この項目では、ネーレーイデスの一人について説明しています。ティーターンの一人である海の女神については「テーテュース」を、土星の衛星(テーテュースに由来)については「テティス (衛星)」をご覧ください。
テティス
Θ?τι?
海の女神
テティスを捕らえようとするペーレウス描いたアッティカ赤絵式キュリクス(紀元前490年、エトルリア)。パリ、フランス国立図書館、キャビネ・デ・メダイユ所蔵
親ネーレウス、ドーリス
兄弟ネーレーイデス(アムピトリーテー、ガラテイア、プサマテー他)
子供アキレウス
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ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルの1811年の絵画『ユピテルとテティス』。エクス=アン=プロヴァンス、グラネ美術館所蔵。
テティス(古希: Θ?τι?, Thetis)は、ギリシア神話に登場する海の女神である。海神ネーレウスとドーリスの娘たち(ネーレーイス)の1人[1][2]。一説にはケンタウロス族の賢者ケイローンの娘[3][4][5]。テッサリアー地方のプティーアの王ペーレウスと結婚し、トロイア戦争最大の英雄アキレウスの母となった[6][7][8]。
ホメーロスとヘーシオドスからは「銀の足のテティス」と呼ばれている[9][10]。ギリシア神話の他の水域の神々と同様にあらゆるものに変身する能力を持ち、予言の才能に長けていた。神話では古い海神ネーレウスの娘でありながらオリュムポスの神々と密接に結びついている。ホメーロスの叙事詩『イーリアス』などによるとテティスを養育したのはヘーラーとされ、テティスもヘーラーに恩を感じていた。またテティスは苦難に陥った神々の救済者・保護者として語られ、ゼウスとポセイドーンから求婚されたことも伝えられている。『イーリアス』ではアキレウスの運命を悲嘆しながらも、息子に尽力する母として大きく取り上げられており、物語が展開するうえでの重要人物として描かれている。テティスとペーレウスの結婚は『イーリアス』でもしばしば言及されており、また前日譚である失われた叙事詩『キュプリア』では2人の結婚がトロイア戦争のきっかけとなったことが語られていた。紀元前7世紀ごろのスパルタ出身の抒情詩人アルクマーンはテティスに関する詩を作った。アルクマーンの詩は現存するわずかな断片から宇宙論的な性格のものであったと推測されている[注釈 1]。
ヘーロドトス、パウサニアースの著作によってマグネーシア地方[12]、およびラコーニア地方とメッセニア地方で崇拝されたことが知られている[13][注釈 2]。
神話
救済者・保護者としてのテティス
神々の反乱を鎮めるジョン・フラックスマンが描いたテティス(1793年)。ブリアレオースを喚び出し、ヘーラー、ポセイドーン、アテーナーからゼウスを救う様子を描いている。
『イーリアス』におけるテティスは困難に直面した神々の救済者として語られている。かつてオリュムポスでヘーラー、ポセイドーン、アテーナーが反乱を起こし、ゼウスを拘束するという事件が起きた。このとき神々の中でただ1人テティスだけがゼウスの味方をした。テティスはヘカトンケイルの1人ブリアレオース(別名アイガイオーン)に知らせ、ゼウスの味方として馳せ参じさせた。すると神々はブリアレオースを恐れるあまりゼウスに近づくことさえ出来なかった。テティスはそのすきに縄を解いてゼウスを解放した[15][注釈 3]。 またテティスは鍛冶神ヘーパイストスや酒神ディオニューソスを苦難から助け出した。ヘーパイストスは生まれてまもなく母のヘーラーによって天から海に捨てられた。これはヘーラーがヘーパイストスの不自由な足を嫌ったためと語られている。しかしテティスとエウリュノメーはヘーパイストスを助け9年の間海底で匿った。その間ヘーパイストスは2人のために様々な宝飾を制作した[17][注釈 4]。 テティスがディオニューソスを救ったのはトラーキアの残忍な王リュクールゴスに襲われたときである。リュクールゴスはニューセイオンの山でディオニューソスの乳母を追い回し、女たちを撲殺しただけでなくディオニューソスを脅喝した。ディオニューソスは命からがら海に逃げ込み、恐怖で震えていたところをテティスに助けられた[20][21]。 こうした経緯からゼウス、ヘーパイストス、ディオニュソースはいずれもテティスとアキレウスに親切であった。トロイア戦争においてゼウスはテティスを通じて届けられたアキレウスの願いを聞き入れ[22]、ヘーパイストスはテティスの依頼に応じてアキレウスのために見事な武具を作り上げた[23]。またディオニュソースは黄金の骨壷を授けた[24]。 テティスが英雄ペーレウスと結婚した経緯についてはいくつかの説がある。ピンダロスによるとテティスはゼウスとポセイドーンから結婚を望まれた。しかしテミスが「テティスは父親よりも偉大な子供を生む定めにあり、子供は長じてゼウスの雷撃やポセイドーンの三叉戟を越える武器を振るうだろう」と予言した。それだけでなく、むしろ人間に与えて生まれた子供は戦場で戦死させるのが良いと助言し、イオールコスで最も敬虔な英雄ペーレウスと結婚させることを勧めた。この物語ではテティスと結婚することは、ゼウスあるいはポセイドーンの息子から王権を簒奪するライバルが出現することを意味している。そのため彼らはテティスとの結婚を諦めざるを得ない。またテティスから生まれてくる子供の運命についても示唆されている[25]。 アイスキュロスの悲劇『縛られたプロメーテウス』はこの物語を下敷きとしている。
他の神々の保護
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