チューリッヒ連邦工科大学
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スイス連邦工科大学チューリッヒ校Eidgenossische Technische Hochschule Zurich

種別国立大学連邦工科大学
設立年1855年
学長Ralph Eichler
学長Lino Guzzella
職員数10040
学生総数17187
所在地 スイス
チューリッヒ州チューリッヒ
キャンパスチューリッヒ旧市街、ヘンガーベルク
ニックネームチューリッヒ工科大学、ETHなど
IDEA League, TIME, IARU
公式サイト公式サイト
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スイス連邦工科大学チューリッヒ校(スイスれんぽうこうかだいがくチューリッヒこう、ドイツ語: Eidgenossische Technische Hochschule Zurich, ETH Zurich, ETHZ, 英語: Swiss Federal Institute of Technology in Zurich, ETH)は、スイス連邦チューリッヒ市にある国立大学である。通称チューリッヒ工科大学。スイスの最高学府の工科大学であり、1855年に創設され[1]、これまでに21名のノーベル賞受賞者を輩出するなど、ヨーロッパ工科系大学でもトップクラスの名門校である。

留学生が多く、世界約120カ国から集まった2万1000人以上の学生が学ぶ。学費は年間約1380スイスフラン日本円換算で約14万円)と、物価が高いスイス国内としては低く抑えている。世界中から優秀な人材を集めて、スイスの国際競争力向上やイノベーションを促す狙いがある[1]

ETHは世界有数の工科大学であり、様々な大学ランキングの上位に入ることが多い[2]。また、フランス語圏のローザンヌには姉妹校であるスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)がある。ETHはIDEAリーグ国際研究型大学連合の創設時のメンバーであり、Top Industrial Managers for Europe の一員でもある。建築学科、土木工学科、機械工学科、化学科、林学科に加えて、多目的学科(数学・自然科学・文学・社会学・政治学を包括)があり、レントゲンアインシュタイン[1]などが学んだ。アインシュタインは、大学に残って助手になりたがったが採用されなかった(後に教授職に就いている)。
名称

一般にはチューリッヒ工科大学などと呼ばれることが多い。地元チューリッヒドイツ語圏)では、Poly (ドイツ語での旧称であるEidgenossisches Polytechnikumに由来)や、ETH、ETH Zurich(いずれも現在のドイツ語の名称に由来)などとと呼ばれることも多い。とくに、ETH(ドイツ語では「エーテーハー」に近い発音になる)という呼称は ⇒大学の公式HPなどでも広く使われている。便宜上、本記事でもスイス連邦工科大学チューリッヒ校を指してETHの語を用いることにする。
沿革1865年のETHの校舎

ETHは1854年にスイス連邦共和国政府によって設立され、教育機関としてはその翌年から機能し始めた。創設時の名称はEidgenossische Polytechnische Schuleである(「国立技術専門学校」の意)。当初は建築学科、都市工学科、機械工学科、化学科、林業学科、多目的学科(数学、自然科学、文学、社会=政治学を包括)の6つの学科より構成されていた。ETHは国立の単科大学であり(スイス政府の直属の付置機関でもある)、チューリッヒ市街地のキャンパスのすぐ隣には州立のチューリッヒ大学がある。ETH設立の際には、その妥当性を巡って議論が分かれた。自由主義者は「国立大学」の設立を政府に要求した一方、保守勢力は自由主義者の考えには妥協せず、スイス国内の全ての大学は州立であるべきだと主張した。設立当初、ETHはチューリッヒ大学内の建物に間借りしていた。

1909年、ETHの教育課程は大学のものに沿った形に再構成され、博士号授与の権利が与えられた。1911年に現在の名前になった。1924年には学科の再編成が行われ、12の学科に再編された。現在、ETHには16の学科がある。

1993年からは、ETHとEPFL、そのほか4つの国立研究所をあわせてETH領域というスイス連邦経済・教育・研究省直属の付置機関となった。
評価

ETHは常に世界のトップレベルの大学に位置づけられる[3]。有名な世界大学ランキングでは毎年スイス国内の大学としては最上位に、ヨーロッパ圏としては上位5校、世界では上位15校にランク入りすることが多い[4]。また、 ⇒SwissUP Ranking スイス国内の大学ランキングや ⇒ドイツ語圏の大学ランキングにおいても、ETHは特に自然科学分野・コンピューター分野で1位になることが多い。

タイムズ・ハイアー・エデュケーションYear総合順位
201513位
201610位
201710位
201811位
201913位

ETHはこの5年連続で、タイムズ・ハイアー・エデュケーションの大学ランキングで15位以内に入っている[5]。2019年度のランキングにおいては、総合で世界13位、工学とIT分野では8位、物理科学の分野では8位につけている。タイム誌の大学ランキングの中でのETHの順位の変動は右の通りである。

上海交通大学が作成する世界研究大学ランキングでは、ETHはヨーロッパ圏の大学では4位に、全世界の大学で化学分野では6位、数学・自然科学分野では9位にランクされている[6]

QS世界大学ランキング(2018-2019)においては、地球・海洋分野で世界1位、総合でも世界6位にランクされている[7]

歴史的に、ETHは化学、数学、物理学の分野で評判が高かった。これまでに、卒業生・教官のなかから21人のノーベル賞受賞者を輩出している。最近のノーベル賞受賞者は、2002年に化学賞を受賞したクルト・ヴュートリッヒである。最も有名なETH出身の受賞者はアルベルト・アインシュタインであろう。その他の著名な受賞者にはレントゲンハー・ゴビンド・コラナなどがいる[8]

西ヨーロッパにおけるフィールド生物学、化学、物理学、数学の分野の大学院教育についての調査では、インペリアル・カレッジ・ロンドンケンブリッジ大学の2校とともに、ETHは突出して優れた大学院教育を行う3校のうちの1校に選ばれた。また2009年度には、ETHは最先端の研究のための助成金を13億スイスフラン(およそ12億ドル) 獲得している。

起業も盛んで、1996年?2018年で400社以上のETH発スタートアップ企業が設立された。起業志望者への指導や研究開発費補助といった支援制度もある[1]
入試と教育

スイスの他の公立大学と同様、ETHは基本的にスイスで教育を受けた者を対象には学部生を選抜する入試を行わず、基本的にスイス国内の大学入学資格(Matura)を持つ全てのスイス国民に対して門戸を開放している[9]。また、GCSEなどの試験で一定の成績をあげたり、一定の学力を持った留学生に対しても門戸を開放している。しかし、ほとんどの留学生は簡略入学試験(Reduced entrance exam)か総合入学試験 (Comprehensive entrance exam)のどちらかに合格する必要がある。特に総合入学試験は「高等学校卒業」などの学歴がない志願者でも受験することができる[10]

1年度は2つのセメスターに分けられる。学部によっては、入学初年度の学生には試験はまったく課せられない。しかし、初年度の第2セメスター終了後の夏に各コースが定めるBasisprufung(「基礎試験」の意)と呼ばれる試験に合格しなければならない。この試験で平均点に届かなかった学生は留年して再び翌年の基礎試験を受けなければならない。初めて基礎試験を受けた学生のうち50%以上が不合格となり、そのほとんどはそのまま退学してしまう。高年次の試験も基礎試験と同様のシステムで行われるが、合格率は比較的高い。学部課程の規定の在学期間は6セメスター、修士課程の在学期間は3セメスターであり、各課程の最終セメスターでは論文を執筆しなければならない。

ETHは数学教育に力を入れており、全ての学科において論理力を鍛えるための大量の数学教育が施される。また、学部1年生・2年生を対象にした授業は主にドイツ語で行われる(例外としてフランス語英語でのコースも少数ある)が、学部3・4年と大学院生の教育は主に英語で行われる。
キャンパス


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