ツクツクボウシ
左オス・右メス
分類
ツクツクボウシ(つくつく法師、寒蝉、寒?、Meimuna opalifera)はカメムシ目(半翅目)ヨコバイ亜目(同翅亜目)セミ科に分類されるセミの一種。晩夏から初秋に発生するセミで、特徴的な鳴き声を発する。ツクツクホーシ、オーシンツクと呼ばれることもある。
特徴は緑色で、後胸部の中央にも"W"字型の緑の模様があるが、他の後胸部と腹部は黒色が多い。また、オスの腹側の腹弁は大きく、縦長の三角形をしている。メスは産卵管が非常に長く、産卵管を収納する鞘のような部分がはみ出ている。外見はヒメハルゼミやヒグラシに似るが、頭部の横幅が広く、腹弁が大きいことで区別がつく。
抜け殻は小型で前後に細長く、光沢がない淡褐色をしている。 北海道からトカラ列島・横当島までの日本列島、日本以外では朝鮮半島、中国、台湾まで、東アジアに広く分布する。 平地から山地まで、森林に幅広く生息する。地域によっては市街地でも比較的普通に発生するが、基本的にはヒグラシと同じく森林性であり、薄暗い森の中や低山帯で多くの鳴き声が聞かれる。この発生傾向は韓国や中国でも同様である。 成虫は特に好む樹種はなく、シダレヤナギ、ヒノキ、クヌギ、カキ、アカメガシワなどいろいろな木に止まる。警戒心が強く動きも素早く、クマゼミやアブラゼミに比べて捕獲が難しい。 成虫は7月から発生するが、この頃はまだ数が少なく、鳴き声も他のセミにかき消されて目立たない。しかし他のセミが少なくなる8月下旬から9月上旬頃には鳴き声が際立つようになる。9月下旬にはさすがに数が少なくなるが、九州などの西南日本では10月上旬に鳴き声が聞かれることがある。 なお、後述のように八丈島や岡山・長崎では、7月上旬から鳴き始めることが知られている。 ツクツクボウシは、元来北日本では川沿いのシダレヤナギ並木など局地的にしか分布していなかった。近年、北海道では札幌市の真駒内公園で増加しているほか、道内の各地で鳴き声が聞かれるようになっている。また、岩手県や宮城県においても、このセミが増えつつある。一方で、青森県では分布が局地的であり、今のところ増加するには至っていない。 八丈島では、セミはほぼツクツクボウシ一種しか生息しておらず(他種はヒグラシがわずかに生息)、ひと夏中ずっと鳴いており個体数も非常に多い。 八丈島では7月上旬(年によっては6月下旬)、対馬でも夏の初めから現れるが、一般に本土では夏の終わりを象徴する昆虫とされている。一方で、岡山や長崎など一部の地域では、近年、夏の初めから鳴きだすことが知られている。 岡山・長崎などでのツクツクボウシの早鳴きについては不明であるが、都市部のヒートアイランド現象による地中の温暖化が、幼虫期の成長に影響を与え、成虫の出現時期の早期化につながっている可能性が挙げられている。 オスは午後の陽が傾き始めた頃から日没後くらいまで鳴くが、鳴き声は特徴的で、和名もこの鳴き声の聞きなしに由来する。鳴き声は「ジー…ツクツクツク…ボーシ!ツクツクボーシ!」と始まる。最初の「ボーシ!」が聞き取りやすいためか、図鑑によっては鳴き声を「オーシツクツク…」と誤って逆に表記することもある。以後「ツクツクボーシ!」を十数回ほど繰り返しながらだんだん速度が早くなり、「ウイヨース!」を数回繰り返したのちに、最後に「ジー…」と鳴き終わる。「ウイヨース」の直前に「ツクツクウィー」という鳴き声が入ることもある。 また、1匹のオスが鳴いている近くにまだオスがいた場合、それらのオスが鳴き声に呼応するように「ジー!」と繰り返し声を挙げる。合唱のようにも聞こえるが、これは鳴き声を妨害しているという説がある。 大陸産のツクツクボウシの鳴き声は、日本産のものと比べて少し異なる(セミの方言)。またミンミンゼミも同じくやや異なっている。 このセミの中には時々訛ったような声で鳴く個体が散見される。具体的には、「ボーシ!」の部分がかなりしわがれた声に聞こえるというものである。このときの鳴き声は同じツクツクボウシ属のクロイワツクツクやイワサキゼミの声にも似ており、鳴き声におけるツクツクボウシ属の共通性を実感できる。ちなみにツクツクボウシが普通に鳴いているときの声はクロイワツクツクなどとは似ても似つかぬものである。 南西諸島と小笠原諸島にはツクツクボウシに近縁の固有種が知られる。どれもツクツクボウシによく似た形態だが、鳴き声はそれぞれ異なる。また、これらは熱帯・亜熱帯に分布しているためか、11月や12月でもまだ鳴き声が聞こえることがある。2010年代には中国原産の外来種が本州に侵入している。
生態
北日本での増加
ツクツクボウシの楽園
ツクツクボウシの早鳴き
鳴き声.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}ツクツクボウシの鳴き声(ソロ)川崎市 早野聖地公園、2011年9月18日午後4時50分頃採音。再生時間 36秒、466KB。この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。ツクツクボウシの鳴き声(合唱、ほかのオスの妨害音「ジー!」が入る)川崎市 早野聖地公園、2011年9月18日午後4時40分頃採音。再生時間 39秒、500KB。この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。韓国のツクツクボウシの鳴き声(単一、中間部が存在し、「チキチキチキー!」と鳴き声をする。)韓国 大田広域市、2006年8月14日午後頃。再生時間 22秒、2.16MB。この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
クロイワツクツク等との鳴き声における共通点
日本産の近縁種
クロイワツクツク Meimuna kuroiwae (Matsumura, 1917)
ツクツクボウシよりも更にオスの腹弁が大きい。大隅半島南部から沖縄本島まで分布するが、与論島には分布しない。また、指宿市や鹿児島市からの記録もある。千葉県房総半島の一部の地域でも、樹木の移入によりこのセミが生息している(千葉県の国内外来種)。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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