テストステロン
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この項目では、ステロイドホルモンについて説明しています。著作家については「Testosterone」をご覧ください。

テストステロン


IUPAC名

17β-Hydroxyandrost-4-en-3-one
優先IUPAC名(1S,3aS,3bR,9aR,9bS,11aS)-1-Hydroxy-9a,11a-dimethyl-1,2,3,3a,3b,4,5,8,9,9a,9b,10,11,11a-tetradecahydro-7H-cyclopenta[a]phenanthren-7-one
別称Androst-4-en-17β-ol-3-one
識別情報
CAS登録番号58-22-0 
PubChem6013
ChemSpider5791 
UNII3XMK78S47O 
DrugBankDB00624
KEGGD00075 
ChEBI.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul{line-height:inherit;list-style:none none;margin:0;padding-left:0}.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol li,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul li{margin-bottom:0}

CHEBI:17347 

ChEMBLCHEMBL386630 
SMILES

O=C4\C=C2/[C@]([C@H]1CC[C@@]3([C@@H](O)CC[C@H]3[C@@H]1CC2)C)(C)CC4

InChI

InChI=1S/C19H28O2/c1-18-9-7-13(20)11-12(18)3-4-14-15-5-6-17(21)19(15,2)10-8-16(14)18/h11,14-17,21H,3-10H2,1-2H3/t14-,15-,16-,17-,18-,19-/m0/s1 Key: MUMGGOZAMZWBJJ-DYKIIFRCSA-N 

特性
化学式C19H28O2
モル質量288.42 g mol?1
融点

151.0 °C, 424 K, 304 °F [1]
薬理学
ATC分類G03BA03
生物学的利用能Oral: very low (due to extensive first pass metabolism)
投与経路Transdermal (gel, cream, solution, patch), by mouth (as testosterone undecanoate), in the cheek, intranasal (gel), intramuscular injection (as esters), subcutaneous pellets
代謝Liver (mainly reduction and conjugation)
消失半減期2?4 hours[要出典]
血漿タンパク結合97.0?99.5% (to SHBG and albumin)[2]
排泄Urine (90%), feces (6%)
ライセンスデータ
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
テストステロン分子を三次元で描いた図。

テストステロン(Testosterone)は、アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性における主要な性ホルモンであり、蛋白同化ステロイドでもある[3]。男性において、テストステロンは、精巣や前立腺などの男性生殖組織の発達に重要な役割を果たすと共に、筋肉や骨量の増加、体毛の成長などの二次性徴を促進する[4][5]。さらに、男女共にテストステロンは、気分や行動などの健康や幸福、骨粗鬆症の予防にも関与している[6][7][8][9][10][11]。男性のテストステロンが不足すると、虚弱体質骨量減少などの異常が生じる可能性がある。

テストステロンは、3位と17位にそれぞれケト基ヒドロキシ基を持つアンドロスタンクラスのステロイドである。テストステロンは、コレステロールからいくつかの段階を経て生合成され、アンドロゲン受容体に結合して活性化することで作用を発揮する[12]。肝臓で不活性な代謝物に変換される[12]。人間をはじめとするほとんどの脊椎動物では、テストステロンは主に男性の精巣から分泌され、女性の卵巣からも分泌される。成人男性のテストステロン濃度は、成人女性の約7 - 8倍である[13]。 男性のテストステロンの代謝はより顕著であるため、1日の分泌量は女性の約20倍になる[14][15]。 また、女性の方がホルモンに対する感受性が高いと言われている[16]

テストステロンは、天然ホルモンとしての役割に加えて、医薬品として男性の性腺機能低下症や女性の乳癌の治療に使用されている[17]。男性は加齢と共にテストステロンのレベルが低下するため、この不足分を補うためにテストステロンが高齢の男性に使用されることがある。また、スポーツ選手などの体格やパフォーマンスを向上させるために違法に使用されることもある[18]世界アンチ・ドーピング機構は、テストステロンをS1アナボリックエージェント物質として「いかなる場合も禁止」している[19]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
生物学的役割

筋肉増大。

骨格の発達。

女性の男性ホルモン分泌の分泌量は前述通り男性の5-10%程度で、陰毛の発毛に関与する。

一般的に、テストステロンのようなアンドロゲンは、タンパク質合成を促進し、アンドロゲン受容体を持つ組織の成長を促す[20]。テストステロンには、男性化作用と同化作用があると言われている(ただし、これらの分類的な記述は、相互に多くの重複があるため、やや恣意的である)[21]

アンドロゲン作用には、性器成熟、特に胎児陰茎陰嚢の形成、出生後(通常は思春期)の声変わり、顔面の毛(など)や腋毛の成長などがある。これらの多くは、男性の二次性徴の範疇に入る。

同化作用には、筋肉量と筋力の増加、骨密度と骨強度の増加、直線的な成長と骨の成熟の促進などがある。

テストステロンの影響は、通常の発生年齢によっても分類される。男性と女性の出生後(英語版)の影響については、ほとんどが循環する遊離テストステロンのレベルと期間に依存している。
誕生前

