テキサス併合
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テキサス共和国

テキサス併合(テキサスへいごう、: Texas Annexation)は、1845年テキサス共和国が自発的にアメリカ合衆国へ加盟した事件。この結果合衆国の28番目の州としてテキサス州が生まれた。このときサン・フアン山脈(英語版)も追加された。アメリカ合衆国にとってテキサスの併合は、対外的にメキシコとの関係、対内的には奴隷制の拡大による南北対立の激化という問題を抱えていた。このために加盟を巡って長期にわたる論争があり、他の州の加盟とは異なる方法によって加盟が承認された。
背景
米国政府

1837年、テキサス共和国はメキシコからの独立を勝ち取ったばかりであり、サミュエル・ヒューストン大統領のもと、同年にテキサス共和国を最初に承認したアメリカ合衆国への併合についての同意を投票で決めた。その前年、サンジャシントの戦いの後に捕虜となったメキシコ大統領サンタ・アナが、ワシントンD.C.アンドリュー・ジャクソン大統領と面会した際、テキサス以西の領土の「値段」を聞いていたと言われる[1]。それほど領土拡大に執心していたアメリカ合衆国がテキサス併合に異論のあるはずはなかったのだが、合併すればメキシコとの開戦は不可避であるとの認識があった[1]。また、奴隷制を保持していたテキサスがアメリカ合衆国に加盟した場合に、上院の新しい2議席は奴隷州側に付くということを、北部の諸州が容認し得ないことも、米国がテキサス併合に踏み切れない背景の要素のひとつであった[1]。当初、ワシントンD.C.に派遣したテキサス共和国の大使が1837年8月にマーティン・ヴァン・ビューレン米大統領に併合提案を行ったが、メキシコとの戦争になることが予測されたために拒否された。

1838年には、テキサス共和国の独立維持と領土拡大を標榜するミラボー・ラマーが大統領となり、一旦は併合提案を撤回した。1839年にフランス、1840年にオランダとイギリス、1841年にはベルギーがテキサス共和国を承認したが、これらはすべてアメリカ合衆国がテキサスを併合して領土を拡大することを阻止することが目的の承認だった。

ヴァン・ビューレンの任期切れのあとに(ウィリアム・ハリソンが就任1ヶ月あまりで急死したため)アメリカ合衆国大統領となったジョン・タイラーも就任当初は併合に躊躇していた。だが、1843年にテキサスがイギリスに仲介を依頼してメキシコとの接近を図る動きを示したため、一転して併合案を支持した。タイラーは1844年4月にテキサス併合の条約締結を行った。米国憲法では、条約の締結は大統領の職権だが、批准のためには上院の3分の2以上の賛成が必要とされた。アメリカ合衆国上院6月8日に35対16という大差で否決となり批准されなかった。

領土拡張を主張し、テキサスの併合に積極的な民主党候補のジェームズ・ポーク1844年アメリカ合衆国大統領選挙での勝利が決定すると、タイラーは一気に議会工作を進めた[1]。テキサス併合に関してはポークと対立の無いタイラーはポークと相談し、上院での批准が困難であることが分かっている条約ではなく、上下両院合同決議による併合法案として議会に提出した。何度にもわたる法案再提出や修正議決案提出といった大激論の末、1845年2月28日、上院で27対25の僅差、下院では132対76で、選択権を大統領に与えるという決議がなされ、翌日タイラーはこの決議を実行する選択の署名を行った。タイラーの大統領任期が終わる3日前だった。
メキシコ政府Map of Texas and the Countries Adjacent, William Hemsley Emory, 1844

1844年当時のメキシコ大統領はサンタ・アナで、テキサスの併合は「宣戦布告に等しい」と警告していた。テキサスに関しては主戦論に凝り固まっていた彼は、駐米メキシコ大使を通して「併合したら即開戦」との通告を与えていた[1]。タイラーの併合への動きを見て、サンタ・アナはテキサス進軍のための戦費調達と徴兵を強引に推し進めたがこれは国内の不評を買った[2]。イギリス、フランス両国による戦争回避とテキサス共和国承認の説得を一時は受け入れつつあったサンタ・アナであったが、政変により1844年12月に失脚し、国外追放を命じられてキューバへと逃亡する[2]

サンタ・アナの後継は穏健リベラル派のホセ・ホアキン・デ・エレラで、彼は当時メキシコで少数派の戦争回避の論者であった[2]。彼のもとでメキシコ政府は、1845年5月、かねてよりイギリス、フランス両国から働きかけられていたテキサス共和国の承認の意向を固めた[2]


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