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テンソル(英語: tensor, ドイツ語: Tensor)とは、線形的な量または線形的な幾何概念を一般化したもので、基底を選べば、多次元の配列として表現できるようなものである。しかし、テンソル自身は、特定の座標系によらないで定まる対象である。個々のテンソルについて、対応する量を記述するのに必要な配列の添字の組の数は、そのテンソルの階数とよばれる。
例えば、質量や温度などのスカラー量は階数0のテンソルだと理解される。同様にして力や運動量などのベクトル的な量は階数1のテンソルであり、力や加速度ベクトルの間の異方的な関係などをあらわす線型変換は階数2のテンソルで表される。
物理学や工学においてしばしば「テンソル」と呼ばれているものは、実際には位置や時刻を引数としテンソル量を返す関数である「テンソル場」であることに注意しなければならない。いずれにせよテンソル場の理解のためにはテンソルそのものの概念の理解が不可欠である。 テンソルの定義・表示と取り扱いには、いくつかの同等な方法がある。実際にそれらが同じことを指していることを納得するには、多少の慣れが必要である。 古典的なアプローチではテンソルは多次元の配列で、階数0のスカラーや階数1のベクトル、階数2の行列などの階数nへの一般化を与えているものと見なされる。テンソルの「成分」は配列の要素の値によって与えられることになる。この考えはテンソル場として一般化され、テンソルの成分として関数やその微分が取り扱われるようになる。 テンソルとよばれるためには配列は基準にしている座標系がかわるときには一定の変換を受けなければならない。この変換はベクトルの要素に対する関係を一般化したものであり、ベクトルの場合と同様に表している量が本質的には表示のための座標系の選択によらないものであることを示している。 物理学における通常のテンソルの定義の仕方は、特定の規則に従って成分が変換されるような対象という言い方を用いるもので、共変変換
いくつかのアプローチ
現代的な(成分を使わない)アプローチではテンソルはまず抽象的に多重線形性の概念にもとづく数学的対象として定義される。よく知られているような諸性質が線型写像としての(あるいはもっと一般的な部分についての)定義から導かれる。テンソルの操作規則は線形代数から多重線形代数への拡張の中で自然に現れる。
数学における普通のやり方では、ある種のベクトル空間を用いて、必要なときに基底を考えるまでは特に座標系を指定しないようにされる。例えば共変ベクトルは一次微分形式として説明できるし、あるいは反変ベクトル空間の双対空間の元として説明することもできる。
現代流の成分によらないベクトルの概念によって、成分表示にもとづく伝統的な(しかし、初学者にベクトルの概念がどんなものかを教えるには有効な)取り扱いが置き換えられるように、この取り扱いは成分にもとづく取り扱いをより高度な考え方によって置き換えることを目的としている。「テンソルはテンソル空間の元のことなのだ」という標語を掲げることもできるだろうが、高階のテンソルに対して幾何的な解釈をどう与えるかという難しさもあって、成分表示によらないアプローチが支配的になったというわけではない。
物理学者や技術者たちは(勝手に選べてしまうような)座標系に左右されない概念としてのベクトルやテンソルの重要性を認識した。同様に、数学者たちは座標表示で導くのがより簡単であるテンソルの関係もあることを見いだしている。 テンソルを多次元配列として定義するやり方では、内在的な幾何学的対象であることから期待されるべき性質である基底の取り方に依らないことが、定義から明らかでないという欠点がある。テンソルの変換法則が実際に基底の取り方に依らないことは証明できることではあるが、しばしばより内在的な定義が取り上げられる。その一つが、テンソルを多重線型写像として定義することである[1]。これによれば、(p, q)-型テンソル T は函数 T : V ∗ × ⋯ × V ∗ ⏟ p copies × V × ⋯ × V ⏟ q copies → R {\displaystyle T\colon \underbrace {V^{*}\times \dots \times V^{*}} _{p{\text{ copies}}}\times \underbrace {V\times \dots \times V} _{q{\text{ copies}}}\to \mathbb {R} } で、各引数に関して線型であるようなものとして定義される。ここで V は有限次元ベクトル空間で、V? はその双対ベクトルからなる双対空間である。 (p, q)-型の多重線型写像 T を V の基底 {ej} とその V? における標準的な双対基底 {εi} に対して施せば、 T j 1 … j q i 1 … i p ≡ T ( ε i 1 , … , ε i p , e j 1 , … , e j q ) {\displaystyle T_{j_{1}\dots j_{q}}^{i_{1}\dots i_{p}}\equiv T({\boldsymbol {\varepsilon }}^{i_{1}},\ldots ,{\boldsymbol {\varepsilon }}^{i_{p}},\mathbf {e} _{j_{1}},\ldots ,\mathbf {e} _{j_{q}})} によりその成分として (p + q)-次元配列が得られる。基底の取り方を変えれば異なる成分が得られるが、T は各引数に関して線型であるから、成分は多次元配列としてのテンソルの変換法則を満足する。したがって、T の成分の成す多次元配列はその意味において確かにテンソルを成していることが分かる。さらに言えば、そのような性質を持つ多次元配列は必ず多重線型写像 T の成分として実現できる。そのような事情により、多重線型写像をテンソルに基づく内在的対象を与えるものとして見ることができる。 テンソルを多重線型写像と見る立場では、ベクトル空間 V を V の双対空間上の線型汎函数全体の成す空間(つまり V の二重双対
数学的定義
多重線型写像としての取り扱い
テンソル積に基づく定義詳細は「テンソル空間」を参照
数学的応用に際しては、より抽象的やり方の方が有効なこともある。これは普遍性を通じて定義できるベクトル空間のテンソル積の元としてテンソルを定義することによってなされる。この文脈では、(p, q)-型テンソルはベクトル空間のテンソル積の元 T ∈ V ⊗ ⋯ ⊗ V ⏟ p copies ⊗ V ∗ ⊗ ⋯ ⊗ V ∗ ⏟ q copies {\displaystyle T\in \underbrace {V\otimes \dots \otimes V} _{p{\text{ copies}}}\otimes \underbrace {V^{*}\otimes \dots \otimes V^{*}} _{q{\text{ copies}}}}
として定義される[2]。
一般に、vi が V の基底を成し、wj が W の基底を成すとき、テンソル積空間 V ? W は自然な基底 {vi ? wj} を持つ。テンソル T の成分は、V の基底 {ei} とその双対基底 {εj} から得られる基底に関するテンソルの係数 T = T j 1 … j q i 1 … i p e i 1 ⊗ ⋯ ⊗ e i p ⊗ ε j 1 ⊗ ⋯ ⊗ ε j q {\displaystyle T=T_{j_{1}\dots j_{q}}^{i_{1}\dots i_{p}}\;e_{i_{1}}\otimes \cdots \otimes e_{i_{p}}\otimes \varepsilon ^{j_{1}}\otimes \cdots \otimes \varepsilon ^{j_{q}}}