ツツガムシ病
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ツツガムシ病

ツツガムシリケッチア
概要
診療科感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10A75.3
ICD-9-CM081.2
DiseasesDB31715
eMedicinederm/841 ped/2710
MeSHD012612
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ツツガムシ病(ツツガムシびょう、恙虫病)は、ツツガムシリケッチア(Orientia tsutsugamushi) への感染によって引き起こされる人獣共通感染症の1つ。病原体を保有するツツガムシ(ダニ目ツツガムシ科のダニ)によって媒介される[1][2]感染症法の4類感染症に指定されている[2]
概要

日本紅斑熱と症状が酷似している。「古典型」と「新型」の2型に分類され[1]、かつての日本では古典型ツツガムシ病は東北・北陸地方(新潟県、山形県、秋田県など)の河川の下流域で夏季に発生する風土病であった[3]。伊豆七島の「七島熱」、房総半島の「二十日熱」、高知の「ほっぱん」などの原因不明の風土病は、タテツツガムシやフトゲツツガムシの媒介する一種のツツガムシ病であることがわかっている[3]。1945年以降新型ツツガムシ病の出現により北海道を除く地域から患者が報告されている。また、沖縄県での発生は報告されていなかったが、2008年に患者が報告され[4][5]、離島[6]を含め全国的に発生が報告されている[2]

日本国外では、南アジア東南アジア[† 1]オーストラリア北部、朝鮮半島カムチャッカ半島など広く存在する[8]

ツツガムシの幼虫は0.2ミリほどの大きさで、肉眼で確認することが難しく[7]、アカツツガムシ以外に吸着された場合には、ほとんど痛みや痒みを感じない[9]。刺された覚えのない発病者も多く、症状の初期はインフルエンザ様を示すこともあり、医師がリケッチア感染症を疑い、早期に確定診断することが重要になる。「薮チフス」とも呼ばれるが、病原菌は腸チフスパラチフスを含むサルモネラ属ではなく、発疹チフスを含むリケッチア科に含まれる。
分類

媒介するツツガムシの種により「古典型」と「新型」に分類されている。2つの型で発生時期が違うのは、それぞれの活動時期の違いによる。
古典型ツツガムシ病

アカツツガムシ(Leptotrombidium akamusi)に吸着されて発症し、古くは山形県・秋田県・新潟県などの地域で夏季に河川敷(信濃川阿賀野川最上川雄物川等)で感染する風土病で、死に至る病として恐れられていた。春から夏に多い。
新型ツツガムシ病

タテツツガムシ(L.scutellare)やフトゲツツガムシ(L.pallidum)など[5]に吸着されて発症する。秋から初冬に発生が見られる。

1948年(昭和23年)、富士山麓で演習中のアメリカ軍兵士が熱病に倒れ、診察の結果、タテツツガムシ媒介によるツツガムシ病であることがわかった[7]。この一件をきっかけにアカツツガムシ以外のツツガムシが媒介して発症するものが新型ツツガムシ病(非アカツツガムシ媒介性ツツガムシ病)として注目されるようになり、横浜市房総半島、東京都伊豆七島四国地方などで原因不明とされていた熱病がこのタイプに該当することが判明した[10]。新型ツツガムシ病は北海道を除く全国で発生が確認されている。
媒介者

ツツガムシは日本だけで80種類以上が生息しているが、リケッチアを保有し、かつヒトに吸着する性質を有するものはそのうち数種類である[11]

ツツガムシは土壌昆虫の卵などを捕食する捕食性のダニであり、動物に吸着することはない[11][12]が、卵から孵化した直後の第1期の幼生である幼虫のみ[13]が、生涯で1度だけネズミなどの温血動物の皮膚に吸着し、組織液や崩壊組織などを摂取する(血液は吸わない[14])。このときリケッチアを保有する幼虫に吸着されることで温血動物がリケッチアに感染する[13]

動物の接近は二酸化炭素によって検知し[15]、吸着時間は1日から2日[12]で、ツツガムシから動物への菌の移行にはおよそ6時間以上が必要である。菌を持たないダニ(無毒ダニ)が感染動物に吸着しても菌を獲得できず、有毒ダニにならない。

なお、ツツガムシに吸着されたネズミを介してヒトがツツガムシ病になるというのは誤りである[11]。また、ヒトからヒトへの感染はない[11]
臨床所見
症状

刺し口は有毒ツツガムシが吸着してから2-3日目に周囲に赤みのある小さな水疱として現れ、膿疱状に変化した後、10日目頃に周囲が赤く盛り上がった黒色の痂皮になる。その後は窪んだ潰瘍に転じ、1-2か月ほどで皮膚に覆われて治る[16]。刺し口に痛みや痒みを覚えることはあまりないため、発熱等ツツガムシ病が疑われる症状が出た後、診察時に刺し口が発見されることが多い[17]。刺し口は、陰部・内股・脇の下・下腹部・小児の頭皮など、皮膚の柔らかい箇所に現れる[16]

発病時の症状はインフルエンザ腎盂炎などと似ており[17]、ツツガムシに刺されてから5-14日の潜伏期を経て、全身の倦怠感、食欲不振、強い頭痛に見舞われ、38-40度の高熱が続く[18]。2日目ころから体幹部を中心とした全身に、2-5mmの大きさの紅斑・丘疹状の発疹が出現し、5日目ころに消退する。また、刺し口の近くに局所的なリンパ節の腫れが見られ、押すと痛む[18]低ナトリウム血症[19]、筋肉痛、目の充血が見られることもある。

早期に診断がつき適切な治療が行われれば速やかに治癒するが、治療が適切でない場合は症状が長引く[20]。ツツガムシ病における死亡例のほとんどは、ツツガムシ病と診断されないまま播種性血管内凝固症候群となった患者である[21]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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