チームオーダー
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チームオーダー (team-order) とは、スポーツ競技において、チームが所属選手へ指示を出すことによって故意に所属選手間の順位を入れかえたり、保持しようとしたりすること。広義のチームオーダーは、文字通り「チームによる指令(命令)」を表すが、狭義のチームオーダーは、個人のレース結果よりチームの利益を優先させる行為を指す。

本項では主にF1世界選手権での事例を挙げ、下記の概要に記す2010年度 FIAスポーティングレギュレーション第39条の1項を基に、狭義のチームオーダーについて記述する。なお、F1では2011年よりチームオーダーが解禁されている。
概要
定義

例えば、同一チームに

「シーズン順位が上位でチャンピオンの可能性があるドライバー A」

「シーズン順位がAより下位でチャンピオンの可能性がないドライバー B」

の2名が所属している場合に

A の直前を B が走行している場合に A が B を「追い抜ける」ように

A の後方を走る B のペースが A を上回っている場合に B が A を「追い抜かない」ように

A の直接的なライバルに対して B が「牽制する」ように

といった指示を出すことによって A がドライバー部門のポイントを獲得しやすくする。この指示をチームオーダーと呼ぶ。単に第2ドライバーが第1ドライバーの前を走行している場合にもこういった指示が出される場合もある。主にシリーズ戦形式のカテゴリにおいて、ドライバー部門チャンピオンをチームドライバーに獲得させる事が目的である。

かつて、1970-80年代はチームとドライバーが契約する時点でナンバー1/ナンバー2は明確に役割分担されレース前に両ドライバーとチームで取り決めをしたり、サインボードでの指示で行うなど当事者のみに分かるような形で行われることが多かったが[1]、1990年代後半からは公開を前提とした無線を使用するようになったため、指示内容が外部に知られてしまう可能性が増した。

チーム側もそれを警戒して、全く関係ない言葉を暗号にしてチームオーダーを発令しているという指摘もある。また入れ替える手段も巧妙化しており、「偶然を装ったコースアウト」「トラブルを装ったピットイン」などの存在がチームオーダーによるものであると囁かれている。

こうした行為が個人の上位進出を目指さない八百長行為なのか、チームの利益を第一に考えたチームプレイなのかは議論が分かれる。

上記のような例の他に、主にラリーなどで意図的にペナルティを受けスタート間隔などをコントロールするためにチームオーダーが発せられる場合や、レース途中でマシンにトラブルが発生した場合の予備車(スペアカー)の優先利用権をチームオーダーとして定める場合もある。また、極めて稀な例ではあるが、決勝に出場してもすでにチームが撤退することが決定している場合に、ドライバーにわざと予選で敗退させる、あるいは予選自体に出場しないように命じる行為も「レース結果を妨げる様なチームオーダー行為を禁止する」に該当するため、チームオーダーの一種と捉えることもできる。
実態 "Team orders which interfere with a race result are prohibited."

「レース結果を妨げる様なチームオーダー行為を禁止する。」? 2010 FORMULA ONE SPORTING REGULATIONS Article #39.1 Contents THE RACE (2010年度 FIA F1スポーティングレギュレーション 第39条の1項「レース」より)
[2]

2010年までのF1レギュレーションにある通り「レース結果を妨げる様なチームオーダー行為を禁止する」というのは、レースが個人競技であることを前提にしたルールと言える。しかし、多くのレーシングカテゴリーでは、コンストラクター(=チーム)に複数のドライバーが所属している場合が多い。そのため、ドライバー側からは個々の速さやドライビングの力量を競い合う競技といえるが、チーム側からはより高い戦績を残すべくチーム戦略を用いて最大の結果をもたらすことも重要となり、両者の利益は時に合致しない。このことから、現在でもルールの存在の有無を問わずチームオーダー自体には賛否両論がある。ロードレースにおけるチームオーダーの様子。エース選手の体力を温存するべく、味方チーム選手が数珠繋ぎになって走行して勝利につなげる。(※:ペースライン戦略とも)

いくつかの車両競技においてはチームオーダーを肯定しているものもあり、その代表的な競技が自転車競技ロードレースである。 チームは一丸となって一人のエース選手を勝たせるために走るのが通常であり、エース選手以外はレースが始まる前に決定したチームオーダーに従って走る。自転車の駆動力は人力、すなわち人間の体力でありエース選手の体力を温存させて勝負をかける必要性がある場面でスパートをかけるなど、個人戦におけるロードレースは除き、団体競技として見る向きがある[3]

モータースポーツでも自動車メーカー(マニュファクチャラー)の対決色が濃い耐久レースでは、ドライバーはチームの指示を守って走行する。ロードレースの様に役割分担を決めておき、レース序盤から飛ばしてペースを撹乱する先行車(ラビット)と、通常のペースで優勝を目指す本命車を分けることがある。メーカーの上位独占が望める場合は、各車にスローダウンの指示を出し、隊列を組ませてゴールさせる(デイトナフィニッシュ)。

一方、F1の場合は1950年の設立当初からドライバーズチャンピオンを制定しており、レースを「個人競技」として捉えていた。チーム側のチャンピオンシップであるコンストラクターズチャンピオンは遅れて1958年に制定されている。つまり、「団体競技」としての要素よりも個人を尊重する考えの競技というのが軸となっている。

それでも全員が平等ではなく、チーム内でエースドライバーとセカンドドライバーの待遇差は明確にあった。1950年代はマシンのシェア(乗換え)が認められており、エースのマシンが故障した場合、セカンドはマシンを降りてシートを譲るのが当然だった。道具(マシン)の性能差が表れ易い競技であるため、調子の良いエンジンや新開発パーツは優先的にエースに与えられ、チームはそれらの条項を契約書に盛り込んでいた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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