テンナンショウ属
キシダマムシグサ(神戸市六甲山・2008年5月)
分類
テンナンショウ属 (学名:Arisaema Mart.) は、サトイモ科に属する属の1つ。有毒なものがある。テンナンショウは「天南星」の意で、この類の球茎の漢方生薬名である。
この属の種は、湿潤な熱帯や温帯に見られ、東アジア、東南アジア、インド南西部、アメリカ合衆国東部、メキシコ、アフリカ東部などに分布する。世界で約180種があり、日本では53種8亜種3変種を認める[1]。分布域が広い種によっては、葉や仏炎苞などの変異の幅が著しく、詳細な分類は難しいものもある。また、種によっては、古い図鑑と新しい図鑑では、学名・和名が変わっていることがある。
英語では Cobra lily や Jack-in-the-Pulpit の別名がある。 多年草で球根(球茎・塊茎)を持つ。葉は複葉で1-2枚つき、葉柄の根元は葉鞘となって筒状に重なり、一見茎のように見えるため偽茎と呼ばれる。小葉は種によって3枚から20数枚が鳥趾状や掌状につく。偽茎の上に花序柄を延ばし、仏炎苞を付ける。仏炎苞が葉よりも高く伸びるか低いかは種による。 日本に分布する種のうち、マイヅルテンナンショウを除き雌雄異株であるが、栄養状態によって性転換することが知られている。これを中井猛之進 (1936) は雌雄偽異株と名付けた。春に咲く花にはサトイモ科の特徴である肉穂花序と仏炎苞を持つが、仏炎苞の形状が特徴的で様々なものがあり、森の木陰に咲く紫色の仏炎苞は不気味な印象を与えるものもある。この仏炎苞は肉穂花序をぐるりと一周してラッパ状になるものが多い。肉穂花序の上部は様々な形の花序付属体となり、花序付属体の下端はスカート状になって仏炎苞の内面との間に狭い隙間を形成する。花序の花がつく部分では仏炎苞との間に隙間があって、付属体の下部に上をふさがれた部屋を形成している。この花には、花序付属体が発する臭いによってキノコバエ科やノミバエ科
特徴
初夏に仏炎苞は枯れて、雌株では夏から晩秋にかけて朱色や赤の熟した果実が目立つようになる。果実はトウモロコシのように軸の周りに集合してつく液果で赤く、種子を0?数個ずつ持つ。種子散布は鳥類に摂食されるか、その場に倒伏することにより行われる。 球茎の細胞はシュウ酸カルシウムの針状結晶などをもち有毒で、そのまま食べると口の中が痛くなって腫れあがるが、デンプンなどの栄養素を多く含むため、アイヌや伊豆諸島、ヒマラヤ東部の照葉樹林帯ではシュウ酸カルシウムの刺激を避けながら食用とする工夫がなされてきた。例えばアイヌの食文化ではコウライテンナンショウ(アイヌ語名:ラウラウ)の球茎の上部の毒の多い黄色の部分を取り除き、蒸したり、炉の灰の中で蒸し焼きにしたりして刺激を弱めて食用にし[2]、伊豆諸島の八丈島では古くはシマテンナンショウの球茎をゆでて餅のようにつき、団子にしたものをなるべく噛まずに丸飲みして、刺激を避けて食べたと伝えられている。 飛騨地方では「へんべのだいはち」と呼び、その毒性を利用して便所の除虫などに使われた。 目立つ花色を持つムサシアブミやユキモチソウは山野草として栽培されることもある。
利用
代表的な種
日本に分布する種
ツルギテンナンショウ Arisaema abei - 四国に分布する。仏炎苞は緑色で細い。絶滅危惧IB類(EN)。国内希少野生動植物種に指定。
ヒガンマムシグサ Arisaema aequinoctiale - 関東以西の本州と四国に分布。花序は葉よりも高く直立。仏炎苞の開口部がやや広い。
ホソバテンナンショウ Arisaema angustatum - 関東地方、中部地方、近畿地方、岡山県に分布。
オドリコテンナンショウ Arisaema aprile - 伊豆半島から神奈川県に分布。仏炎苞は緑色。5枚の小葉をもつ。絶滅危惧IA類(CR)。国内希少野生動植物種・特定第一種国内希少野生動植物種に指定。
ホロテンナンショウ Arisaema cucullatum - 奈良県、三重県、和歌山県に分布。絶滅危惧IA類(CR)。国内希少野生動植物種・特定第一種国内希少野生動植物種に指定。
エヒメテンナンショウ
ヤマザトマムシグサ Arisaema galeiforme - 関東地方北部から中部地方に分布。
ハチジョウテンナンショウ Arisaema hatizyoense - 八丈島に分布。
アマミテンナンショウ Arisaema heterocephalum - 奄美大島、徳之島に分布。絶滅危惧IB類(EN)。
オオアマミテンナンショウ Arisaema heterocephalum subsp. majus - 徳之島に分布。絶滅危惧IA類(CR)。