テトラサイクリン系
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この項目では、総称としてのテトラサイクリン系抗生物質について説明しています。同名の抗生物質については「テトラサイクリン」をご覧ください。

テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリンけいこうせいぶっしつ、: tetracycline antibiotics, tetracycline class, tetracyclines、: TC系, TC類, TCs, TETs)は、一群の広域スペクトラム性抗生物質(英語版)の総称である。テトラサイクリンという名称は、四つの (tetra-) 炭化水素からなる有機環 (cycl-) の誘導体 (-ine) という意味である。TC系の抗菌スペクトラムは、全ての抗生物質で最も広い部類に属している。抗菌作用のない化学修飾されたCMTs (Chemically Modified Tetracyclines) の研究も進んでいる。
歴史

1945年
最初に見出されたテトラサイクリン系抗生物質であるクロルテトラサイクリンは、アメリカン・サイアナミッド(英語版)[注 1]のベンジャミン・M・ダガーによって放線菌の一種Streptomyces aureofaciens[1]から発見された。

1955年[注 2]
テトラサイクリンは、ファイザーに在籍していたLloyd Conoverによって合成された。その後、様々な誘導体化学合成されている。

1966年
ミノサイクリンは、アメリカのレダリー研究所(英語版)[注 3]によって天然テトラサイクリンから半合成された[2]

現在
抗菌スペクトラムの若干の違いなどもあり、日本で主に内服薬として使用されているのはドキシサイクリンとミノサイクリンの2剤である。
種類
天然テトラサイクリン
短時間作用型(生体内半減期:6 - 8時間)


クロルテトラサイクリン(オーレオマイシン)

テトラサイクリン(アクロマイシン)

オキシテトラサイクリン(テラマイシン)

中時間作用型(生体内半減期:8 - 12時間)


デメクロサイクリン(レダマイシン)

半合成テトラサイクリン
中時間作用型(生体内半減期:8 - 12時間)


リメサイクリン
(英語版):水溶性テトラサイクリンベース

長時間作用型(生体内半減期:12時間以上)


メタサイクリン(英語版)

ドキシサイクリン(ビブラマイシン):脂溶性


6-デオキシテトラサイクリン(英語版)

ミノサイクリン(ミノマイシン):脂溶性


グリシルサイクリン(英語版):1990年代初期にテトラサイクリンを改変することによって最初に合成された。

チゲサイクリン(英語版)(タイガシル):日本での発売は2012年[3]、適応は、本剤に感受性の大腸菌シトロバクター属クレブシエラ属エンテロバクター属アシネトバクター属のうち他の抗菌薬に耐性を示した菌株に限る[4]。マウス実験で重度アルコール依存症への有効性が示されている[5][6]


オマダサイクリン(英語版)

セラサイクリン(英語版):?瘡(にきび)に対する第III相臨床試験が行われた[7]

メクロサイクリン(英語版):完全な水不溶性

ロリテトラサイクリン(英語版)

非抗菌性テトラサイクリン


化学修飾テトラサイクリン(英語版):主に抗がん剤[8][9]

CMT-302, CMT-303, CMT-306, CMT-308, CMT-316

インサイクリニド(英語版):他のTC系と同様にマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP) 阻害作用を有するが、抗菌作用は無い。第II相の臨床試験で酒?への有効性が認められず開発中止となった。?瘡(にきび)治療薬として研究されている[10]


医療用途詳細は「ドキシサイクリン#適応」、「ミノサイクリン#適応」、「テトラサイクリン#効果」、「オキシテトラサイクリン#効能・効果」、および「クロルテトラサイクリン」を参照
薬剤耐性詳細は「薬剤耐性」を参照

薬剤耐性の出現によってかなり有用性が低下している[11]。しかし、他の薬剤にない優れた特性を持つため、現在でも一部の状況では処方される。
禁忌

TC系は骨や歯牙形成への有害作用が示唆されているため、妊婦や授乳中の母親、8歳未満の小児への投与は可能な限り避けられるべきである[12]。しかし、ラットの試験で骨・歯・腎臓に黄色の紫外線蛍光が認められているドキシサイクリンは[13]、8歳未満が使用した場合でも歯牙黄染やエナメル質形成不全、色の違いなどが全く認められなかったとの報告もある[14]

なお、組織学(顕微解剖学)、発生学など医学生物学系のいくつかの研究分野では、この色素沈着(青灰色)作用をうまく使って、生きた研究対象動物の骨組織、歯牙組織などの硬組織を着色することがある。着色するに至らない微量の沈着でも、紫外線の照射によって蛍光を発するため、蛍光顕微鏡下で容易に沈着部位を検出することができる。これによって、骨新生や骨の発育やその変化などを実験的に研究することが可能である。水産学の分野では、などの耳石(平衡石)をこれで標識することにより成長輪の形成速度を検証し、野外で捕獲された個体の日齢、年齢などの査定を行う基礎データとすることが行われる。
相互作用

いくつかの薬剤との併用により本来の薬理作用を減じたり、あるいは増強する薬物相互作用が報告されている[15]

カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄剤、ビスマス塩

抗凝血剤

カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、バルビツール酸誘導体

スルホニル尿素系血糖降下薬

副作用詳細は「ドキシサイクリン#副作用」、「ミノサイクリン#主な副作用」、「テトラサイクリン#副作用」、「オキシテトラサイクリン#副作用」、および「クロルテトラサイクリン」を参照

ドキシサイクリン使用による炎症性腸疾患 (IBD) のハザード比は1.63 (95%CI:1.05-2.52)、クローン病 (CD) のハザード比は2.25 (95%CI:1.27-4.00) と示されている。また、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンも関連を示している[16]

光感受性(英語版)が増し、太陽光に曝されたときに日焼けなど光毒性のリスクが増加する。マラリア予防で長期間ドキシサイクリンを使用する人々にとって、特に重要かもしれない[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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