テーザー銃
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射出カートリッジを外したテーザー銃。2つの電極の間にアーク放電が発生している。警察用のX26 TASER(カートリッジ装填済み)

テーザー銃またはテイザー銃 (英語: Taser [?te?z?r]) は、アメリカアクソン(AXON社〈旧テーザー・インターナショナル〉が発売しているスタンガンである。TASERは同社のブランド[1]
概要

トリガーを引くと棘状の電極が生えた小さな投げ矢のような2つの射出体(プローブ)が発射され、標的となる人間の肌に突き刺さるようになっている。射出体の速度は秒速180フィート(55メートル毎秒)。有効射程は、警察官向け製品は35フィート(10.67メートル)であるが、法執行機関外向けの製品では15フィート(4.57メートル)に制限されている。射出体と本体の間は絶縁された細い線でつながっており、本体から射出体の電極に電流を流して標的の人間を制圧することができる。テーザー銃の効果は、射出体の当たった部位における局所的な激痛と筋肉麻痺に限られている[2][3]

標的が重傷を負ったり死亡したりした例があるため、非致死性兵器(non-lethal weapons)ではなく、低致死性兵器(less-lethal weapons)とされている。

2018年のアメリカ合衆国では、少なくとも49人が警察官にテーザー銃を撃たれた後に死亡している[4]

1993年、TASER社が最初に発売したエネルギー兵器[5]は警察用で、逃亡を図ろうとしたり、好戦的であったり、潜在的な脅威を持つ人物と対峙する際に、拳銃のような殺傷能力の高い武器に代わる対処法として提示されたものだった。2010年の"Police Use of Force, TASERs and Other Less-Lethal Weapons"(警察官の武器使用 テーザー銃とその他の低致死性兵器)という調査によれば、全世界で15,000人の法執行機関員や軍関係者が、テーザー銃を使用可能武器の一つとして使うことを認められている。一方で、少年犯罪に対する使用の是非や、拷問に悪用される危険性などについての論争が起きている。

2009年にアメリカ合衆国の Police Executive Research Forum が発表した報告によれば、21世紀に入ってからの統計で、テーザー銃を持つ警察官の負傷率が、一切テーザー銃を使用しない場合に比べ76パーセント低減した[6]。テーザー・インターナショナルとリック・スミスCEOは、ある「警察の調査」に基づいてテーザー銃が「2011年の間に75,000人の命を救った」と主張している[7][8]。より後の年代の学術的な研究でも、アメリカ合衆国内の警察官は、テーザー銃を使用することで肉弾戦術で戦うよりも低リスクで、トウガラシスプレーのような薬剤噴霧武器と同程度の低負傷率を実現できている、とされている。しかし一方で、警察がこの電撃武器と他の武器を併用した場合の負傷率は、警棒や噴霧武器を使用した場合より4、5倍高いともされている[9]
歴史

1969年、アメリカ航空宇宙局の研究者だったジャック・カヴァーがテーザー銃の開発を始めた[10]。1974年、カヴァーはこの電撃武器を完成させ、「トーマス・A・スウィフトの電磁ライフル」(Thomas A Swift Electronic Rifle)の頭文字を取り、TASERと命名した[11]。これは20世紀初頭の小説のタイトルに由来する。ストレイトマイヤ・シンジケートがヴィクター・アップルトンという作家名を用いて書いたTom Swift's electric rifleという小説の頭文字TSERから英語読みでTASERとしたもの[12]。主人公のトム・スウィフトは、カヴァーの少年時代のヒーローであった[13][14]

このテーザー・パブリック・ディフェンダーは射出体を発射するために火薬を使用していたため、1976年にアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)により火器に指定された[15][16]

元テーザー・インターナショナルCEOのパトリック・スミスは、テーザー銃に関連した訴訟の際、「高校時代の2人の知人が」「正気を失った、合法な銃を持つ男」によって射殺された事件が、テーザー銃開発の動機となったと証言している[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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