出生前の影響は、発達段階に関連して分類された2つのカテゴリーに分けられる。

第1期は、妊娠4週から6週の間に発生する。例えば、正中融合、男根尿道形成、陰嚢の菲薄化との形成、男根の肥大等の性器の男性化があるが、テストステロンの役割はジヒドロテストステロンのそれよりも遥かに小さい。また、前立腺精嚢の発達も見られる。

第2期では、アンドロゲンレベルが性形成と関連している[22]。妊娠6週目から24週目にかけて大量のテストステロンが分泌され、これに曝されること(アンドロゲン・シャワーと呼ばれる)によって、脳は女性的特徴(ホルモン分泌の周期性)を失う。なお、男性外生殖器の形成に関係するのは、5α-還元酵素により、代謝されたジヒドロテストステロン(DHT)によるものである。より具体的には、テストステロンは、抗ミュラー管ホルモン(AMH)と共に、ウォルフ管の成長とミュラー管の変性をそれぞれ促進する[23]。この時期は、胎児の女性化または男性化に影響を与え、成人のテストステロンレベルよりも女性的または男性的な行動、例えば性行動を予測するのに適していると考えられる。出生前のアンドロゲンは、明らかにジェンダー的な活動への興味や関与に影響を与え、空間的な能力にも中程度の影響を与える[24]。先天性副腎過形成症(CAH)の女性では、幼少期に男性型の遊びをしていたことが、成人になってからの女性性への満足度の低下や異性への関心の低下と相関していた[25]
新生児・乳児

新生児期・乳児期のアンドロゲンの影響は、最も理解されていない。男児の場合、生後数週間でテストステロンレベルが上昇する。数ヶ月間は思春期の範囲に留まるが、通常、生後4-7ヶ月でほとんど検出できないレベルに達する[26][27]。ヒトにおけるこの上昇の機能は不明である。身体の他の部位では目立った変化が確認されていないことから、脳の男性化が起こっているのではないかという説がある[28]。男性の脳は、テストステロンが芳香族化してエストロゲンとなり、血液脳関門を通過して男性の脳に入ることで男性化するが、女性の胎児はα-フェトプロテインを持っており、エストロゲンと結合するため、女性の脳には影響がないという[29]
思春期前

思春期直前には、アンドロゲン濃度の上昇による影響が男女共に現れる。具体的には、大人特有の体臭、皮膚や髪の毛の脂っぽさの増加、にきび陰毛の出現、腋毛の出現、成長促進、骨の成熟の促進、の出現などがある[30]
思春期

男性は睾丸容量が4ml以上となると思春期に入り、血中テストステロンが測定可能となる10ng/dL超となる[31]。その後精巣がさらに増大すると共にテストステロンの分泌もさらに増大し男性的な身体の特徴が形作られる(二次性徴)。

思春期の影響は、アンドロゲンが通常の成人女性のレベルよりも高い状態が数ヶ月 - 数年続いたときに起こり始める。男性では通常の思春期後期の影響であり、女性では血中の遊離テストステロン濃度が長期にわたって上昇した後に発生する。その効果は以下の通りである[30][32]

睾丸の精子形成組織の成長、男性の生殖能力獲得、陰茎または陰核の肥大、性欲および勃起の頻度の増加、または陰核の勃起が起こる。


ヒト成長ホルモンと連動して、、眉毛、顎、鼻の成長、顔の骨の輪郭の変化が起こる[33]

骨の成熟が完了し、成長が終了する。これはエストラジオールの代謝物を介して間接的に行われるため、女性よりも男性の方がより緩やかに進行する。

筋力と体重の増加、肩幅と胸郭の拡大、声変わり、喉仏の成長。

皮脂腺の肥大化。ニキビができやすくなり、顔の皮下脂肪が減少する。

陰毛大腿部からに向かって伸びる。顔の毛(もみあげ、顎髭、口髭)が生える。頭皮の毛がなくなる(男性型脱毛症)、胸毛乳輪周囲の毛、肛門周囲の毛、臑毛腋毛が増える。

成人

テストステロンは、精子の正常な発育に必要な物質である。テストステロンは、セルトリ細胞の遺伝子を活性化し、精祖細胞の分化を促進する。テストステロンは、優位に立ったときの急性HPA(視床下部-下垂体-副腎軸)反応を制御する[34]。テストステロンを含むアンドロゲンは、筋肉の成長を促進する。また、テストステロンは、巨核球血小板上のトロンボキサンA2受容体(英語版)の数を調節し、その結果、ヒトの血小板凝集を制御する[35][36]

成人期のテストステロンの作用は、女性よりも男性の方がより明確に示されているが、男女共に重要であると考えられる。これらの作用のいくつかは、成人期の後半にテストステロンレベルが低下することによって減少する可能性がある[37]

一般に30歳ごろから減少し始め、年1 - 2%の割合で減少する。テストステロンの減少は男性更年期と呼ばれるが、女性の更年期ほどには急激にホルモン分泌は変化せず、身体や精神に与える影響も個人差が大きい。


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