チョークスリーパー
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裸絞の基本形リア・ネイキッド・チョーク。フィギュア4を用い首に右腕を回して左上腕あたりを掴み、左手で相手の後頭部を押して絞めている。

裸絞(はだかじめ)は、柔道プロレス総合格闘技で用いられる絞め技の一種である。着衣を利用しない絞め技である。講道館国際柔道連盟 (IJF) での正式名。IJF略号HAD。現代仮名遣いにより、裸絞めと表記するのが一般的。

別名スリーパー・ホールド、チョーク・スリーパー・ホールド、バック・チョーク、リア・チョーク、背取締め
概要フィギュア4を用いた裸絞の基本形リア・ネイキッド・チョークの実演動画海兵隊ジョシュア・ストーンによるパーム・トゥ・パームを用いた裸絞の基本形リア・ネイキッド・チョークの実演裸絞の基本形リア・ネイキッド・チョーク。パーム・トゥ・パームでもフィギュア4でもない腕の組み方をしている。

裸絞めの基本形はリア・ネイキッド・チョーク (RNC) である。リア・ネイキッド・チョークは相手の背後からの裸絞めである。

腕の組み方は方法は主に二つあり、一つは受の首に片腕を回してもう一方の片腕の肘の裏もしくは上腕のあたりを掴み、もう一方の手で相手の後頭部を押してそのまま絞める「フィギュア4」と呼ばれる方法である。肘関節内側を受の首下に引っ掛けて自分の腕をV字にして絞め両サイドからの頚動脈絞めにより参ったを狙う。一方、書籍『決定版講道館柔道』によるとこの組み方も攻撃個所は咽喉部だとしている[1]

もう一つの腕の組み方は両掌を合わせる形で両手を組んで手首や前腕で相手の頸部を絞め上げる「パーム・トゥ・パーム」と呼ばれる方法である。川石メソッドではこのパーム・トゥ・パームのリア・ネイキッド・チョークを後絞(うしろじめ)と呼び[2]、フィギュア4のリア・ネイキッド・チョークを「裸絞」と呼んでいる。前腕部を相手の首下に引っ掛けて喉(気管)を絞め、参ったを狙う。柔道形講道館護身術後絞でも受がパーム・トゥ・パームによるリア・ネイキッド・チョークを演じている。全日本柔道連盟 - YouTubeチャンネル『平成26年度全日本形競技大会優勝組演技「講道館護身術」』後絞(1m5s?) - YouTube

相手の制し方は代表的なバックコントロール、バックマウントや背後から両脚による胴絞めのほか、四つんばいの相手への河津掛ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックの相手の脚の制し方を流用したものなどがある。

対処法は形が完成する前に相手の片手を掴んで腕を潜って防いだり、しのいでる間にフックされている脚を何とか外して向かいあったり、立ち姿勢で背後から不用意に前傾でかけてくる相手は背負い投げで前に落としたりだが、どれも出来ずに形に入られてしまった場合は最後の抵抗として即座に顎を引いて相手の腕を首下に入れさせない方法などがある。ただし、顎を絞め手の内側に挟んでも慣れた者はそのまま顎絞めに繋いだり顔を上げさせる方法を心得たりしているため、形に入られたまま顎を引いてしのぐというのは、主に短時間膠着で「待て」がかかる競技での対処となる。

アキレス腱への関節技が認められていない柔道でよくある様に両足を組んで背後からの胴絞めでとらえながらリア・ネイキッド・チョークを狙われた場合はアキレス腱への関節技が認められている格闘技では両足を相手の両足に重ねて身体全体を反って相手のアキレス腱を極めるダブル・アンクル・ロックで逆転サブミッション勝ちするチャンスがある。このためブラジリアン柔術等では両踵を組まないで相手の鼠径部あたりに置くのが理想的なリア・ネイキッド・チョークの掛け方だとしている。片足首をもう一方の膝裏に当てる「フィギュア4」に両脚を組んでの胴絞で相手を制する方法でもダブル・アンクル・ロックを避けられるが、これだと少しリア・ネイキッド・チョークが極まりにくくなる。ブラジリアン柔術の競技でもバック・コントロールによるポイントはこの理想的な形にしないと得られない。
総合格闘技において

リア・ネイキッド・チョークが極まるとなかなか逃げられず、特に両脚が胴体にフックした形で極まると脱出することはほぼ不可能であると評価されている[3][4]。完全にリア・ネイキッド・チョークをとられた場合、反撃する手段がないことが大きい。

