI

脚注[脚注の使い方]
出典
^ CODATA Value
^ CODATA Value
^ a b c d e 物理小事典


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:25 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef