ツァトゥグァ
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Tsathoggua、Ruud Dirven画

ツァトゥグァあるいはツァトゥグア (Tsathoggua) は、クトゥルフ神話に登場する架空の神性。クラーク・アシュトン・スミスによって創作された。異称としてサドグイ(Sadogui)、サドゴワア(Sadogowah)、ゾタクア(Zhothaqquah)などが知られる[注 1]

ツァトゥグァはラヴクラフト神話に含まれる。
概要

もともとは古代の邪教の神として創造されたのだが、クトゥルフ神話が体系化されたことで、他の邪神たちと同じように旧支配者にカテゴリされるようになった。

初出作品は、クラーク・アシュトン・スミスが『ウィアード・テイルズ』1931年11月号に発表した短編『サタムプラ・ゼイロスの物語[1]である。

スミスと交流があったハワード・フィリップス・ラヴクラフト(以下HPL)が、スミスの作品が発表されるよりも前に、1930年に執筆し、ウィアード・テイルズ1931年8月号に発表した『闇に囁くもの』にて名前と由来について言及されている[2]

スミスのツァトゥグァを気に入ったHPLは、自分の作品に取り入れて描写したのだが、あまりスミスの原設定を重視せず、自由に書いている。そのためスミスのツァトゥグァとHPLのツァトゥグァは全然違う。

他の邪神たちと同様に、ツァトゥグァの初期設定は初期辞典『クトゥルー神話小辞典』『クトゥルー神話の神神』で要約されており、スミス、HPLの作品とダーレス神話を材料としている。このときスミスのツァトゥグァとHPLのツァトゥグァとダーレスの旧支配者・四大霊が混ざった。

ツァトゥグァは地球外からやってきた神である。スミスはサイクラノーシュ(土星)から地球に到来し、古代大陸ハイパーボリアのヴーアミタドレス山の地底洞窟に棲むとした。一方HPLは、北米地底の「暗闇のンカイ」から到来したとした[2]。天空から飛来したのか、異次元を通って地に出現したのかは判然とせず、またハイパーボリア大陸は海に沈みンカイにももはや姿はないようで、ツァトゥグァが今どこにいるのかは判然としない。

フランシス・レイニーやリン・カーターは、ツァトゥグァを四大霊の地の精と分類している[3][4]。また旧神に逆らったことで、先述の居場所に幽閉されているということになっている。

創造者スミスが多用した神性であるが、ツァトゥグァ自身をはっきりと登場させた作品は『七つの呪い』のみ。同作品にいわく「空腹にさいなまれているときすら、その場から立ちあがることはなさらず、聖なる怠惰のままじっと生贄を待ちつづける」[5][注 2]

クトゥルフ神話TRPGでは、邪悪揃いの神話存在たちの中では「さほど悪意のない[6](邪心の少ない[7]/邪悪でない[8])」方と説明されている。
登場・関連作品

クラーク・アシュトン・スミス:
サタムプラ・ゼイロスの物語(執筆1929/発表1931)、魔道士エイボン(1932)、アウースル・ウトックアンの不運(1932)、アタマウスの遺言(1932)、アゼダラクの聖性(1933)、七つの呪い(1934)
創造者スミスの作品数は6、内訳はハイパーボリアが5、アヴェロワーニュ(英語版)が1。しかしスミスはオーガスト・ダーレスからの質問に1937年4月13日付の書簡で回答し、ツァトゥグァが関与する作品として5編を挙げている[9]。スミス自身が挙げた5編には『アウースル・ウトックアンの不運』が含まれていない。またスミスの未発表草稿『サドクアの神託』は、アヴェロワーニュシリーズ最古のローマ占領時代を舞台としており、サドクア(ツァトゥグァ)崇拝が構想されていた[10][11]

HPL:闇に囁くもの(執筆1930/発表1931)、墳丘の怪(執筆1929/発表1940)、羽のある死神(執筆1932/発表1934)、ほか書簡

リン・カーター:モーロックの巻物(1976)、カーター版ネクロノミコン「第二の物語 メンフィスの地下にあらわれたもの」「第四部一章 抑えきれぬものの召喚について」(19XX)

栗本薫魔界水滸伝(1981)

友成純一地の底の哄笑(1994)

ジョン・R・フルツ:スリシック・ハイの災難(1996)

ロバート・M・プライス:裏道(1997)

容姿ツァトゥグァの邪神像(サタムプラ・ゼイロスの物語

ツァトゥグァは巨大な腹部とヒキガエルに似た頭部を持ち、口からは舌を突き出し、半ばまぶたが閉じられた眠たげな目をしている。体色は黒く、体表は短く柔らかな毛で覆われ、コウモリナマケモノの両者の姿を連想させるとされる。[1][5]

『闇に囁くもの』では「一定した形のない蟇蛙のような生き物」と表現されている[2]

クトゥルフ神話TRPG』では、コウモリのような耳と体毛を持つとしている[6]。(先述のスミスとHPL双方の設定を踏まえて)本質は無定形であり、自由に姿を変えることが可能であるとされることもある[6]

体の大きさは、クトゥルフなど他の旧支配者ほど巨大な描写はされていない。『クトゥルフ神話TRPG』のデータでは、「ホッキョクグマイタチザメと同程度」のサイズに設定されている[12]

創造者のスミスは、小説以外に彫刻も手がけており、自らツァトゥグァの像(邪神像)を造っている[13]
眷属・カルト
不定形生物
黒いタールのような不定形の姿をした生物。作者・作品によって説明がバラバラなので、順に解説する。

スミスの『
サタムプラ・ゼイロスの物語』に登場。コモリオムのツァトゥグァ神殿に潜んでおり、やって来た盗賊2人に襲い掛かった[1]

HPLの『墳丘の怪』に登場。地の底のンカイでツァトゥグァを崇拝する[14]。HPLはこの種族を「惑星キタミールからやって来た生物」と表現した[15]

クトゥルフ神話TRPG』では「無形の落とし子(Formless Spawn)」と名付けられている。位置づけは「下級の奉仕種族」とされ、ツァトゥグァと密接な関係にあるとされる。[16][17]

ヒキガエルの怪物
上位眷属。ヒキガエルに形容されるも、蹄、触手、翼などを備えるともされる。(容姿が似ていたために、半ば後付けで)ツァトゥグァの侍臣とされた怪物たち。TRPGでは「ツァトゥグァの末裔(Scions of Tsathoggua)」と名付けられている。位置づけは「上級の奉仕種族」とされ、Spawnよりも上位のScionという名称。TRPG解説書では、ロバート・E・ハワードの『屋根の上に』の怪物の描写が引用され、ゴル=ゴロスやオサダゴワとの関係も示唆される。[18][17]
ヴーアミ族
ハイパーボリアの原始獣人。


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