頭部で相手の顔面を強打したり、眼球睾丸を狙う攻撃を行えば逃げることが出来る可能性もあるが、それらの行動は多くの格闘技では反則である。また、初期のUFCでは目への攻撃と噛み付き以外の反則が存在しなかったが、それらの手段でチョークから脱出したケースも皆無である。UFC1の決勝戦でジェラルド・ゴルドーはホイス・グレイシーのチョークに対して噛み付いて抵抗したが失敗に終わっている。「ジェラルド・ゴルドー」も参照

加えて眼球睾丸を狙う攻撃はリア・ネイキッド・チョークを狙って背後についてる者のほうがやりやすい。

持ち上げて背中から投げればいいという指摘もあるがバックをとられた状態から立ち上がるのはよほど体格差がないと困難である。

急所である気管や喉仏を強力に圧迫されたら、もがき苦しむことになるが喉仏や気管を絞めずに綺麗に頚動脈洞だけを圧迫した場合は苦痛はほとんどなく[5]耐えることも可能である。しかし、頚動脈洞反射が起こるため ⇒[1]、約7秒で失神して戦闘不能状態に陥ってしまう。いわゆる、「落ちる」という状態である ⇒[2]。また、綺麗に頚動脈洞だけを絞めた場合は、後遺症が少ないことから、相手にダメージを与えずに行動不能に陥らせるにはきわめて効率的な方法であり、シンプルにして究極のフィニッシュ・ホールドとされると言われている[6]。柔術や総合格闘技ではメジャーな極め技である。

総合格闘技でのヒクソン・グレイシーは「テイクダウンマウントポジションマウントパンチ→相手が背を向けたところをチョーク」を必勝パターン[7]としており、バーリ・トゥード・ジャパン・オープン 1995では、すべての試合をこのパターンで勝利している[8]
プロレスにおいて

アントニオ猪木は格闘技ブームの影響から、キャリア後期にはフィニッシュ・ホールドとして使用するようになった。

格闘技においては脱出不可能といわれる裸絞だが、プロレスの場合はロープブレイク、タッグパートナーのカットなどにより脱出できる場合もある。

2016年のG1 CLIMAX優勝決定戦では、後藤洋央紀にスリーパー・ホールドをかけられたケニー・オメガが、技をかけられた状態のままコーナーをよじ登り、コーナー最上段から背中向きに飛び降りて後藤を自身の体ごとリンクに叩きつけるという荒技を披露している。

多くのプロレス団体において、前腕でも気管を圧迫する行為は反則、とされており[9]、「チョーク」と呼ばれ、反則裁定なしなどの気管を圧迫するリア・ネイキッド・チョークは特別ルールでない限り決め技となることは少ない。

パンクラスが旗上げ時にこのルールに反し、この気管を圧迫する絞め技を解禁した。柔道、修斗空道ブラジリアン柔術柔術ファイティングシステム、などの格闘技ではこのような絞め技は認められており、中学生柔道でも使用できるそう危険ではない技であった。このような絞め技が禁止されているのは絞め技が認められている格闘技ではプロレスぐらいしかなかった。しかしながら、柔道母国でありながら日本のプロレス界ではセンセーショナルにあつかわれた。プロレスは一般にもっと危険な技だとされる首関節技が認められており、不条理な状況だが、前田日明はこのパンクラスの騒動を受けて、本来はプロレスで禁止されているのは多くの格闘技で禁止されている指での喉への攻撃でレスラー達が前腕が喉に入っただけで「チョーク!チョーク!」とアピールしてたら前腕で喉を絞めても反則になってしまったんだ、と語った[10]。ロープエスケープが足首をロープを超えないで爪先だけロープを超えても成り立つようになったようになし崩し的にルールが変わっていくのはプロレスではよくあることである。しかし、前田はこのパンクラスのような改善をUWFでは行わなかった。1980年11月20日発効の日本プロレスリング・コミッション認定プロレスリング競技規約でも前腕で喉を絞める絞め技は反則にはなっていない。この規約は新日本プロレス国際プロレス合意のもと制定された。両団体と日本以外のプロレス団体NWAWWFNWF、IWAで採用実施している競技規則を原則的方針とし両団体は厳格に遵守、服従しなければならない、としている[11]1969年の『週刊少年マガジン』誌プロレス反則技特集でも「チョーク」は手で喉を絞めること、とされており掲載イラストも前腕では絞めていない[12]

従来から合法であった主に頚動脈に重点をおいて絞め付けるリア・ネイキッド・チョークを「スリーパーホールド」と呼ぶ[13][14]のに加え、これを機に気管を重点的に絞め付け呼吸を妨げる[13][14]リア・ネイキッド・チョークを「チョーク・スリーパー・ホールド」と呼ぶようになった。パンクラスは総合格闘技でもあったのでこの呼び方は日本の総合格闘技界にも広がっていった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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