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ツェルメロ集合論(ツェルメロしゅうごうろん、英: Zermelo set theory、時々 Z- と表記される)とは、1908年にエルンスト・ツェルメロの影響力のある論文から始まった、現代のツェルメロ=フレンケル集合論(ZF)やその拡張であるフォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデル集合論(NBG)などの始祖である。ツェルメロ集合論は、その後継の集合論とは特定の違いがあるものの、必ずしも理解されているわけではなく、頻繁に誤って引用されている。この記事では原文の公理について、(日本語に訳した)原文のテキストと原文の番号付けで説明を始める。 ツェルメロ集合論の公理の言明の対象のうち、いくつかは集合に対する言明であり(ただし必ずしもすべてではない)、それ以外はアトム(urelement)や集合以外に対する言明である。ツェルメロの言語では暗黙的に帰属関係 ∈、等号関係 = (背景の論理に含まれていないならば)、そして対象が集合であるかどうかを述べる単項述語が含まれる。新しい版の集合論では、アトムをなくし単項述語が不要になるように、しばしばすべての対象が集合であることを仮定する。 最も広く用いられ受け入れられている集合論は ZFC として知られる、選択公理(AC)を含んだツェルメロ=フレンケル集合論である。上記のリンクはツェルメロの公理とZFC公理との対応を示している。「基本的集合の公理」は正確に一致するものがない。(単集合は現在「対の公理」と呼ばれるものから導出できることが後から示された。具体的には、a が存在するならば、a と a が存在するため、{a,a} も存在し、外延性の公理から {a,a} = {a} となる。)空集合の公理は無限公理ですでに仮定されており、現在はZFC公理の一つとして含まれている。 ツェルメロ集合論は置換公理と正則性公理を含まない。置換公理は1922年のアドルフ・フレンケルとトアルフ・スコーレムの論文で導入された。フレンケルとスコーレムは独立に、ツェルメロ公理では集合 {Z0, Z1, Z2, ...} (ここで Z0 は自然数の集合、Zn+1 は Zn の冪集合である)の存在を証明できないことを発見した。フレンケルもスコーレムもこの証明には置換公理が必要であると気づいていた。翌年、ジョン・フォン・ノイマンはフォン・ノイマン順序数の構築に正則性公理が必要であると指摘した。正則性公理は1925年にフォン・ノイマンによって定義された[1]。 現代のZFC公理系において、分出公理における「命題関数」とは「パラメータを含む一階の論理式で定義される任意の特徴」として解釈されるため、分出公理は公理型で置換される。「一階の論理式」という概念はツェルメロが自身の公理系を発表した1908年には知られておらず、ツェルメロは後にこの解釈をあまりにも限定的であるとして拒絶していた。ツェルメロ集合論はふつう、分出公理のそれぞれの一階の論理式を公理型で置換した、一階理論として捉えられる。ツェルメロ集合論を二階述語論理の理論として捉えることもでき、その場合は分出公理は単に一つの公理となる。ツェルメロ集合論の二階述語論理としての解釈はおそらくツェルメロ自身の考え方に近く、一階述語論理での解釈よりも強いものである。 ZFC集合論の通常の累積的階層 Vα (α は順序数)において、最初の無限順序数 ω より大きい任意の極限順序数 α に対する集合 Vα(例えば Vω·2)は、ツェルメロ集合論のモデルとなる。
ツェルメロ集合論の公理
公理 I. 外延性の公理 (Axiom der Bestimmtheit) 「集合 M のすべての要素が集合 N の要素でもあり、逆も成り立てば、M ≡ {\displaystyle \equiv } N である。要するに、すべての集合は要素によって決定される。」
公理 II. 基本的集合の公理 (Axiom der Elementarmengen) 「要素を一切持たない集合である空集合 ? が存在する。a が議論領域の任意の対象であるならば、a を含み要素が a のみである集合 {a} が存在する。a と b が議論領域の任意の2つの対象であるならば、要素として a と b を含むが a, b 両方と異なる対象 x は含まない集合 {a, b} がつねに存在する。」対の公理も参照せよ。
公理 III. 分出公理 (Axiom der Aussonderung) 「命題関数 –(x) が集合 M のすべての要素に対して定義されているならば、M は、–(x) が真である M の要素のみからなる部分集合 M' を持つ。」
公理 IV. 冪集合公理 (Axiom der Potenzmenge) 「すべての集合 T に対して、対応する集合 T' が存在する。T' は要素が T のすべての部分集合のみからなる、T の冪集合である。」
公理 V. 和集合の公理 (Axiom der Vereinigung) 「すべての集合 T に対して、対応する集合 ∪T が存在する。∪T は要素が T のすべての要素の要素のみからなる、T の和集合である。」
公理 VI. 選択公理 (Axiom der Auswahl) 「T が集合であり、T の要素がすべて ? ではなく互いに素な集合であるならば、その和集合 ∪T には、T の各要素と共通する要素を1つだけ持つ部分集合 S1 が、少なくとも1つ含まれる。」
公理 VII. 無限公理 (Axiom des Unendlichen) 「議論領域中に集合 Z が少なくとも1つ存在する。集合 Z は空集合を要素として含み、集合 Z の各要素 a に対して {a} という形の追加要素が対応するように構成されている。すなわち、集合 Z は要素として各 a のほかに対応する集合 {a} も含む。」
標準的な集合論との関連