「角」のその他の用法については「角 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
角(つの)とは、動物の主に頭部にある堅く突き出た構造のこと。また、それに似た形状のものを指して角と呼ぶこともある。 本来、生物学的には角は奇蹄目の一部や偶蹄目などの哺乳動物に見られる角質または骨質突起のことを指すが、一般的にはそれに似た円錐形その他の形状の突起を角と呼ぶ。普通は頭部に生じ、正中線上に生じるものは単独で、そうでないものは対を成して生じる。 角を持つものとしては、哺乳類と昆虫に例が多く、それ以外の動物にも散見される。 哺乳類の角の役割は、まず武器であると考えられる。頭部にあって上や前を向く角は、やや頭を下げたときに、視界方向に突き出す形をとるが、これもそのような用途に適する。天敵に対する武器として使われるとも考えられるほか、同種内で、集団での地位の確認や、メスや餌場の取り合いなどの場合に、雄同士の威嚇やけんかの武器として使われる。特によく発達した例では、性淘汰による可能性が指摘される。カブトムシ類の角もほぼ同様に使われる。 これに対して、それ以外の動物でははっきりした角がありながら、何の役に立つのか分からない場合も少なくない。一部はむしろ天敵が食べるときにそれを邪魔する役割があると考えられ、攻撃的な意味を見出しがたい。 牛[1]、羊[2]、ヤギ[3]、鹿[4]、キリン[5][6]などにおいては、体温(脳に流れる血液)の放熱に使われているという意見がある。 なお、角とは認められない触角・触手・顎などが「角」と呼ばれる例もある。 現生の哺乳類の角は骨が変化した器官であるものが多く、主に草食動物に見られる。雄で発達している例が多く、敵に対する武器として、また同種間の争いに使われる。特に反芻動物などが持つことが多く、ぶつけ合ってメスや餌場を取り合う。 角には、シカ科・ウシ科・プロングホーン科・キリン科(以上は偶蹄目)と奇蹄目サイ科の5種類の角がある。 シカ科(ニホンジカやトナカイ、ヘラジカやシフゾウなど)の角は、枝分かれすることから枝角と呼ばれる。英語ではAntler(アントラー。対をなすことから通常はアントラーズ)と呼ばれる。毎年生え替わり、通常、オスにのみ生える(トナカイはオスにもメスにも生える)。頭の上に毛皮をかぶったこぶとして発生し(袋角という)、伸び出して中に骨が作られると、毛皮が剥がれて角が姿を現わす。季節がすぎると、角は根元から外れて落ちる。角を合わせて戦うことは少なく、むしろ角の立派さで地位を決めている種が多い。これらの角は枝分かれしているものが多いが、高齢や栄養状態の良い個体程枝が多く立派なものを持つ。 ウシ科の角は、洞角といわれる。英語ではHorn(ホーン)。頭蓋骨に角の形?角突起、あるいは角芯?があり、その骨の上に爪のように角の皮(角鞘)がかぶった状態で存在し、一生伸び続ける。オスにもメスにも生える。鹿のように枝分かれすることはない。レイヨウの仲間の角は、実際の争いで角を使う種が多い。特に、砂漠や高山などに住む種が争いに角を使う。 プロングホーンの角は、頭蓋骨に角の形?角突起、あるいは角芯?があり、その骨の上に爪のように角の皮(角鞘)がかぶった状態で存在することはウシ科の角と同じ構造であるが、角質部が枝分かれしており、角質部が1年に1回生え変わる。(シカ科の枝角のように骨質部が生え替わることはない。)オスにもメスにも角はあるが、通常メスの角は非常に小さい。プロングホーンの一種のみでプロングホーン科を形成している。日本国内では横浜市立金沢動物園でのみ、飼育されている。 キリンの角は5本(頭の上2本と目の間に1本、後頭部に2本)あり、加齢とともに大きくなる。オスにもメスにもある。頭頂部の2本の角はネッキングといわれる戦いの際に使用されるが、ほかの3本の角は、進化前の名残りではないかともいわれている。この角は頭骨の一部が隆起して出来た突起に皮膚が被ったものである。同じキリン科でもオカピの角は2本で、オスにしかない。キリン科の角は、英語ではOssicone(オッシコーン)と呼ばれている。
概説
脊椎動物の角
哺乳類
枝角(シカ科)アカシカの枝角
洞角(ウシ科、プロングホーン科)インパラの洞角
オッシコーン(キリン科)キリンのオシコーン